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-chapter3- 発動する力
 地球の上にある宇宙を高天原、下にある宇宙を黄泉と言う。それら2つは地球を境界線にし、激しい戦いを続けていた。高天原の側に立ち、黄泉の軍勢と戦う人間の組織した軍、それがアスティア地球連邦軍だ。
 黄泉の軍勢。敵。それは邪神や戦いに敗れて死んだ神、そして死人たち。死の穢れを負ってしまった彼らは黄泉の国へ堕ち、生あるものへ襲い掛かってくることになる。それらを倒すのが連邦軍の役目だ。すなわち、シトゥリたちの敵は神や死人であった。
「目標まで、距離1200!依然こちらの通信には応じず!」
 ブリッジにはサクヤ、キリエ、クラの姿があった。普段の呑気な空気は消し飛び、空気自体の硬度が増したような緊張感が漂っている。その時、ブリッジの入り口からぱたぱたと足音がし、声が飛んだ。
「お、遅れましたぁ~」
 そう言って入ってきたのは金色の髪をショートカットにした、背の低い少女。オペレーターのシリンだ。年齢は17歳と、もっともシトゥリに近い。寝ていたのか髪の毛は色んな方向を向き、格好もパジャマの上に制服のジャケットを羽織っただけだ。ご丁寧に枕まで持っている。それでも、クラが賞賛の声をあげた。
「へえ、珍しいじゃない。自力で起きるなんて」
「当たり前ですよぉ、いつまでも子供じゃないんですから」
 胸を張ってシリンが言った。この年齢でオペレーターの仕事をベテラン以上にこなす彼女は、15歳で連邦大学を卒業した天才である。ただ、天才とはどこか常人とは外れているもので、普段のシリンはぼーっと何を考えているのか分からない。しかも、睡眠に対して貪欲すぎで、一度寝たら絶対に起きないのだ。遅刻だろうがなんだろうが、今回自力でブリッジまでやってきたのは、奇跡に近い偉業だった。
「はいはい、わかったからいつまでもあたしにオペレートやらせないで」
 キリエが言って、ヘッドフォンをはずした。
「すいませんー。5秒待ってください」
 シリンは席に着き、オペレーター用のヘッドフォンとマイクを身に付けた。とたんに表情がきびきびしたものに変わる。この辺の切り替えの速さは、さすがだ。
 シトゥリは出来ることもやることも何もなさそうだったので、とりあえずメインスクリーンに拡大された敵の映像をじっと眺めた。まだ相当距離があるらしく、最大望遠でも黒っぽい点が映っているだけで、それが何か分からない。初めての敵は一体何なのか。死人たちか、死神か、邪神か……どれも出会いたくはない。
 その疑問に答えるように、シリンが言った。
「目標の解析結果でました。チェトレ級戦艦の可能性が高いです!」
「うそっ!?」
 キリエが叫んだ。チェトレ級とは、戦艦の中でも最大規模の大きさだ。確か5000メートルを超える。全長300メートルのタケミカヅチの十数倍以上になるだろう。
「どーすんの、サクヤ」
 クラが艦長席を振り返った。ずっと黙っていたサクヤは、口を開いた。
「間違いなく、幽霊船ね。逃げましょう」
「目標との距離1000。交戦領域です。敵主砲の射程範囲まであと150!」
「簡易座標設定!」
 サクヤの声が飛んだ。
「了解、座標設定。XYZ座標、設定完了」
「進路、X20、Z40。タケミカヅチ、第一戦闘速度で前進!」
「了解、進路X20Z40、第一戦闘速度で全速前進!」
 復唱し、クラが操縦桿を倒した。スクリーンに映る光景に何の変化も無いが、所々に映る目盛りの類は、その数字をめまぐるしく変えていく。キリエが手招きしているので、シトゥリはその隣へ向かった。
「とりあえず、あなたの初陣は逃亡戦ね」
「ほっとしてますよ」
 シトゥリは苦笑した。砲手のキリエも逃げるだけなら今のところ仕事が無いのだろう。
「敵の主砲の射程外を掠めるようにして離れるわ。今から180度方向転換してたら、ずっと流されて射程内で無防備に後ろを晒すことになるし。敵はでっかい戦艦だから、この艦以上に融通が利かないのよ」
 その時、シリンの叫び声があがった。
「サクヤさん、変です!」
「報告を!」
 ただ事ではない様子に、全員がシリンのオペレーター席を振り返った。
「目標を中心点にして範囲1000に、突如力場が形成されました!現在分析中!」
「結界!?いえ、バインディング・フィールドなの?脱出は!」
「不可能です。すでに力場は形成済みです!力場結節点まであと距離100!」
「クラ、全力回避っ!!」
「やってるわよっ」
「シトゥリくん、危険だから席についてベルトを締めて!これは罠よ!」
 サクヤに言われ、シトゥリは慌てて席に戻った。回避が間に合わなかったらタケミカヅチの運命もないことは、全員の真剣な表情を見れば分かった。
「よーし、ぎりぎり、距離10で方向転換間に合いそうよ」
 クラが言った。サクヤがうなずく。
「そのまま、力場すれすれを円周航行。フィールドが縮まってくると思うから、距離に気をつけて」
「敵主砲射程内に入りました」
「いいえ、シリン、もう一度敵の分析をしてみて」
「え、あ、はい」
 しばらくパネルを叩いたシリンが、驚いたように顔を上げた。
「え、何これ……。目標、チェトレ級戦艦じゃありません。神……邪神です」
 狐につままれたようなシリンに、サクヤはやっぱりと言う表情を向けた。
「わたしたち、はめられたのよ。敵の邪神の偽装だわ。誘い込まれて、結界の中に閉じ込められたのよ」
「そんなの聞いたことないわよ……」
 キリエが天を仰いだ。
「ついでに全長5キロの神も聞いたことないわね。サクヤ、確かなの?」
 クラが舵を取りながら言った。
「おそらく風船のように体を膨らませているか、こちらの機器をなんらかの手段で狂わせているか。光学的にあの大きさに見えるから、わたしは前者だと思う」
「あんたが言うならそうなんでしょうね。シトゥリくん、怖くない?」
 クラの声は、心配しているのでも、からかっているのでもない。ただ確認の調子だった。
 不思議と怖くは無かった。結界の中に取り込まれた場合、脱出率は一割もない。それでも、サクヤが指揮を執っている限り大丈夫だと言う、根拠のない確信に近い想いがあった。これもまた、サクヤの艦長としての天性のものなのかもしれない。
 ――いましよ
 ふと、シトゥリは声を聞いた気がした。
「シトゥリくん?」
「あ、すいません。ぼーっとしてました、大丈夫です」
 それを聞いて、キリエがくすくす笑った。
「あなた、結構大人物なんじゃないの?並みの男――いえ、連邦の提督だって、この状況下じゃきっと真っ青よ」
「たぶん……状況が把握できてないだけだと思います。あと、サクヤさんに任せてたら安心かな、って」
 シトゥリは素直に本心を言った。キリエはサクヤを振り返った。
「だって、サクヤ」
 サクヤは照れたような笑顔で微笑んでいる。
「わたしに任せておいて。いきなり大ピンチに巻き込んじゃって悪かったけど、無事に脱出しましょう。キリエ、全砲門開いて。クラ、目標に第一戦速で全速接近!」
「了解」
「了解っ」
「目標、詳細データでました。やはり内部はほぼ空洞のようです。原寸ではEクラス邪神と推測されます」
「よし、こけ脅しよ。距離50まで接近したら、全砲門掃射の後、急速離脱!クラ、あなたのドライビングテクニックに賭けるわ」
「まっかせなさい!」
 みんな勤めて明るく振舞っているが、やはり緊張の色は隠せない。張り詰めていたブリッジの空気の中に、更なる緊張の糸が張り巡らされていく。
 ――いましよ
 再び、何者かの声が耳朶を打った。今度は聞き間違いではない。初めて聞く、深く錆のある男の声だった。シトゥリはなぜか、それが自分にだけ聞こえるものだと直感的に確信していた。
「目標まで距離600、590、――え?」
 シリンがまた驚いた声を上げた。
「どうしたの!」
「目標の様子が変です。映像をメインスクリーンに回します」
 映し出された邪神は、確かに戦艦にも見える形をしていた。その内部は内側から赤く息づくように光っている。まるで手のひらを太陽にかざしてみたような色合いだ。
「赤い……血のような色……」
 サクヤも同じような感想を持ったようだ。突然、席から身を乗り出した。
「シリン、何でもいいからレーザーをあれに照射してその反応を計測!」
「わかりました。通信用レーザーを照射します。反応解析終了まで12秒。目標との距離400」
「クラ、第二戦速まで減速」
「は?そんなことしたらヒットアンドアウェイなんて出来ないわよ」
「いいから!」
「あれ、レーザー照射は確認しましたが、反応が返ってきません。曲げられた……?」
 シリンが言った瞬間、サクヤは立ち上がった。
「いけない!通常バリア出力最大で展開っ!クラ、なんとか距離700まで目標から離れて!」
「りょ、了解」
「な、何がどうしたの?」
 キリエが焦ったように言った。シトゥリもそれを知りたかった。サクヤのこんな表情は初めて見る。
「あれの内部は、もとから小さかったんじゃないわ。収縮してるのよ。どんどん小さく!」
「で、それがどうかしたの」
「気付かない?レーザーすら曲げる重力場を形成するほどの密度を持っているの。これがこのまま収縮し続けたら……」
 そこではたと、キリエはコンソールを叩いた。
「超新星爆発!?」
「そう、あれは爆弾なのよ!」
 ――いましよ
 3度目の呼びかけ。そろそろシトゥリは、それがなんなのか気になり始めていた。頭の中で、誰、と呼び返しても、反応はない。その間にも、ブリッジ内は騒然とした雰囲気を増してきていた。
「つ、通常バリア、展開できません!」
「こっちもダメ、舵がロックされてる!?」
「どういうこと、まさか、ハッキング!?こんな時に!」
「いいえ、外部からの干渉ありません。原因不明!」
 その瞬間、スクリーンがまぶしく光り、真っ白になった。シリンの金切り声が響き渡る。
「目標、自爆!衝撃波到達まで5秒!」
「全員、耐ショック用意!」
 ――いましよ。しからばとつかつるぎをとり、かのわざわひをはらわん。
   汝與。然者十拳剣取、彼之妖払。
 次の瞬間、シトゥリの脳内にストロボを焚いたような閃光がはじけた。体の中に、異様なとしか言い表せない感覚が広がる。それは凄まじいエネルギーの奔流に思えた。自分の体が内側から爆発した、と錯覚したシトゥリは、喉を振り絞って絶叫を上げていた。
「うわああああああああああああああ!!」
 座席のベルトが緩かったのか、シトゥリはそれを跳ね飛ばし、頭を掻き毟りながら立ち上がった。
「シトゥリくん!?」
「シトゥリくん!!」
 周りからはシトゥリがどう見えているのか、この生死を分ける状況の中、口々にその名を呼ぶ。サクヤだけが、違う声を上げた。
「ダメよ、まだ、それは――!」
「衝撃波、到達!信じられません、すべてブロックされています!タケミカヅチへの被害0!これは――」
 シリンが早口で叫んだ。
「これは、邇芸速(にぎはやみ)水バリアです!信じられない、信じられません。勝手に、そんな!」
「いいえ、発動させたのはシトゥリくんよ」
 頭を押さえて苦悶するシトゥリに、サクヤが駆け寄った。肩を抱いたその表情は、自責からか苦い。
「この子は、そのためにこの艦へ配属されたの。でもまだ、耐え切れる状態じゃないはず」
「ぐああああああああああああっ!」
 サクヤの言葉に応じるように、シトゥリは首を仰け反らせ、叫んだ。壊れる。脳細胞が一つ一つ焼け、体の中から、もっと大きなものが膨らんでいく感覚。自分が違うものになってしまう。
「衝撃波、収束に向かいます。安全域です」
「キリエ、お願い」
 シリンの言葉を聞いて、サクヤが言った。やってきたキリエがシトゥリの体を受け取って、首の後ろを軽く突くと、シトゥリは気を失った。同時に光の中にあったようなブリッジも、もとに戻る。シトゥリの感じた閃光は、その体の中から実際発せられたものだったのだ。
 どぉん、と一回、艦が揺れた。サクヤが艦長席に戻りながら言った。
「この衝撃は?」
「邇芸速水バリアが消えたため、爆発の残滓の一部が衝突した模様。損傷軽微ですが、7番外部隔壁に穴が開いています。自動応急処置で7番ルートの隔壁は封鎖されました」
 シリンが報告した。声には、安堵の色が濃い。
「そう。みんな、お疲れさま。予定を変更して近くの特異点から地上に戻って、補給を受けましょう。このまま警戒航行を続けて」
 サクヤが言い、大きく息をついた。張り詰めていたブリッジに、ようやく和やかな空気が戻りつつあった。
「うう……」
 シトゥリが呻いて、目を開けた。キリエが優しく呼びかける。
「お疲れさま。あなたのおかげで、みんな生きてるわ。なんとか耐えたみたいだから大丈夫だと思うけど、どこか変なところはない?」
 シトゥリは柔らかい腕の中で、キリエの顔を呆と眺めた。頭がふらふらするが、それは気絶させられたショックのせいのようだ。体に力を入れれば、立ち上がって歩くことも出来そうだった。別段異常はないと言おうとした瞬間、声が詰まるほどの性欲が下半身から突き上げた。異様なまでのその感覚に、シトゥリは息を呑んだ。
「どうしたの?」
「いえ……大丈夫です」
 股間に目をやると、大きくテントを張っていた。目の動きに気付いたキリエが視線を追い、それを見てにっこり笑った。
「そうね、あれは精を使うそうだから。サクヤ!」
 キリエが艦長席を振り返る。
「あたしは、このコを自分の部屋で介抱するけど、いい?」
 自分の部屋で、と言うところを強調する。サクヤも分かっているのか、苦笑気味に返した。
「分かったわ。お願いします。本当なら、わたしが責任を取らなくちゃならないんだけど」
「聞いた?シトゥリくん。サクヤを抱くチャンスよ」
「いいいいいいいです」
 真っ赤になってシトゥリは首を振った。どうして男の自分が赤面せずにいられないことを平気で口に出来るのか。女だけのコミュニティーはそんなものなのだろうか。
「もー、押しが弱いわね。サクヤってあれで、あたしより巨乳なのよ。脱いだらすごいんだから」
「早く行って頂戴」
 サクヤが片手でコンソールの縁を叩いた。くすくす笑いながら、キリエがシトゥリの脇に肩を入れ、立ち上がらせる。シトゥリは歩けると言ったが、取り合われなかった。シリンが手を挙げた。
「艦長、トイレ行っていいですかー?」
「許可します。学校じゃないんだからいちいち言わなくてよろし」
 半ばうんざりした調子でサクヤが言った。扱いにくい連中だ、と言うところだろう。シリンを含めて3人で、シトゥリたちはブリッジを後にした。
「でもすごかったです、シトゥリさん」
 廊下を歩きながら、珍しく興奮した調子でシリンが言った。
「そうですか。ぜんぜん、覚えてません」
「なんかこう、体がぴかーって光った瞬間、邇芸速水バリアが展開されたんですよ。あれがなかったら、今頃わたしたち、宇宙の構成分子の仲間入りでしたね」
 今さらになって、ようやく恐怖が実感されてきた。自分の体が良く分からないことにならなかったら、宇宙の藻屑だったのだ。微妙な身震いを感じたか、肩を支えるキリエがぽんぽんと背中を叩いた。
 じゃあ、わたしはこれで、とシリンは女子トイレに入っていった。次の瞬間、悲鳴が響き渡る。
「きゃー!な、なにこれー!」
 振り返ると、トイレの入り口から、両手を組み合わせたシリンがあとずさりしていた。
「どうしたの!」
 シトゥリを離し、キリエが駆け寄った。トイレの中を覗き、同じく絶句する。シトゥリもそこへ行こうとした瞬間、トイレの入り口からびゅっと太い紐のようなものが大量に迸った。キリエは身軽に飛びのきそれをかわしたが、シリンはもろに飲み込まれる。キリエの叫びが響いた。
「邪神よ!爆発した邪神の欠片だわ!」
 それは芋虫と蛙を混ぜたような体を徐々に外へ現そうとしていた。天井につっかえるほど大きい。キリエはブリッジ側に避けていたため、シトゥリと分断されていた。シトゥリも逃げようとするが、始めて目の当たりにする邪神の威容に圧されたか、先ほどの影響か、足が竦んでなかなか動けない。ぬらぬらと光る触手が前面から大量に蠢いている。
「畜生、さっきの衝撃、こいつだったのね。まさか中に侵入されてるとは――。シトゥリくん、逃げて!あたしは武器を持ってくる!」
「わかりました!」
 そう、せっかく助かったのだ。逃げなければ。あえて触手の中にうずもれたシリンのことは考えないようにしつつ、シトゥリはふらつく足できびすを返した。
 その瞬間、どん、と壁のようなものにぶち当たる。
「え……?」
 目の前には灰色のぶよぶよしたものが広がっていた。視線を上げると、廊下いっぱいにそれは広がり、そしてびらびらと触手が端から伸びている。
「まさか、2匹……!?」
 叫んだ瞬間、足首を触手に取られ、逆さ吊りに持ち上げられる。トイレから出てきた邪神と、シトゥリを捕らえた邪神は、ナメクジのように歩み寄り、身を寄せ合うと触手を絡め合わせ始めた。くっついているのだ。
「ぷぁっ!やだ、助けてぇ!」
 逆さまのまま下を見ると、シリンが触手に手足を絡められたままもがいていた。叫び声が聞こえなかったのは、口の中に触手が入り込んでいたためらしい。すでに制服のジャケットは剥ぎ取られ、その下のパジャマもあちこちが破られて、肌が露出していた。17歳にしては、シリンの肉体は発達していないようだった。ふっくらした乳房も、まだ固さの残る太腿も、どことなく幼さを感じさせる。
見てはいけないと思うのだが、ブリッジにいた時から続く猛烈な性欲がそれを許さない。肌をうねる触手がびりびりと服を破いていくさまは、嗜虐心のような欲望の炎を掻き立てる光景だった。ついにシリンは下着も破り取られ、腰を持ち上げられた姿勢で大きく開脚させられた。
まるでシトゥリに見せ付けるように触手が花弁の端を押さえ、ぱっくりと開かせる。シリンの陰毛は無毛に近いほど薄く、まるで何も生えていないように見えた。開いた花弁の中には、ピンク色の肉が瑞々しい色合いで息づいていた。その端から、トロっと液体が滴ったのを見て、シトゥリは驚いた。
「やだぁ、見ないで、見ないでぇ」
 シリンがシトゥリの存在に気付き、上を見上げて哀願する。その頬は上気して息も荒かった。触手の1本がシリンの口に突きこまれた。
「んー、んー!」
 触手が脈打ち、何かを注ぎ込む動作を見せている。苦しそうに涙ぐんだシリンは、それを飲み込むしかない。同時に、花弁の中から大量の蜜が溢れ、流れ出した。ひくひくとまるでねだるように柔肉が妖しく蠢く。
「けほっ、けほ」
 ようやく開放されたシリンの表情は、いっそう上気していた。とろけたような目でシトゥリを見上げ、ああ、と呟く。どうやら催淫効果のあるものを触手は飲ませているようだ。無垢な少女が肉欲に溺れていくさまのような、倒錯的なエロティシズムがある。実際のところはシリンはクラのおもちゃにされているらしいから、無垢などと言うことは無いのだろうが。
 人差し指ほどの太さの触手が、水の溢れる泉のような花弁の上で、狙いを定めるようにしなりをつけた。シリンは潤んだ眼差しで、じっとそれを見つめながら、舌で唇を舐めた。シリンの視線の先で、それは一気に蜜壺の中へ突き刺さった。
「あー……」
 鳥が鳴くような、うっとりとした声をシリンは上げた。出入りを開始する1本を皮切りに、何本もの人差し指サイズの触手が立ち上がり、次々と柔肉の中へと分け入っていく。それが突き入れられるたび、シリンは体をびくっと震わせた。
「あうっ!あうっ!あうっ!」
 シリンの花弁は限界まで触手を受け入れ、丸く広がっていた。まるでコードの束を突き入れられているようだ。触手はそれ1本1本が独立した動きで、シリンの膣内を思うさま嬲っていた。素早く出入りを繰り返すものもあれば、ゆっくりと舐めるような動きをするものや、中を掻き回しながらうねるものもある。溢れ出した蜜は花弁の縁からだけでなく、触手の間からも染み出し、くちゃくちゃと音を立てた。入りきらない触手は、するすると下に下がり、花弁から垂れた蜜に濡れるアナルの入り口を摩った。
「やっ、ダメそこぉ」
 半ば焦点の合わない瞳で言われても、逆に欲しがっているようにしか見えない。触手はその蜜を潤滑液代わりに、ずぶっと中へ潜り込んだ。
「はぁぁぁ……!お尻、なんて……クラさんにしか許してないのにぃ」
 そんなことまでしてたのか、と逆さまのまま、シトゥリは半ば呆れた。頭に下がってくる血液のせいで、頭痛がひどい。考えてみれば、掴まれているのは片足だけだ。もう片方の足で何度か触手を蹴ると、シトゥリは開放され、下の触手の群れの中へ落下した。
 頭を振って起き上がると、シリンはアナルに3,4本、その上には10本近い触手を突き込まれて、嬌声を上げていた。触手同士はやがて震えながらくっつき始め、一本の太いものに融合した。それが激しい動きでシリンの膣とアナルへ出入りする。
「はー!ぁぁー!ぁー!ぁー!」
 突き上げられる勢いで肺から声が押し出されているような、擦れながらも妙に色っぽい喘ぎ声だ。なんとか助けようと触手を掻き分けてたどり着いたシトゥリは、それを聞いて急激に理性が失われていくのを感じた。
 奥歯を噛み締め、かろうじてそれを押さえると、シトゥリはシリンの花弁に刺さった太い触手を掴み、一気に引き抜いた。
「っっっ!!」
 シリンが目を限界まで開いて、口をパクパクさせる。抜き取った花弁からは、びゅっびゅっと白濁した液体が噴出していた。急激に触手が抜けていく感触に、絶頂へ達して潮を吹いたらしい。またしても脳髄を溶かすような欲情に、シトゥリはふらついてシリンの上に覆いかぶさってしまった。
「ご、ごめんなさいシリンさん……。僕、もう我慢できません」
 そう呟くのだけが、理性の最終抵抗だった。シトゥリはジッパーを下げると、中身を出すのももどかしくシリンの股の間に割って入った。アナルにはまだ触手が入ったままだったが、それを抜いてやる理性も残っていなかった。ようやく潮を吹き終えたばかりの蜜壺に、シトゥリは自分のモノを突き入れた。
「あああっ!」
 新たな刺激に、シリンが再び嬌声を上げた。もうシリンにも理性が残っていないのだろう、口元は与えられた快楽に悦んで、笑みの形に刻まれている。シトゥリは膣の中の自分のモノと、アナルから差し込まれた触手とが、内部でごりごりとこすり合わさっているのを感じた。それがこすれあうたび、シリンは獣の声を上げた。
「ぁあっ!ぁあっ!ぁあああっ」
 触手によって十分な広さに拡張されていた膣は、シトゥリのものをスムーズに出入りさせた。ぐちゅぐちゅと言う音が辺りに響き渡る。すぐ射精するつもりが、広がってしまったせいで締め付けが悪く、シトゥリはなんとか早く終わらせようとさらに激しく腰を動かした。そのせいで余計にシリンが快楽に狂う。
「ぁぁぁっ!ぁぁっ!ぁああー!」
 首を振り、体をよじろうとするが、しっかりと触手に固定されてしまって身動きは取れない。それが返ってシリンを高ぶらせているようだった。末期の患者のように白い腹を激しく上下させ、シリンが叫んだ。
「やあーっは!出るっ!吹いちゃうう!」
 突如、膣の中が複雑な動きをみせ、シトゥリのイチモツを挟み込んだ。その刺激に、シトゥリも中へ放っていた。つい1時間前、クラと一戦交えた後とは思えないほど、大量の精液が流れ込んでいく。シリンの花弁からも、液体が噴出して、シトゥリの腹に当たって飛び散った。
 背筋が痺れ渡る快感が終わると、シトゥリは身を離した。シリンのアナルを犯していた触手も力を失って抜け落ち、ぽっかり空いたその穴へ、花弁から逆流した白い液体が流れ込んでいた。だんだん頭が冷静になっていくにつれて、現状が混乱しそうなほどの勢いで雪崩れ込んでくる。
「な、何をやっちゃったんだ僕は!」
 とりあえず青くなって呟き、シトゥリはシリンを抱き起こした。気絶しているのかと思ったが、シリンはまだ媚液の影響から抜け出ていないようだ。薄く目を開けると、ねっとりとキスをしてくる。
「わわっ、それどころじゃないんですって!」
「うふふ、シトゥリさん、もう一回しよぉ……」
 くっついてくるシリンを離しながら、ふとシトゥリは周りがおかしいことに気付いた。巨大な邪神の体に包み込まれるようにして二人はその中にいるが、全ての触手がぐったりと垂れ下がり、色を失っている。
「これは……」
 と状況を理解しようとした時、聞きなれない男の声が、邪神の向こうからした。
「大丈夫かー!」
 それで分かった。外からの攻撃で、邪神は退治されたのだ。だが、一体誰なのか。よく聞くと数人の声と気配がする。
「はいー!でも、女の子が!」
 シトゥリは返事をすると、伏せろと指示があった。言われたとおり伏せると、勘違いしたシリンが嬉しそうに足を絡めてくる。出しっぱなしのイチモツに気付き、慌ててしまいこんだところで、邪神の上半分が吹き飛んだ。
「大丈夫かっ!」
 間髪いれずに武装した数人の男が雪崩れこんできた。すぐに抱き起こされ、毛布を当てられる。相当訓練した部隊のようだ。
「あの、あなたたちは」
「我々は、八十禍津日(やそまがつひ)教団のものだ。貴艦のSOSをキャッチし、母船に収容した。もう大丈夫だ。それより、怪我はないかね」
「僕は大丈夫ですけど、彼女が邪神に当てられたみたいで……」
「……のようです」
 シリンを毛布に包んで抱きかかえた黒人が、困ったように言った。シリンはその胸を撫で回しながら、首筋にキスの雨を降らせている。リーダー格の男は、表情を崩さずに指示を出した。
「すぐアシリア様の所へ連れて行け。危険はないだろうが、禍払いをした方がいいだろう」
「はっ!」
 黒人は足だけで敬礼すると、シリンを抱えたまま走っていった。入れ違いに、サクヤたちが走ってこちらへ向かってきた。
「シトゥリくん、大丈夫!?」
「はい」
「よかった……。ごめんね、助けに来られなくて。邪神が分裂していたみたいで、ここに来るどころかブリッジを守るので精一杯だったの」
 そう言ったのはキリエ。ところどころ制服は破れ、戦いの激しさを物語っている。シリンの様子を聞くクラに、シトゥリは大丈夫と返した。
 ふと気付くと、リーダーが敬礼していた。それにならってか、他の男たちも後ろに並び、こちらに向かって敬礼する。
「ちょ、な、なんなの……?」
 キリエが小声で焦った声を出す。リーダーは敬礼を解くと、頭を下げた。
「お久しぶりでございます、クラティナ様」
「クラティナ……様!?」
 シトゥリたちは声を合わせて驚いていた。それを気にした様子もなく、むしろ冷たい眼差しで男たちを見据えながら、クラは言った。
「3年ぶりになるかしら。さあ、私の仲間を母船に案内なさい」
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