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学生アパートのデキゴト その2
「かすみ……おれもイかせろよ……」
 聞こえてないのはわかっていたけど、おれはそうささやいて、さらにかすみの身体を持ち上げた。
 小動物みたいに小柄なかすみに比べ、おれはバレー部とバスケ部の間で争奪戦が起きたほど背が高い。大きな人形を抱えているようなものだ。持ち上げてしまって、ひざの上に載せてしまうと、なんだか全部を言いなりにできた気がして、おれはすっかり興奮してしまった。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
 そのまま自分が気持ちいいように前後運動を開始する。
 かすみの手足がぶらぶらと揺れて、口は半開き、目は焦点を合わせずに中空へさまよっていた。
 なんだか死体を抱いているみたいで、変に倒錯してしまう。
「はぁ……はぁ……かすみ……いいよ……」
 オルガスムスで分泌されたたっぷりの愛液は、膣奥に充分溜まっていて、まるでちんぽがあたたかい海を泳いでいるみたいだった。
 強烈な締め付けはないものの、ときおり電気ショックを受けたみたいにおまんこが痙攣して、絶頂の余韻を示していた。それがほどよい刺激になり、倒錯的な気分に後押しされて、すぐに射精感が高まってくる。
「イクよ……出すよ……」
 普段は相手の絶頂に合わせようとか、どのタイミングで出そうとか、計算しながら射精するけど、今はそんなつもりもなかった。
 自分の快感が頂点に達するように、ひたすら腰を動かして、ちんぽに摩擦を加えていく。
 どっちかって言うと、オナニーしているみたいだった。
「あ……ああぁっ!」
 かすみのおまんこをオナニーホールにしている……そんな、失礼極まりない妄想が渦巻いて、おれの快感は射精へ到達した。
「ん! んんっ! ふうっ」
 漏れそうになる声を抑えて、腰に力を入れる。
 かすみはだらしなく弛緩したまま、おれに精液を注ぎ込まれている。
「くっ……かすみ……かすみ……はぁっ!」
 溜まりきった愛液に許容量以上の精液を流し込まれて、かすみのおまんこはオーバーフローを起こした。
 おれたちのつながっている隙間から、溢れたミックスジュースが噴き出してくる。
 かすみはぐったりしたまま心ここにあらずだったけど、その身体はおれの射精を機敏に感じ取ったようで、子宮へと送り込むように膣道がうねりはじめていた。
「はぁ……はぁ……よかったぞ……かすみ……」
 射精が終わってすぐにちんぽを引き抜き、流し込んだものがこれ以上漏れてしまう前に、かすみの腰を垂直に持ち上げて、膣口を上向きにさせる。
 変な体勢にされてもなすがままだった。腰を抱え込んで、両手を使って肉ひだを開く。
 くぱっと開かれたおまんこは、まだおれのちんぽの形のまま丸く口をあけていて、その中に溜まった白く濁った液体がぬめぬめと輝いていた。
 よく見ると膣壁が呼吸するように蠢いていて、嚥下するみたいに子宮が精液を飲み込んでいるのがわかった。
「……ゆーくん……くるしい……」
「あ、ごめん……」
 ようやく我に返ったかすみがもがきはじめた。おれはあわてて身体を離し、ベッドに横たえてやる。
 しばらくお互いに呼吸を整えているうちに、となりからくやしそうな声が上がった。
「わたし、イかされてばっかりだぁ……」
「……いいじゃんか」
「そんなことないよ。ひとりだけイっちゃったら、ゆーくんに悪いし……。今日だって勝手に気持ちよくなっちゃって、ゆーくんほったらかしにしちゃったよ……」
 しゅんとしてうつぶせになってしまう。
 たしかにかすみは一度イってしまうと動かなくなるから、今日みたいに変な妄想が働かない限りおれはつまらない。
 でもおかげでかすみのアクメを見定めて、快感をコントロールしていく技術が磨かれたのだ。全国かすみアクメコンテストがあったらぶっちぎりで一位になる自信がある。オルガスムスのタイミングが合わなかったら、それはおれが失敗したってことなんだけど、かすみはその辺を理解していない。まぁ理解してもらうようなことでもないんだけど。
 どうやって慰めたものか思案しているうちに、ぐっと顔を持ち上げて、かすみは勝手に立ち直った。なぜか握り拳を固めている。
「よし!」
「なにがよしだよ。変な奴」
「次回はわたしがゆーくんを気持ちよくしてあげる。わたしより先にゆーくんをイかせる!」
「……がんばれ」
「あ、ばかにしたな? 後悔するよ」
「しないよ」
「しばらくいろいろ勉強したりするから、えっちは禁止ね」
「はぁ!?」
「それからオナニーも禁止! 溜めといてもらったほうがいいし」
「まて、そりゃ溜まってたらだれだってすぐイクだろ」
「あ、そっかぁー。じゃあオナニー解禁! よかったね」
 にっこり笑うかすみ。
 言い出したら聞かないのだ。ため息をついてそれを眺め、おれははやくも後悔していた。
学生アパートのデキゴト その1
 ここは高校からほど近い学生アパート――。
 男女共用、学生専用の、ほとんど寮のような建物だ。
 自由な校風を反映した、と言うよりはそれを曲解した連中が主に生息している。
 一階が男子部屋、二階が女子部屋で、男子が二階に上がるのは禁止されているのに、守っている奴なんていない。
 みんなが和気あいあいと混じり合って、ときにカオスになりながら生活するこの場所を、おれはすごく気に入っていた。
 それに――。
「あうぅ……ゆーくん……も、だめ、イっちゃう……イク……あ、はあぁ……」
 こうやって、大好きな彼女と気軽にいつでもセックスができる。
 今日も今日とて、かすみはおれの腰の下でくねくねしながら、うっとりとアクメに達しようとしていた。
「ゆーくん、ゆーくん! すき……すきぃ……!」
 正常位で交わった膣がギュッとしまり、背中にまわした手でしがみつくようにしながら、もう無我夢中だ。
 おれはこの絶頂寸前できゅっきゅとしまってくる膣の動きが好きだった。達してしまって激しいしめつけを与えてくるのも好きだけど、それだとおれもいっしょにイってしまう可能性が高いから、なるだけゆっくりと長い時間、このとろけるようなおまんこを味わっていたいと思う。
 だからおれはわざと腰の動きを浅くしたり、膣の中のあまり感じない部分めがけて突きいれたりして、かすみの快感をコントロールしてやる。
「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ」
 イくことを寸止めされたまま、でも刺激だけは与えられ続けて、かすみのおまんこはもっと欲しいと、おれのちんぽをにぎにぎとしはじめる。これが気持ちいいのだ。
 射精してしまうほど強いしめつけではないけれど、ほんとうに手のひらでグーパーされているみたいで、ストロークのたびにかなりの快感が得られる。それになにより、かすみの身体が欲しがっている様子が生々しく感じられて、幸せな気分になるのだ。だれだって、こんな風に求められて、悪い気はしない。
「やっ、あっ、もうイク……はぁっ、イクのに……あは……イかせて……あぁ、イかせて……ゆーくぅん……」
 寸止めのまま数分も経つと、かすみはすっかり理性をとろかせてしまって、あまえた声でおねだりをしてくる。これがまたかわいくていい。
 表面はぽやぽやしているくせに、根っこの部分で意地っ張りなところがあるかすみを、心と身体の両方から屈服させている。それがたまらなく愉しいのだ。だからつい、いじわるな口調で言ってしまう。
「ダぁメ……」
 耳元でそうささやかれて、かすみはうっすらと目を開け、非難のまなざしを向けた。
「ゆーくんのばか……。えっち……ヘンタイ……はぁぁぁんっ!」
 上の口では悪口を吐いているのに、下の口へちょっと強くちんぽを突き込まれるだけで、大声を上げてうっとりとしてしまう。
「ああ……あ……!」
 しかしすこしばかり加減を間違えたようで、そのときかすみは軽くイってしまったみたいだった。膣の動きが『にぎにぎ』ではなく、『ぎゅっ』になって、その状態のまま『ピクピク』している。
 まだ本格的な絶頂には刺激が足りないはずだ。ちょっともの足りないけど、おれは仕上げることにした。
 足を高く抱え上げて、腰が浮いてしまうくらい持ち上げる。こうすると、かすみが一番弱い子宮口近くの快感点――ポルチオとか言ったか、そこにちんぽが突き刺さるのだ。
「ばかっ……ヘンタイ……ヘンタイ……!」
 口ではまだ悪口を叩きながらも、この体勢に入ったと言うことはイかせてもらえるってことで、かすみは唇をゆるませてうれしそうだった。
 太ももを抱え込んで固定すると、おれは大振りのモーションで抜き差しを開始する。
 亀頭の先っぽがガンガン奥のやわらかい壁にぶつかり、おまんこの隙間からしぶいた愛液がぴちゃぴちゃと濡れた音を響かせた。
「あん! ああん!」
 下の階まで聞こえるんじゃないかってくらい大声でかすみは喘ぐ。
 五回もピストン運動を繰り返さないうちに、ピンっとその四肢が空中に突っ張った。
「ああああああぁぁぁぁん!」
 太ももがブルブルと震え、つま先は指の先までまっすぐにのばされる。
「はあああぁっ! ああああぁ! ふあああぁっ!」
 どうやら速攻で、深いアクメに到達してしまったらしい。
 かすみのおまんこはおれのちんぽをギチギチとしめつけて、臼がすり潰すみたいにうねっている。
 この瞬間に射精できたら目の前がチカチカするくらい気持ちいいんだけど、今日はタイミングが合わなかったみたいだ。腰を動かそうにも、咥え込まれてしまって動けないし、例え動けても射精がはじまる頃には、かすみの絶頂は終わってしまっている。
 じれったいけど、おれは落ち着くまで待つことにした。
「はあっ! はあっ! はぁ……はぁ……」
 やがてゆっくりと呼吸がおだやかになって、張りつめていた筋肉の緊張がほどけていった。
 ぱたぱたと手足がベッドの上に落ちて、かすみはぐったりとしてしまう。
 こうなると、長い場合、十分はこっちの世界に戻ってこない。気絶しているわけじゃないけど、半分失神していて、とろんとしたまま上の空になってしまう。はじめてこの状態になったときは、やりすぎたとあせったものだ。
最後の向こう側
 ルルル……ルルル……ルルル……。
 明かりを落とした室内に、シンプルな着信音が響く。
(あの人からだ……)
 栞(しおり)はベッドサイドに置かれたハンドバッグへ視線だけ向ける。
 もどかしげに着信を告げる携帯は、帰りが遅いことを心配した婚約者がかけてきたものに間違いない。
 いますぐ取り出して、通話ボタンを押さねばならなかった。
 だけど……。
「はっ、はっ、はっ、はっ……」
 子犬のように荒い息遣い。
 栞の胸に顔をうずめるようにしながら、小柄な少年が腰を振りたくっている。
「あっ、はっ、し、栞姉ちゃん……!」
 ぶるるるるっ!
 少年の背筋がゾクゾクと震えて、膣の中の剛直が何度もいきんだのがわかった。
 射精している。
 もう、何度目だろう……。
 数えることは簡単だ。
 足元へ無造作に捨てられた、使用済みのゴムが三個。
 いま膣内で少年の精液を受け止めているのが一個。
 枕もとに未使用の、最後の一個……。
(なんで、こんなことになったんだろう)
 ギュッと抱きついている少年を、いますぐにでも突き放すべきだ。
 でもどうしたって一生懸命射精する姿がかわいくて、押し返すどころかやさしく頭をなでてしまう。
「あぁ……」
 ため息のような吐息をついて、少年の身体が弛緩した。四回目とは思えない、元気な射精は終わったようだ。
「はい、おしまい」
 ポン、とその肩をたたき、つとめて明るく栞は言う。
 だが少年はもぞもぞと動き、枕もとのコンドームに手を伸ばした。
「あっ……、ダメよ」
「最後……最後だから……」
「慎ちゃんお願い、聞き分けて。お姉ちゃんもう終電だから……。お泊りはできないのよ?」
 いつの間にか着信音は止んでいる。婚約者に心配をかけているだけでも、手ひどい行動なのに……。
「ほんとにもう最後っ」
 だが泣きそうな顔でお願いされると、栞はどうしても弱い。
 そもそも、年上の自分が最初からいさめるべきだったのだ。
 そう言う弱みもあって、なかなか強くは拒絶できない。
「もお……、さっきもそう言ったでしょ」
 許可の調子を含めて言うと、慎介はうれしそうに顔を輝かせ、膣内から剛直を抜き取って、いそいそとゴムを付け替え始めた。
 相手は十歳年下の、まだ中学生の甥だ。
 二、三年前まではこの実家でいっしょに住んでいて、本当に弟のように思っていた。
 就職してひとり暮らしするようになってからは会う機会も減っていたけど……。
 いつまでたっても、子供のころみたいに、お姉ちゃんと結婚したいと言い続けていると思ったら、まさか、本気だったとは。
 女としてずっと愛されていた。
 そのことに気づかなかった自分にショックで、罪滅ぼししたい気持ちになったのと、あきらめてもらうきっかけになれば、そう思ったのと。
 求めてくる慎介を受け入れたのは、そんな理由からだった。
(でも……)
 こんなに何度もするつもりはなかった。
 栞が折れなければ、最初の一回でおしまいだっただろう。
 くるくるとゴムが巻かれていく、慎介の股間に目をやる。
(やっぱり……おおきい)
 将来の夫のモノしか栞は知らないが、それより幾段も太くて長く、カリ高のかっこいい形をしている。つい今朝まで子供だと思っていた存在の、しかも中学生が備えているものとは信じがたい。慎介は身体も小さいので、包皮にちんまりと包まれたのを想像していたのだった。
「栞姉ちゃん……」
 装着し終えた慎介が股間を密着させる。
 ずぶずぶと、肉ひだを掻き分けて、雄々しい男根が侵入してきた。
「最後……、最後だからね」
 言い聞かせるようにしながら、それを受け入れる。
 さすがにコンドームなしでセックスする気はない。バースコントロールに慎重な婚約者とも生ですることはないのだ。これ以上は拒絶できる、と栞も思っている。
 だから最後の一回……。
「ああっ、栞、姉ちゃん……! はっ、はぁっ」
 カクカクと腰が動き始めた。
 幾分慣れてきたようだが、まだまだテクニックもなにもない。ただ男が気持ちよくなるためだけの動作。
 いくら子供離れしたものを持っていたって、そこは童貞の少年にすぎなかった。
 だから、栞は理性を持って相手することができているのだ。
(でも……五回も……。信じられない……)
 淡白な婚約者はいつも一回出せばおしまいだ。
 しかも、すこし気合を入れてフェラチオしたり、自慢の胸でパイズリしたりすると、すぐイってしまって、そんなとき栞はお預けを食らったまま、悶々としなければならかった。
(慎ちゃんなら……何回でも……)
 もしこの肉棒を自分好みに躾けることができたら。
 たくましくて、太くて、熱い……。
 この雄々しいものが、愚直に出入りするだけじゃなく、膣内の気持ちいいポイントを、的確に突いてくるようになったら。
 胸に顔をうずめるだけじゃなく、乳首を吸ったり、クリトリスを転がしたり、責めの方法を覚えたら……。
(なっ、なにを考えてるの、わたし……!)
 あわてて、心の中で首を振る。
 無意識のうちに考えてしまったことが本音に思えて、栞はすこし怖くなった。
 このままだらだら関係を続けてしまう……。
 それだけは回避しなくてはならない。
(はやくイかせないと……!)
 いますぐにでも終わらせないと、癖になってしまいそうな恐怖が芽生えた。
 栞はマグロ状態で横たわっていた体勢をずらし、腰を持ち上げ気味にして、本格的に男を受け入れる姿勢を取った。
さっきから膣の浅いところばかりを男根は行き来していて、それではあまり気持ちよくないだろうと思ったのだ。全体を深く包み込めば、すぐにイってしまうだろう……。
「あんっ!」
 だがそれが間違いだった。
 膣奥の天井を亀頭がこすった瞬間、栞の身体に電流が走ったのだ。思わず高い声が出てしまう。
「……栞姉ちゃん、これ、気持ちいいの?」
 はじめて上げた嬌声を、慎介が聞き逃すはずがない。
 何度も同じところを繰り返し小突きながら、そう訊いてくる。
「そっ、そんな……こと、ないよ?」
 うそだった。
 そこは栞をオルガスムスへ導いていく場所。婚約者が唯一見つけてくれた、快感の集約点。セックスであまり絶頂へ達したことのない栞が、そのすくないオルガスムスの経験を味わった場所だった。
 喘ぎ声を必死でがまんしながら、取り繕うように答える。
 だが、慎介にはわかってしまったようだ。
 それまでの単純な動きから、えぐるように深いストロークへ……相手を気持ちよくさせようと言う意思を込めた腰使いで、栞を責め始めた。
 ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ!
 必然、腰と腰は密着度を増し、肉のぶつかりあう音が高く鳴り響き始める。
 いくら声を押し殺しても、身体は正直で、蜜がどんどん溢れてくるのは止めようがない。
 もはや栞の耳にも届くほど、水音が混じっている。
(ちょっと、まずっ、まずい……!)
 このままではイかされてしまう。
 イかされてしまったら……。
 イかされてしまったら、どうなるのだろう?
 仄かな期待感……、しかし、それよりも怖さが勝った。
 この男根を身体が覚えてしまったら。味を占めてしまったら。
 もう二度と、婚約者とのセックスでは満足できない。
 きっとまた、コレを求めてしまう。
(いけない、それだけはいけない!)
「くっ」
 必死に下腹へ力を入れ、膣を締め付ける。もっと肌がくっつくように、身体中で慎介を抱きとめる。
 それはくらくらするほどの快楽を栞にもたらしたが、それ以上に効果があった。
「うあっ!」
 慎介は驚いたような声を出すと、射精しないように腰を離そうとした。
 すばやくその尻に両脚を巻きつけ、自ら腰を持ち上げで、離れようとする男根を追いかける。
「うあ、あああっ!」
 そしてあっけなく、慎介は暴発した。
 我慢しようとした分、余計気持ちよかったのか、情けない声を上げながらへこへこと腰をくねらせて、最後のコンドームを消費していった。
「はぁっ、はぁっ」
 力が抜けた慎介を抱き寄せて、軽くおでこにキスすると、そそくさと栞は男根を抜き去り、身を起こした。
 秘所の火照りは信じがたいほど熱く、ぼたぼたと滝のように愛液を垂れ流しているんじゃないだろうか、と栞に危惧させるほどだった。
「そ、それじゃ、お姉ちゃん帰るから……」
 ゴムに包まれた慎介のイチモツは、まだ隆々と反り返っている。
 ごくりと喉が鳴るのを感じながらも、栞は背を向けた。
「あと始末しないと……。ティッシュ、どこにあるかな。慎ちゃん」
「……そこ、ベッドの棚のところ」
「ありがと。慎ちゃんもお片づけしよう。ね?」
「……うん」
 背後で慎介はコンドームをはずしにかかったようだ。
 これで終われる。
 おおきな安堵と、一抹の残念な気持ち、そして、身を焦がす火照りを覚えつつ、栞は四つん這いになってティッシュへ手を伸ばす。
 油断してしまっていた。
 そのかっこうは、慎介の目前に、自らの秘所を見せ付けるものだったのだ。
 ぬらぬらと濡れ光った、ちっとも満足していない女の部分を……。
「栞姉ちゃん!」
「きゃっ!?」
 飛びついてきた慎介に、後ろから押し倒される。
「姉ちゃん、姉ちゃん!」
「だ、だめよ。やめて、おこるよ!」
「姉ちゃん、いかないで、姉ちゃん!」
 逃れようと栞は身じろぎする。今度は紛れもなく、本気で拒絶の力を込めた。
 しかし、背中にのしかかって肩を押さえる慎介を、跳ね除けることができない。
(え……?)
 その力強さに呆然としてしまう。
 慎介は小柄で、栞よりも身長が低い。その力だって、たいしたものじゃないと、頭から思い込んでいた。
 いま、栞を押さえつける慎介は、その想像を軽く打ち砕いた。
 まさしく……男の力だった。
 ドキン――!
 荒々しい筋力を認識した瞬間、栞の心臓を、まったく異種の感情が昂ぶらせた。
 相手は子供ではない……弟でもない……。
 自分を求めて雄の本能を滾らせている、一人前の男なのだと。
 それは、慎介をひとりの男として理解してしまったことから来る、胸の高鳴りだった。
「あ……」
 脳髄の奥から発せられた光が、チカチカと頭の中を染めていく。
 肩にかかる手の圧力。
 うなじに吹きかけられる荒い吐息。
(だめ……だめ……!)
 子供だ。弟だ。そういう垣根が、膜をはがすように取り払われていく。
 抗おうとする身体が押さえつけられるたび、徐々に、すこしずつ、気持ちの奥底が見えてくる。
 その膜の向こうにある、栞の真の想い――。
(それはだめ……!)
 栞はギュッと目をつぶる。自らの心を垣間見ないために。
 それはけっして気づいてはいけないものだった。
 もうすぐ結婚するのだから。
 一生を共にする人と添い遂げるのだから!
「栞姉ちゃん!」
 ――ずぶり。
 まことにあっけなく、栞の努力は破壊された。
 尻肉を掻き分けるようにして到達した男根が、膣口を押し開いたのだ。中途半端でくすぶっていたそこは、歓迎するようにぬめりながら慎介を迎え入れていく。
「あ、あ、あ、あ」
 押さえつけられながらも、かろうじて自由になる喉を反らして、栞は自分でもわからない声を漏らした。
 いままでの自分を喪っていく絶望感。
 そしてあたらしい自分に塗り替えられていく期待感。
 心が、認識が、作り変えられていく。
 世界が変わる。
 慎介を愛していると言う世界に……。
「栞姉ちゃん!」
 叫んだ慎介が、膣口から一気に腰を突き入れた。
(――ッ!!)
 その瞬間、栞は絶頂した。
 恥丘の裏側付近に、文字通り亀頭が突き刺さっていた。
 そこはGスポットと呼ばれる性感帯――うつ伏せと言う体位で初めて刺激された、栞の知らない場所だった。
「はああぁぁぁぁん!」
 遅れて嬌声が喉からほとばしった。
 頭の中が真っ白になった。
 慎介がその様子を察知して、何度も何度もGスポットめがけて腰を振り下ろしてくる。
「あんっ! あんっ! あんっ!」
 もはや迷いも恥じらいもない、素直な喘ぎ声が飛び出て行った。
 抜き差しのごとに古い自分がカリのえらに掻き出されて、亀頭の先に乗ったあたらしい自分を詰め込まれていく。そんな錯覚すら覚えた。
「栞姉ちゃん、いいの? これいいのっ!?」
「いい、いいっ! すごいっ」
「もっとしてあげる! 好き、姉ちゃん好きだっ」
「わたしも好きぃ! ああーーーーっ!」
 また絶頂の波が襲いくる。
 こんなのは知らなかった。
 こんな快楽も、セックスのすばらしさも、人を愛する喜びも。
(もう戻れない……!)
 明滅を繰り返す法悦境で、栞ははっきりと思った。
 いままでを喪うことに哀しまなくたっていい。
 これからの不安におびえなくたっていい。
 自分の人生に、慎介が深く入り込んでくる。なんてうれしいことだろう。
「慎ちゃん、奥、奥もちょうだい! 奥ほしいのっ」
 なにもかも受け入れてしまえば、おねだりが自然に口を突いた。
 若さに任せた勢いで男根が差し込まれ、ごりっと子宮口が押し返される。
 浅く浅く、深く、浅く浅く。
 緩急をつけたコントロールで、慎介は責めはじめる。
 そのどちらもで、栞は性感帯を直撃され、数十秒ごとに軽いアクメを迎えた。数回の軽いアクメは、より深いアクメを呼び込んで、そのたびに喉は嬌声をしぼりだした。
「はっ、はっ、僕、もう、出そう」
「あ、えっ? なに」
「出そう、イっちゃう」
「あ――」
 その瞬間、どうしてかたくなに生を拒んだのか思い出した。
 排卵日。
 たぶん、一番危ない日なのだ。
 それを説明しようと言葉を捜すが、快楽に滅多打ちにされた思考は喘ぎ声以外の表現をなかなか見つけてくれない。
 ぐずぐずしているうちに、慎介の息はますます荒く、切羽詰っていく。
「出、出るっ! イくよ、栞姉ちゃん!」
「だ、だめ、膣内は――っ!」
「あ、ああぁーっ!」
 びゅくびゅくびゅく!
「なかっ、ああぁぁぁ! はああぁぁ!」
 はっきりと熱いものがお腹の中に打ち出された。
 その熱が栞をまた絶頂へ導き、膣内を痙攣させ、より精液を搾り出してしまう。
 奥へ奥へ、もっと奥へ――。
 雄の本能がそうさせるのか、慎介は尿道口を子宮口にディープキスさせ、子宮へと精子を放出してくる。
(でき……できちゃう……!)
 いや、間違いない。
 妊娠してしまった。
 これだけ激しく、一途に、思いの丈をぶつけられたのだ。
 それにきっと、慎介の精子も、本人に似てすこし強引で、想像以上に力強いに違いない。
 そんな精子に、自分の卵子が抗えるとも思えなかった。
 どく……どく……どくん……。
 最後の一滴までを子宮へ飲ませてから、満足したように男根は膣内から出て行った。
 さすがにふたりともぐったりとして、折り重なるように息を整えるしかできない。
 このけだるい感覚は、でも幸福感に満ちていた。
 膣内に出されて、かなりの確率で婚約者以外の、しかも近親の子供を妊娠してしまったと言うのに、栞の心はおだやかに透き通っていた。
 ルルル……ルルル……ルルル……。
 ハンドバッグから、ふたたび着信音が響く。
 脱力した身体を動かし、携帯を取り出すと、やはり婚約者からのものだった。
「……はい」
 慎介が不安そうに半身を起こした。
「はい。ええ、だいじょうぶです。ご心配をかけました……。ひさしぶりの実家で、くつろぎすぎたみたいで、気がついたら眠ってしまっていて。……はい。そうですね、そうします。今日はこっちに泊まることにします。ええ……」
 子犬のようにおどおどと揺れる瞳に、そっと微笑みながら、
「それと、お願いが……。結婚してもときどき、こっちに戻ってもいいですか? いつまでも姉離れできない、困った弟がいるので……」
 栞はやさしく、頭をなでるのだった。



Keep to me... その7
「あああ……ああ……」
 徐々に力の抜けていったランは、やわやわと余韻を愉しむようにクリトリスを転がしながら、淫猥にくちびるを舐めた。
「イっちゃったぁ……。ふふ。みんな、あたしのおマンコすごかったでしょ? でも残念だよ。このおマンコはね、シュウちゃんのものなの。おマンコだけじゃないよ。あたしの身体も心もぜ~んぶ、シュウちゃんのものなんだからね。この肉穴の中にずぼずぼって出入りして、気持ちよ~くなって、ぴゅぴゅって射精していいのは、シュウちゃんだけなの」
 にやにやと淫笑を浮かべながら、どろっどろっと濃い粘液を吐き出す秘所をいじくりつづける姿に、おれも我慢の限界を迎えてしまう。
 ジッパーを下ろしてペニスを取り出すと、ひくひくする雌穴にあてがった。
 まだ妄想の中にいるランは、想像の向こうの生徒たちに宣言する。
「ほら、みんな見て。シュウちゃんのおチンチンがおマンコに入るんだよ。このおチンチンはね、あたしのことをとーっても気持ちよくさせるから、うーん、何回いっちゃうかなぁ? 三回かな。四回かな。みんな、あたしがいっちゃうの数えててね。イクって言わなくても、足がブルブル震えたり、おマンコが潮を吹いたり、身体中が痙攣しちゃったりしたら、イクの合図だからね。――あ、あ、ああああっ!」
 ぬるぬるのどろどろになった膣内へ、男根を挿入する。
 それだけでくくりつけられた両足がばたついて、ガタガタと柵を鳴らせた。
「入っ……たぁ! ね、すごくスムーズに入っちゃったでしょぉ? あたしのおマンコはシュウちゃんのおチンチンの形に躾けられてるから、いつでも簡単に入っちゃうんだよ。躾けられたマンコ、とっても気持ちいいの。だから入れられただけで、あたしいっちゃうんだよぉ。いって、おマンコ肉がビクンビクンって、気持ちいいよぉって悲鳴を上げてるのにね、シュウちゃんったら、容赦なく――あはぁあああん!」
 ずぱんずぱんっ!
 言葉どおり容赦なく、おれは大振りなストロークで媚肉をえぐりはじめる。
「はあああぁぁ! すごっ、また、いきそ……! 入れて、いっちゃったおマンコ、すぐにじゅぼじゅぼされるから、あたしすぐにもう一回――んんんううぅぅ!」
 膣の中からはじまった痙攣が全身に伝播していき、ランは絶頂へ達していく。
 絞りに絞られた膣内で、おれは射精せずにこらえるのが精いっぱいだ。
 だがそんな様子はおくびにもださず、アクメに震える膣肉を貫いていく。
「やあああっ! いってる、いってるから、あたしいってる! シュ、シュウちゃん、あたしいってるんだよ!? いってるのにまだじゅぼじゅぼするの!? いく、いくの止まらない、いってるのにまたいく! いくのが普通になっちゃう!」
 ぱんぱんぱんぱんぱんっ!
 お互い汗まみれになった肌が濡れた音を保健室に響かせる。
 もし校舎にだれかいたらぜったいに聞こえてしまう音量で、ランは絶叫する。
「いく! いくのに動けない! 逃げられないよぉ! このままあたし、ずっとシュウちゃんにいかされ続けるのっ!? そんなっ、あたし、アクメ人形にされちゃう! いきっぱなしのお人形! あ、アクメ、またくるっ! いってるのにその上にアクメくるっ!」
 ぶしゅっ! ぶしゅっ!
 いまやおれのひと突きごとに、ランのアソコからは潮がほとばしり出て、ズボンもシーツも床も、愛液まみれにしていた。
「みんな、あたしはシュウちゃんのアクメ人形なのぉ! おチンポでいきっぱなしにされてる道具なの! だから見て、あたしがシュウちゃんだけの道具なところ見て、シュウちゃんとずっといっしょにいられるって、記憶に焼きつけてっ!」
「く、ラン……っ!」
 ぶわっと膣奥が広がって、子宮の手前に精液だまりが作られた。
 同時に膣口がぎゅうううっと肉棒へしゃぶりつき、膣ひだがざわざわと亀頭や竿全体を撫でまわしはじめる。
「ラン、こ、これっ!」
 最高に気持ちいいと思っていたランの膣内に、もっと気持ちいい状態があることを発見して、おれは思わずうめいていた。
 こんな快感を与えられて、射精をこらえることは不可能だった。
「はやあぁ! シュウちゃ、いくのっ、いくのぉ!? アクメ人形におチンチンがぴゅってしちゃうのぉ?」
「すげ、食われる、みたいだっ! うあ、出る!」
「はああああああっ!」
 腰を押し付けて射精する。
 これ以上動かすことは不必要だった。
 なぜなら、ランの膣道が嚥下するみたいにうごめいて、まるで手で搾るように肉棒をしごきたて、射精を促しているからだ。
 びゅっ! びゅるるるるううう!
 精液だまりめがけていきおいよく精子が吐き出される。
びゅっ! びゅびゅっ!
もっと出せとばかりに膣がうごめいて催促し、おれは言われるがままに次々と射精した。
「あやはぁらうわああぁ!」
 ろれつの回っていない意味不明な嬌声を上げて、ランが大口を開けたまま最大級のオルガズムを味わっていた。
「う、ぐ、ううっ……!」
 男は射精のとき、無意味に変な声が出なくてよかったと思う。
 そうでなければ、プライドが崩れそうなほどわけのわからない叫び声をあげていたに違いないからだ。
 ビクビクビクビクッ!
 突如、絞るだけだった膣の動きが、激しい痙攣とともに変わった。
 それはランにとっても予想外のことだったらしい。
「あ、あ、あ、あ、おマンコ、変っ! なに、これ、あたしのおマンコ、なにしようとしてるのっ!?」
「う、やば、抜けねーぞ……!」
 膣痙攣でも起こしたのかと思って焦るが、まだ続いている甘い射精の快楽に、もっと酔いしれていたいと言う二律背反も感じていた。
 ずるっ、ずるずるずるずるっ!
 亀頭が頭を突っ込んでいる精液だまりが、急激に収縮を始める。
 たっぷりと放たれてそこに溜まった精液が、いっきに子宮へと押し流されていく。
「はやあぁぁっ! 子宮下りてく、わかるよぉ。しきゅ、あたしの子宮、精液飲みにいくつもりだ! ごくごくごくって、馬が水を飲むみたいにして、シュウちゃんの精液飲むつもりだよぉ!」
「うあっ! ラン、咥え込まれてて、動けねぇ!」
「やだっ、やだやだ! シュウちゃん抜いて、あたしがはしたなく精液飲むところ、シュウちゃんのおチンポに見られちゃう! 抜いてよぉ!」
「そんなこといったって、これ……っ!」
 思わず素に戻って肉棒を引き抜こうとするが、精液だまりの入口にがっちりとカリ首が挟まれていて、びくともしなかった。
 亀頭の先にコリコリしたものが触れ、収縮した精液だまりがその内容物を奥へ押し流す。
「ああああ。もう、飲んじゃう、飲んじゃうんだからぁっ! シュウちゃんの精子ゴクゴクしちゃう! ね、いい? あたしの一番はしたなくてあさましい姿、おチンポに見せていい? こんな姿さらしちゃったら、あたしもう人間としてのプライドなんてなくなっちゃうけど、シュウちゃんそれでもいい?」
 美しい顔をよだれで汚しながら、ランが浮かされたように叫んだ。
 おれはその身体をしっかりと抱きしめ、耳元で囁いた。
「いいよ。ランはこれで、身体だけじゃなく心も、本当におれのものになるんだ。だから思いっきり飲み干せよ!」
「あはああぁぁ! うれしいっ! 飲むよ、見て、あたし飲むよっ!」
 ざぶんっ!
 そんな擬音が聞こえそうな勢いで、子宮口が精液だまりのプールへ突っ込んだ。
 ごくっごくっごくっごくっ!
 まるでピペットのゴム袋みたいに収縮した子宮が、恥も外聞もなく精液をむさぼっていく。
「ああああいくいくいく、精液飲んでいく、子宮が熱くていくううううう!」
「うわあっ!?」
 ランの絶頂に合わせて、おれの肉棒を咥え込んだ膣道がざわざわざわっとうごめき、強烈な上下の収縮を始めた。
 腰を動かしてもいないのに、はげしいピストン運動をしたみたいな快感に襲われ、不意打ちを食らったおれはあっけなく二回目の射精にいざなわれる。
「で、あ、出るっ」
 びゅるるるうううう!
 精液だまりに追加の精子を投げ込みながら、おれは眩暈がするみたいな陶酔に酔いしれた。
「うれしい! 飲んでも飲んでも精液増えてる、うれしいよぉ。ああっ、いっぱい飲めてうれしい、おなかいっぱいにしてくれてうれしい、うれしいっ!」
 艶然と笑いながらランはアクメの海に溺れ、その身体にしがみついたままおれも沈んでいく。
 ごく、ごく、ごく……。
 やがて射精もおさまり、精液だまりも空になって、ようやく子宮口は満足そうに口を閉じた。
「あは……。なくなっちゃった。全部飲んじゃったぁ。……あ、まだまだっ」
 ランがなにか気づいたみたいに言った瞬間、亀頭に子宮口が吸いついてくる。
「お、おい」
「もう、この中に隠しておくなんてずるいよ、シュウちゃん」
 ちゅるるるるるうう!
 尿道口がすさまじい吸引力で吸われ、精道に残っていた精液があまさず吸い取られていく。
「う……あ……」
「はい、おしまい」
 にっこり笑ったランの胸元へ、なんだか魂まで吸い出された気のするおれは、ばったりと倒れ込んだ。
 汗ばんだ肌と、濡れた包帯のコントラストが、頬に心地よかった。
「ラン、ずっといっしょだからな……」
「うん。片時も離さないでね」
「愛してる」
「あたしも愛してよ、シュウちゃん……」
 顔をあげて唇をまさぐりながら、そういえばはじめてお互いの気持ちを口にしたな、と思った。

                               おしまい
Keep to me... その6
 やがて拍手が収まると、顔を上げたランは一目散にステージ袖へ向かう。おれはそのわずかな間で、太ももに垂れ落ちるぬらぬらの愛液を認めた。
(ま、ばれちゃないだろうけど)
 あんなところでノーパンのままオルガズムを迎えたなんて、ふつうは想像もつかない。5センチ詰めたスカートも、おしりの下側の曲線が見えるぎりぎりのラインで踏みとどまっていた。
《つづいて、記念式典の行事へ移ります》
 アナウンスが、再び退屈な時間の始まりを告げる。
 おれがなんの気なしに外へ視線を向けると、たまたまステージ側の出入り口からランが校舎へ向かっていくのを見つけた。
(なるほど……)
 ランに関することなら、おれの脳みそは超能力者並みの勘のよさを発揮する。
 おれはクラスの列を離れると、気分を悪くしたふりをして、そばに控えている担任へ保健室へいってもいいか訊ねた。
 もしおれの勘が正しいなら、ランもそこへ向かったはずだ。
 許可を得たおれは校舎へ戻り、そっと保健室の戸を開けた。
「はっ、はっ、はっ、はっ……!」
 ベッドを区切ったカーテンの向こう側から、犬のように荒い息遣いが聞こえてくる。
「はぁっ、はっ、はぁ、は、はぁっ、ふ、うっ、うううっ!」
 そっと隙間からのぞくと、ランが体育座りの恰好で、我を忘れて股間をいじり倒していた。
「あううっ!」
 ビククっと背筋をひきつらせ、絶頂に達すると、すぐに泣きそうな顔になって首を振り、また激しく股間を手でこする作業に戻る。
「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ……」
 口元からよだれを垂らし、無我夢中で手淫に耽って、しばらくすると絶頂へ達してしまうものの、ぜんぜん満足できないのか、半泣きの表情でまたオナニーを始める。
「はっ、はっ、はっ、はっ……。は、あ、んんんっ!」
 何度かランが達するのを眺めてから、おれは声をかけた。
「ラン」
「え? あ、シュ、シュウちゃ……あっ、はっ」
「なにしてるんだ?」
「あっ、ふ、オ、オナニーして、るの。みんなに、見られて、ふぅっ、あたしたまらなくて、がまんできなくてっ。で、でも、軽くしかイケないの。こんなの、じゃ、あたし収まらないの……!」
「へえ……。ステージの上でイったのに、足りないんだ」
「ああ……ばれてる。シュウちゃんにはばれてるよぅ……。あたしが演説しながらオナってたのばれてる、変態生徒会長なのばれちゃってるぅ!」
 ビクビクっといままでより派手な痙攣が襲い、仰け反ったランはそのままばったりとベッドの上に倒れこんでしまう。それでも吸いついたみたいに股間の手だけは離れず、別の意思をもっているかのようにうごめいていた。
「シュウちゃ……シュウちゃん、どおしよぉ。あたしおマンコ止まらない、お汁垂れ流しでイキたい気持ちが止まらないよぉ。こんなだれもいないところでオナニーしてたんじゃ、お股のうずうずが収まらないぃ……!」
「誰もって……おれがいるだろ?」
「シュウちゃんはあたしの所有者だから、なにを見てもいいの。あたしのオナニー見るのは当たり前なのっ! もう、バカっ」
「キレんなよ」
 苦笑しながら、ひとつ思いついたおれはランに訊ねる。
「保健の先生はいないんだな?」
「うん。それに午前中いっぱい記念行事だから、校舎にだれもいないはずだよ」
「念のため鍵くらいはかけとくか」
 内側から扉の錠を下ろし、おれは包帯を手に取ってランの傍へ向かった。
「ラン……おれの言う通りにしろよ……」
「ん……」
 おれはランの制服を脱がすと、裸身に包帯を巻きつけ、手足を縛って拘束していく。
 大股開きの姿勢で足をベッドの柵へくくりつけ、左手は背中へ回して胴体ごと縛りつけ、右手は股間にあてがった位置で腰と一体化させる。
 最後に頭へぐるぐると包帯を巻いて目隠しをすると、一体の淫靡なミイラが出来上がった。
「シュウちゃん……うごけないよぉ……」
「ランはおれの道具なんだから、本当ならこっちの恰好の方がお似合いなんだよ。物は動く必要なんかないからな」
「あ……あたし、物になっちゃってるの……?」
「そうだ。でもアソコがうずくんだよな?」
「うん、シュウちゃん。おマンコ使って? はぁ……動けないあたしのおマンコずぼずぼして、いつもみたいにオナホにしていいよ……」
「勘違いしてるなぁ、ラン。おれはお前のオナニーを手伝ってやってるだけだ。ほら、右手を動かしてみろ。触りたいところに触れるだろ?」
「あ、ほんとだ……。あたし、ぜんぜん動けないのにオナニーだけはできるよ。あたしオナニーだけ……いまのあたし、オナニーしかできない……」
「そうだ。ランはいま、オナニーだけの存在なんだ。ほら、思い出してみろよ。さっき、ノーパンでどんなところに立ってた? ステージの上でおマンコいじって気持ちよかったか?」
「ああああああ」
 しゅっしゅっしゅっしゅ!
 すばやい指の動きでランはクリトリスをさすりはじめ、泣きそうな声を上げた。
「みんな、みんな見てたの。ノーパンでお股をコスコスしてるあたしを、全校生徒が見てたの! すごい、すごい昂奮したぁっ! だって、だって何百人も、あたしのオナニー見てたんだよ。もう濡れて濡れて、お汁が靴下まで垂れちゃって、――あ!」
 急に動きを止めて、ランが不安な面持ちを乗せた。
「ど、どうしよう。きっとステージの上に、ぽたぽた落ちたあたしのえっちなお汁が、水たまりになってるよぉ。オナニーの証拠、残してきちゃった……」
「ばれちゃうかもなぁ。あとでステージの掃除にきた連中、その水たまりを見てなんて思うんだろうな?」
「きっと――きっと、生徒会長がオナってたのばれちゃうんだよ! みんなに見られながら気持ちいい気持ちいいってよがったの、お見通しされちゃう……う、あ、はあぁっ!」
 しゅしゅしゅしゅしゅしゅ!
 がまんできなくなったのか、さっきの倍くらいのスピードで指が動き、みるみるうちにランは高みへ昇っていった。
「あああああ! すごい、いいっ! 見て、みんな見て、あたしのオナニー見てぇ!」
 高速でさすりあげる指先がクリトリスを四方八方からこすりたて、小さな豆はかわいそうなくらい形を変えて歪む。
 目隠しされたランの妄想は、一気に加速していく。
「見てる、みんなが見てるっ! お汁をぶちまけながらクリちゃんこすってるあたしを見てるぅ! ああっ、変態、変態だよぉ! いく、いくいくいく! イクところ見て、お潮吹いちゃうから、生徒会長のおマンコから、潮吹きするところ、みんな見てぇっ!」
 ぷしゃぁっ!  
 実際に見ていたのはおれひとりだが、想像の中で何百人もに視姦されて、ランは派手に潮を撒き散らすと、動けない身体を精一杯突っ張ってアクメを表現した。
 飛び散った愛液がまだらにシーツを染めている。おねしょの世界地図みたいだ。
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