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シス←→ブラ その1
シス←→ブラ ~おねえちゃんとあまあまラブラブエッチDAYS~

シスブラTOP


「んちゅ……ちゅぱ……くちゅちゅ……」
 おれの朝は、濃厚なキスからはじまる。
「……ちゅっ……ちゅっ……んふぅ……ぺろっ……ふ……はむ……」
 唇をふさがれた微妙な息苦しさを感じながら、ゆっくりとまぶたを開いていく。
 見慣れたつくねぇの顔がどアップで視界を占領している。おれが起きたのに気づいたつくねぇは、キスをやめてうれしそうにほほ笑む。
「あ、やっと起きた。おはよ、たーくん」
「……おはよう」
 戌井卓人(たくと)。16歳。毎朝、姉にこうやって起こされている。重度のシスコン患者。
 戌井撞音(つくね)。17歳。毎朝、弟をこうやって起こしている。重度のブラコン患者。
 つくねぇはのしかかっていたベッドから身体を起こすと、制服につつまれた凹凸の激しいボディをひるがえす。
「ごはん、できてるから。はやく降りてきてね」
 ふわりと笑って部屋を出ていく。
 かろやかな足音が階段を降りていくのを聞きながら、おれはため息をついて上半身を上げた。
 このところ、つくねぇの『お世話』が過激さを増してきている。
 正直、いつまで理性が持つのかおれ自身、疑問を感じるところだ。
 原初的情動、リビドーの詰まったおれの股間は、蒲団の上から見てもわかるほど、固くいきりたっていた。
「朝だから。朝だから」
 だれともなく言い訳しながら、おれは制服へ袖を通すため、ベッドを降りる。

***

 昼休み。
 混雑する学食の片隅でぼんやりラーメンを啜っていると、天井付近に置かれたTVが母親のCMを映した。
 母はトップ女優のひとりだ。
 姉弟を生んだとは思えないほど若々しく、肌のはりつやもきめ細かい。
 いま流れているような化粧水のCMではひっぱりだこで、お年頃の女性たちに夢と幻想を与えているのだ。
「あ、あの、戌井くん」
 喧噪の中、名前を呼ばれた気がして目を向けると、知らない女子生徒がおどおどした様子で立っていた。
「……なに?」
「その、よ、よかったら、サイン頼みたいんですけど……」
 よく見ると胸にサイン色紙を抱きしめている。
 おれはラーメンを啜る作業に戻る。
「……どっちの?」
「え、えと、お父さんのほう……」
「……ダメ。親父には勝手に会えない」
「え? そうなの?」
「……うん。裁判でそう決まってるから」
 親父はダンディな役柄が売りの俳優だ。だけど浮気が原因ではるか昔に離婚。月に一度だけの面会日を除き、おれたちとは会えないことになっている。その面会日すら、仕事のせいで予定を取れないことがほとんどなんだが。
 ちなみに母も女優業に専念するため、東京に出たまま実家へはほとんど帰らない。家はおれとつくねぇのふたりきりなのが常だった。
 我ながら、なかなか歪んだ家庭環境だと思う。
「そ、そう。……ごめんね、無理いっちゃって」
 勝手に恐縮して女生徒は去っていく。
 べつに、これが普通なのだから、おれはなんとも感じていない。まわりにはどう見えているのかはわからないが。
 それに、母が東京に移ることを決めた一年前、いっしょにおれたちもついていくはずだったのだが、実家へ残ることを強固に主張したのはつくねぇだったのだ。転校したくないとか、おれの面倒は全部みるとか、普段わがままなんか言わないつくねぇの強情に折れて、母は単身赴任していった。
 思えば、そのころからつくねぇの『お世話』がはじまったような気がする。
 ラーメンを食べ終え、食後の一服がわりにつくねぇのことを考えていると、周囲の人間が「ざわっ」とざわめいた。
 学食の入口に思考中の人物の姿があった。
 ロングのサラサラヘアー、自己主張の強い胸元、短い制服のすそからチラチラと見えるウエスト、張り出したヒップとすらりと伸びた健康的な脚。
 なによりもトップクラスの女優俳優たちから、惜しみなくその最上のパーツを与えられた顔立ち。
 ただそこにいる。それだけで学食にいる人間すべての視線を集め、虜にしてしまうのだった。
 ……本人の自覚は、まったくなしに。
「あ、たーくん!」
 周りの注目なんかまるでおかまいなく、めだたない位置に座るおれを一瞬で発見するや、手を振って駆け寄ってくる。
「……姉さん」
 いつものこととは言え、こっちに集中してくる視線の束には閉口する。
「やーん。なんで学校じゃ『つくねぇ』って呼んでくれないの?」
「姉さんこそ空気読んでくれよ……」
「むぅ」
 ふくれるつくねぇを、友達らしき女子生徒たちが通りすがりにからかっていく。
「撞音、ブラコンもたいがいにしときなよ~。弟さん困ってる困ってる」
「でもこれだけかっこいい弟がいたら、ブラコンもわかるわよねー。ね、紹介してよ!」
 そのうちのひとりが、冗談混じりにおれの腕へくっついてきた。
「むー、紹介しません! 離れなさい! たーくんはわたしのなんだからっ」
「あーはいはい。重症だわこりゃ」
 ぺろっと舌を出してすぐに離れていく。
 つくねぇは番犬が威嚇するみたいにぐるぐる唸っていたが、女子生徒たちが学食から出て行くのを見届けると、くるりとおれを振り仰いだ。
「たーくん、ちょっと来なさい!」
「え、あ、ああ」
 有無を言わせぬ調子に、おれはしどろもどろで返事をすると、手を引っ張られて学食を連れ出された。
 早足のつくねぇを追いかけるようにして歩いて、連れ込まれたのは旧校舎の空き教室。取り壊しが間近に迫って、だれも人の寄り付かない場所だった。
 こんなところへ連れてきてどうしようって言うんだろうか。
 つくねぇはおれの手を開放して以降、背を向けて黙り込んでいる。
「……つくねぇ、どうしたの」
「……たーくん……おねえちゃんのこと、好き?」
「……なんだよ、いきなり」
「わたし、たーくんのこと好きだよ。ほかのだれよりも。なによりも。世界で一番好き」
 ドクッと心臓が脈打ったのがわかった。
 つくねぇの口調は、ただの兄弟愛を語るには、あまりに情熱的で、あまりに艶かしかった。
「……おれも、好きだよ。つくねぇが思ってるのと、同じくらい」
 そんなんじゃない。つくねぇは家族として、弟としてそう言ってるんだ。
 頭の中で言い聞かせながら、ようよう、おれも答える。
「ほんと? でもね、わたし不安なの。いつもいつも不安。だって、わたしとたーくんの間には血のつながりしかないんだもの。だれか、知らない女の子が、横合いからたーくんのことさらっていったって、わたしにはどうすることもできないんだから」
 ふと――背を向けたままのつくねぇは、泣いているんじゃないかと思った。
「さっきだって、食堂の外から、知らない子と話してるたーくん見て、デートに誘われてるんじゃないかと思ったり。友達がたーくんにくっついたのを見て嫉妬したり。……そんなの、わたしだって嫌なの。でも不安なの。たーくんをつなぎとめるものが、おねえちゃんにはなにもないから……」
「つくねぇ……」
 心臓のドキドキが止まらない。なおも、ますます鼓動を速めていく。
 つくねぇは肩越しにチラッとおれを見ると、突然床へうつぶせに寝転がった。
 そして、お尻だけをクイッと高く持ち上げる。
「――っ!」
 息を呑んだ。短いスカートがまくれて、最高にいい形をしたヒップを包む薄布があらわになっている。
「……証をちょうだい、たーくん……。おねえちゃんがいつまでもそばにいていいっていう、証。それをくれるなら、おねえちゃんのぜんぶ、たーくんにあげちゃう……」

シスブラ3
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