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朱ノ青 その10


 繋がった感触をうっとりと味わいながら、ユキはいった。
 唾をひとつ飲み込み、ツバキはなにもいわずにすぐそばまでやってくる。
 ユキは畳みに垂れ落ちていた精液を指先ですくうと、それを差し出した。
「ほら……アゲハの精液」
 ぽぉっとした表情でツバキは白く濡れた指先を目で追う。
 ユキはささやくように続ける。
「子供はダメでも、交わることくらいはいいだろ? 避妊に気をつければ、ある程度調節できる」
「それでも……ダメ……です。だって、わたくしたちは双子ですもの……。それに、そんなことしたら、赤ちゃん欲しくなってきちゃう……」
「ツバキも欲しいんだな、アゲハの子供」
「はい……欲しいです。精液欲しい……おなかの中に入れたい」
「私みたいにしたら、たくさんもらえるんだぞ? アゲハはとってもいっぱい出すんだ。それも、何回も何回もな」
「うっ……ふぅ……ユキさん、精液……でもダメ。ああ……わたくし、おかしくなりそう」
「この前はどうやったんだ? アゲハの精液もらえたのか?」
「あぁ……いただきました。お口から……妊娠しちゃうかと思うくらい、いっぱいいっぱい、流し込んでいただいて……う、うぅ、ふぅんっ!」
 思い出しただけで、ツバキは顔を歪め、肩を小刻みに震わせた。
 軽くイってしまったらしい。
「じゃあ今日も飲ませてあげようか。精飲好きなツバキのために、私が濃いのを絞り出してあげるからな」
「うあっ、ユキさん、いきなり動かないでっ」
 ユキは腰を振りつつ、精液をまぶした指をツバキの目の前に掲げる。
「もう少し待ってくれよ、ツバキ。もうちょっとで濃いのが準備できるから。あっ、んっ、……くぅ……それまで、さっき出した精液でがまんしてくれ」
 口元へ指を持っていくと、ツバキは我慢できない様子でしゃぶりついた。
「ん……ちゅ……くちゅ……ちゅぱ……ああ……お兄様の味。……昨日、しっかり舌で覚えたお兄様の味ですわ……ちゅ……」
「ふぅ、んはあっ、あっ、ゆ、指を舐められながら突かれるのっ、いい、かも……! つ、ツバキ、もうなくなったでしょ、精液。でもほら、た、ああっ、畳の上にいっぱい散らばってるのよ。あなたの好きな精液……くっ!」
 霞がかった瞳で、ツバキは転々と散る白い淫汁を見つける。
 もうためらうような理性は残っていなかった。
 犬のように這いつくばると、ツバキは舌を伸ばし、畳にこぼれた精液を舐め取りはじめる。
「だ、だめだよツバキ……ちゃん……。そんなの、きたな……うっ、くぅ……し、締めないでユキさぁん……ああっ! いいよぉ……」
 ぺちゃぺちゃと音を立てながらツバキは畳を這いずり、淫らな液体を舌から口へと移していく。
 やがてその顔は、精液の跡を辿って、その大元へたどり着いていた。
 視線を上げたツバキの眼前で、結合するふたつの秘所が濡れ光っている。
「ああ……お兄様のたくましいものが、ユキさんのあそこに深々と埋まって……素敵……んっ、ちゅっ……」
「わ、わぁっ」
 ツバキが結合部からもれる陰茎を舐め上げ、アゲハはすっとんきょうな声を発した。
 舌先はねっとりとねぶり上げ、ちろちろとくすぐりながら、玉袋までを行き来する。
「あはっ、あっ、いい!」
 そしてユキの秘裂をなぞって、淫核を啜りこんだ。ビクン、と背を仰け反らせ、ユキは後ろざまにアゲハの頭をかき抱いた。
「いいぞ、ツバキ、それ、もっと吸って! あぁー……! 子宮小突かれながら、舐められて、あたし、も、あ、あ、あっ!」
「だめぇ! ユキさんの膣、いつもよりうねって……ボク、イっちゃうよぉ!」
「イって、注いで! アゲハぁ!」
「あう、あううううっ!」
 びゅるっ! びゅうううう!
「きゃっ」
 射精を開始した男根のあまりの激しさに、驚いてツバキはすこし身を離す。
 血管を脈打たせながら、アゲハの剛直はユキの胎内へ精液を送り込んでいた。
 ずっぷりと埋め込まれたそれは、まるでふいごのように蠢きながら、陰嚢に貯め込まれた子種を、子宮へと移しかえていく。
「熱い、ああ、すごいぃ! まだ、まだ出てる、熱いのまだ出てる!」
 うわごとのように叫びながら、ユキは天井を仰いでいる。
 アゲハはピンと両足を伸ばしたまま、しがみつくみたいにユキの豊満な身体を抱いて、歯を食いしばっていた。強すぎる射精の快感に、身体中の筋肉が強張っている。
 ドク、ドク、ドク……ドク……。
「はぁー……、あぁ……」
 末期の吐息のような声を上げたのはどちらか。
 男根が最後の一滴を吐き出したのと同時に、弛緩したアゲハはばったりと倒れ込んだ。膣からは、にゅるっと男根がまろびでてくる。ツバキは霞がかった瞳のまま、その先端に飛びついた。
「お兄様……。精子、いただきます……」
「あっ、ツバキちゃ……うっ」
 愛液でぬるぬるに濡れたそれを口に含むと、ツバキはちゅるるるっと音を立てて、尿道に残った精液を吸い上げた。その刺激にアゲハの両足がビクビクと痙攣する。
「ぷぁっ。……ふふ、おいしい……」
 顔を上げ、舌舐めずりをしながら、その味をツバキは反芻した。
 絶頂から我にかえったユキが、その艶然とした表情を満足げに見やり、自らのまたぐらをぱっくりと指で開いて、ツバキに誇示した。まだ男根を咥えているみたいに丸く穴のあいた膣口から、とろとろと逆流したものが流れている。
「ほら、絞ってやったぞ、ツバキ。とっておきに濃いやつだ。欲しいか?」
「ああ……はい。欲しいです。とっても……」
「ふふふ、いい子だな。じゃあ思う存分、舐めてもいいぞ。アゲハの精液……」
 ツバキはユキの両足の間に割って入ると、秘所に唇をつけ、遠慮のかけらもなく吸い上げた。
 ずぞぞぞっ! じゅるるるぅっ!
「あはっ、あっ、いいぞ。膣だけじゃなくて、子宮にもねっとりした濃ぉいのが溜まってるんだ。あぁ、もっと、舌も入れて吸うんだ」
 吸引し、舌を差し込んでかき出し、ツバキは夢中で精液をむさぼっている。
 その艶やかな髪を撫でながら、ユキは頬を上気させて慈しむようにいった。
「これから毎日、こうやって三人で愉しむんだ。仲間はずれはなしだぞ? いいな、ツバキ」
 ツバキは股間から顔をあげると、無我夢中で、何度も何度もうなずいた。
 その口元は白い液体でべとべとに汚れ、しかし、いつもよりきれいだとアゲハは思った。
朱ノ青 その9



「……いいんだぞ、アゲハ」
 ゆっくりと男根を撫でさすりながら、やさしくユキがささやく。
「ここは世俗から離れた場所。お前に常識を叩き込んだのは私だけど、それはいずれ私がいなくなったとき、お前が下界に降りて困るかもしれないからだ。だが、ツバキがここへ来てくれた。もうお前がひとりになることはないんだ……んっ……ちゅっ……」
「あ、やっ……首筋を舐めたら……」
「お前はひとりじゃなくなった。ここでずっとツバキと暮らしてもいいんだ。世間の常識なんぞここには、お前たちにはいらない。兄妹で愛し合っても、子供を作ったって、咎める人間はだれもいやしない……」
「う、ううぅ……う……」
 首筋にくちびるを這わされ、乳首を転がされ、男根をしゅっしゅとしごかれながら、アゲハは甘い言葉に脳髄を犯されていく気がした。
 射精感が急激に高まっていく。
「あう、あう、ああああ……!」
「そうだ、妊娠させてもいいんだ。ほら、想像しろよ。この手がツバキの膣だって。この中で射精したら孕ませることが出来るんだ。素敵だろう?」
「ああ、あああああ」
 情けない声を上げて、アゲハは達してしまう。
 びゅっびゅっ、と白濁した液体が前方の畳へと飛び散っていった。
「はぁ、ぁぁああ……」
 射精は数回にわたって行われ、どろっとした精液の塊というよりは、先走り汁の混じった感じがする水っぽいものが吐き出された。
「……早かったから、だらしない射精になっちゃったな。まだ身体が準備できてないのに勝手に射精しちゃったんだな。……まあ次はもっと濃いのが出るだろう」
 ユキはぐったりするアゲハを抱きとめたまま、視線を戸口へ向ける。
「ツバキ。隠れて見てないで、こっちへ来な」
 がたっ、と襖が鳴って、その向こうの動揺が伝わった。
 アゲハはぼんやりと目を向ける。
「ツバキちゃん……?」
「は、はい……」
 観念して、襖を開けたツバキが入ってくる。どうやら襖の隙間から中を覗いていたらしい。
 顔は上気していて、息づかいも荒いようだ。
 落ち着きなく着物を直しながら、戸口近くへ正座する。そのすぐ手前まで、アゲハの精液は飛び散っていた。
「ツバキ、聞いてたなら話は早い。アゲハはお前と子供を作りたくっておチンチンから汁を飛ばしてしまうんだ。ツバキはどうだ? おなかの中に白いヤツをいっぱい貰って、受精してみたくないか? こいつに孕まされてみたくないか?」
「わ、わ、わたくし……は……」
 顔をさらに赤くさせて、ツバキはうつむいてしまう。癖なのか、指は着物の端を何度も直していた。
 しばらくそうしていた後、考えがまとまったのか、顔を上げる。口元は硬く結ばれていた。
「そのようなことはできません。わたくしたちは兄妹なのですよ」
「あ~、そうか。残念だったな、アゲハ」
「ツバキちゃんのいうとおりだよ。例えボクがそう思ってても、やっぱりいけないよ……」
「そうかそうか……。じゃあこのおチンポは、いつものように私がいただこうかな」
「あっ」
 中途半端な射精の後も撫でられ続けていた男根は、カチカチに硬いままだった。
 後ろから回り込んだユキが、アゲハの腰の上にまたがる。背中をアゲハの方に向けて、掻き開いた着物の裾からパックリと秘所をツバキに見せつけ、背面座位の姿勢で男根の切っ先をあてがった。
 挿入はせずに、性交への期待で筋ばってきた男根を指先で掻くように撫でる。
「すごいだろ、ツバキ。こんなに熱くて、太くて硬いおチンチンなんか、滅多にないんだぞ。こんなたくましいものでこの中を突き回されてみろ。あっという間にアゲハの物にされてしまう。こいつがなにをいったか知らんが、私は虜にされたんだ。アゲハのおチンチンの、おチンチンのためのマンコにされたんだ。育ての親を所有物にしてしまうくらい、すごいチンポなんだ、これは……んっ……うっ……くぅん……」
 そういいながらユキは腰を沈めていく。
 すでに垂れ流しになっていた愛液が男根の皮を包んで粘膜を作り、性交用の淫具にしてから奥にある穴の中へ飲み込んでいった。
「うぁっ、あああ……! いい、いいよアゲハぁ。毎日してても、何回やっても、はじめてしたときみたいに、気持ちいい……! あぁ、最高よ。この硬いの、最高……!」
「ユキ、さん……キツい……んんっ、ボクも気持ちよくなっちゃう……」
 自在に圧力を変えてくるユキの膣に絞られて、アゲハも我を忘れてしまう。
 後ろから抱きしめ、豊満な乳房を思うさまもみしだいた。乱れた着物から、白い果実が零れ落ちていく。
「ツバキ……そんな遠くで見てないで、もっと近くにこいよ……」
 繋がった感触をうっとりと味わいながら、ユキはいった。
学生アパートのデキゴト その2
「かすみ……おれもイかせろよ……」
 聞こえてないのはわかっていたけど、おれはそうささやいて、さらにかすみの身体を持ち上げた。
 小動物みたいに小柄なかすみに比べ、おれはバレー部とバスケ部の間で争奪戦が起きたほど背が高い。大きな人形を抱えているようなものだ。持ち上げてしまって、ひざの上に載せてしまうと、なんだか全部を言いなりにできた気がして、おれはすっかり興奮してしまった。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
 そのまま自分が気持ちいいように前後運動を開始する。
 かすみの手足がぶらぶらと揺れて、口は半開き、目は焦点を合わせずに中空へさまよっていた。
 なんだか死体を抱いているみたいで、変に倒錯してしまう。
「はぁ……はぁ……かすみ……いいよ……」
 オルガスムスで分泌されたたっぷりの愛液は、膣奥に充分溜まっていて、まるでちんぽがあたたかい海を泳いでいるみたいだった。
 強烈な締め付けはないものの、ときおり電気ショックを受けたみたいにおまんこが痙攣して、絶頂の余韻を示していた。それがほどよい刺激になり、倒錯的な気分に後押しされて、すぐに射精感が高まってくる。
「イクよ……出すよ……」
 普段は相手の絶頂に合わせようとか、どのタイミングで出そうとか、計算しながら射精するけど、今はそんなつもりもなかった。
 自分の快感が頂点に達するように、ひたすら腰を動かして、ちんぽに摩擦を加えていく。
 どっちかって言うと、オナニーしているみたいだった。
「あ……ああぁっ!」
 かすみのおまんこをオナニーホールにしている……そんな、失礼極まりない妄想が渦巻いて、おれの快感は射精へ到達した。
「ん! んんっ! ふうっ」
 漏れそうになる声を抑えて、腰に力を入れる。
 かすみはだらしなく弛緩したまま、おれに精液を注ぎ込まれている。
「くっ……かすみ……かすみ……はぁっ!」
 溜まりきった愛液に許容量以上の精液を流し込まれて、かすみのおまんこはオーバーフローを起こした。
 おれたちのつながっている隙間から、溢れたミックスジュースが噴き出してくる。
 かすみはぐったりしたまま心ここにあらずだったけど、その身体はおれの射精を機敏に感じ取ったようで、子宮へと送り込むように膣道がうねりはじめていた。
「はぁ……はぁ……よかったぞ……かすみ……」
 射精が終わってすぐにちんぽを引き抜き、流し込んだものがこれ以上漏れてしまう前に、かすみの腰を垂直に持ち上げて、膣口を上向きにさせる。
 変な体勢にされてもなすがままだった。腰を抱え込んで、両手を使って肉ひだを開く。
 くぱっと開かれたおまんこは、まだおれのちんぽの形のまま丸く口をあけていて、その中に溜まった白く濁った液体がぬめぬめと輝いていた。
 よく見ると膣壁が呼吸するように蠢いていて、嚥下するみたいに子宮が精液を飲み込んでいるのがわかった。
「……ゆーくん……くるしい……」
「あ、ごめん……」
 ようやく我に返ったかすみがもがきはじめた。おれはあわてて身体を離し、ベッドに横たえてやる。
 しばらくお互いに呼吸を整えているうちに、となりからくやしそうな声が上がった。
「わたし、イかされてばっかりだぁ……」
「……いいじゃんか」
「そんなことないよ。ひとりだけイっちゃったら、ゆーくんに悪いし……。今日だって勝手に気持ちよくなっちゃって、ゆーくんほったらかしにしちゃったよ……」
 しゅんとしてうつぶせになってしまう。
 たしかにかすみは一度イってしまうと動かなくなるから、今日みたいに変な妄想が働かない限りおれはつまらない。
 でもおかげでかすみのアクメを見定めて、快感をコントロールしていく技術が磨かれたのだ。全国かすみアクメコンテストがあったらぶっちぎりで一位になる自信がある。オルガスムスのタイミングが合わなかったら、それはおれが失敗したってことなんだけど、かすみはその辺を理解していない。まぁ理解してもらうようなことでもないんだけど。
 どうやって慰めたものか思案しているうちに、ぐっと顔を持ち上げて、かすみは勝手に立ち直った。なぜか握り拳を固めている。
「よし!」
「なにがよしだよ。変な奴」
「次回はわたしがゆーくんを気持ちよくしてあげる。わたしより先にゆーくんをイかせる!」
「……がんばれ」
「あ、ばかにしたな? 後悔するよ」
「しないよ」
「しばらくいろいろ勉強したりするから、えっちは禁止ね」
「はぁ!?」
「それからオナニーも禁止! 溜めといてもらったほうがいいし」
「まて、そりゃ溜まってたらだれだってすぐイクだろ」
「あ、そっかぁー。じゃあオナニー解禁! よかったね」
 にっこり笑うかすみ。
 言い出したら聞かないのだ。ため息をついてそれを眺め、おれははやくも後悔していた。
学生アパートのデキゴト その1
 ここは高校からほど近い学生アパート――。
 男女共用、学生専用の、ほとんど寮のような建物だ。
 自由な校風を反映した、と言うよりはそれを曲解した連中が主に生息している。
 一階が男子部屋、二階が女子部屋で、男子が二階に上がるのは禁止されているのに、守っている奴なんていない。
 みんなが和気あいあいと混じり合って、ときにカオスになりながら生活するこの場所を、おれはすごく気に入っていた。
 それに――。
「あうぅ……ゆーくん……も、だめ、イっちゃう……イク……あ、はあぁ……」
 こうやって、大好きな彼女と気軽にいつでもセックスができる。
 今日も今日とて、かすみはおれの腰の下でくねくねしながら、うっとりとアクメに達しようとしていた。
「ゆーくん、ゆーくん! すき……すきぃ……!」
 正常位で交わった膣がギュッとしまり、背中にまわした手でしがみつくようにしながら、もう無我夢中だ。
 おれはこの絶頂寸前できゅっきゅとしまってくる膣の動きが好きだった。達してしまって激しいしめつけを与えてくるのも好きだけど、それだとおれもいっしょにイってしまう可能性が高いから、なるだけゆっくりと長い時間、このとろけるようなおまんこを味わっていたいと思う。
 だからおれはわざと腰の動きを浅くしたり、膣の中のあまり感じない部分めがけて突きいれたりして、かすみの快感をコントロールしてやる。
「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ」
 イくことを寸止めされたまま、でも刺激だけは与えられ続けて、かすみのおまんこはもっと欲しいと、おれのちんぽをにぎにぎとしはじめる。これが気持ちいいのだ。
 射精してしまうほど強いしめつけではないけれど、ほんとうに手のひらでグーパーされているみたいで、ストロークのたびにかなりの快感が得られる。それになにより、かすみの身体が欲しがっている様子が生々しく感じられて、幸せな気分になるのだ。だれだって、こんな風に求められて、悪い気はしない。
「やっ、あっ、もうイク……はぁっ、イクのに……あは……イかせて……あぁ、イかせて……ゆーくぅん……」
 寸止めのまま数分も経つと、かすみはすっかり理性をとろかせてしまって、あまえた声でおねだりをしてくる。これがまたかわいくていい。
 表面はぽやぽやしているくせに、根っこの部分で意地っ張りなところがあるかすみを、心と身体の両方から屈服させている。それがたまらなく愉しいのだ。だからつい、いじわるな口調で言ってしまう。
「ダぁメ……」
 耳元でそうささやかれて、かすみはうっすらと目を開け、非難のまなざしを向けた。
「ゆーくんのばか……。えっち……ヘンタイ……はぁぁぁんっ!」
 上の口では悪口を吐いているのに、下の口へちょっと強くちんぽを突き込まれるだけで、大声を上げてうっとりとしてしまう。
「ああ……あ……!」
 しかしすこしばかり加減を間違えたようで、そのときかすみは軽くイってしまったみたいだった。膣の動きが『にぎにぎ』ではなく、『ぎゅっ』になって、その状態のまま『ピクピク』している。
 まだ本格的な絶頂には刺激が足りないはずだ。ちょっともの足りないけど、おれは仕上げることにした。
 足を高く抱え上げて、腰が浮いてしまうくらい持ち上げる。こうすると、かすみが一番弱い子宮口近くの快感点――ポルチオとか言ったか、そこにちんぽが突き刺さるのだ。
「ばかっ……ヘンタイ……ヘンタイ……!」
 口ではまだ悪口を叩きながらも、この体勢に入ったと言うことはイかせてもらえるってことで、かすみは唇をゆるませてうれしそうだった。
 太ももを抱え込んで固定すると、おれは大振りのモーションで抜き差しを開始する。
 亀頭の先っぽがガンガン奥のやわらかい壁にぶつかり、おまんこの隙間からしぶいた愛液がぴちゃぴちゃと濡れた音を響かせた。
「あん! ああん!」
 下の階まで聞こえるんじゃないかってくらい大声でかすみは喘ぐ。
 五回もピストン運動を繰り返さないうちに、ピンっとその四肢が空中に突っ張った。
「ああああああぁぁぁぁん!」
 太ももがブルブルと震え、つま先は指の先までまっすぐにのばされる。
「はあああぁっ! ああああぁ! ふあああぁっ!」
 どうやら速攻で、深いアクメに到達してしまったらしい。
 かすみのおまんこはおれのちんぽをギチギチとしめつけて、臼がすり潰すみたいにうねっている。
 この瞬間に射精できたら目の前がチカチカするくらい気持ちいいんだけど、今日はタイミングが合わなかったみたいだ。腰を動かそうにも、咥え込まれてしまって動けないし、例え動けても射精がはじまる頃には、かすみの絶頂は終わってしまっている。
 じれったいけど、おれは落ち着くまで待つことにした。
「はあっ! はあっ! はぁ……はぁ……」
 やがてゆっくりと呼吸がおだやかになって、張りつめていた筋肉の緊張がほどけていった。
 ぱたぱたと手足がベッドの上に落ちて、かすみはぐったりとしてしまう。
 こうなると、長い場合、十分はこっちの世界に戻ってこない。気絶しているわけじゃないけど、半分失神していて、とろんとしたまま上の空になってしまう。はじめてこの状態になったときは、やりすぎたとあせったものだ。
最後の向こう側
 ルルル……ルルル……ルルル……。
 明かりを落とした室内に、シンプルな着信音が響く。
(あの人からだ……)
 栞(しおり)はベッドサイドに置かれたハンドバッグへ視線だけ向ける。
 もどかしげに着信を告げる携帯は、帰りが遅いことを心配した婚約者がかけてきたものに間違いない。
 いますぐ取り出して、通話ボタンを押さねばならなかった。
 だけど……。
「はっ、はっ、はっ、はっ……」
 子犬のように荒い息遣い。
 栞の胸に顔をうずめるようにしながら、小柄な少年が腰を振りたくっている。
「あっ、はっ、し、栞姉ちゃん……!」
 ぶるるるるっ!
 少年の背筋がゾクゾクと震えて、膣の中の剛直が何度もいきんだのがわかった。
 射精している。
 もう、何度目だろう……。
 数えることは簡単だ。
 足元へ無造作に捨てられた、使用済みのゴムが三個。
 いま膣内で少年の精液を受け止めているのが一個。
 枕もとに未使用の、最後の一個……。
(なんで、こんなことになったんだろう)
 ギュッと抱きついている少年を、いますぐにでも突き放すべきだ。
 でもどうしたって一生懸命射精する姿がかわいくて、押し返すどころかやさしく頭をなでてしまう。
「あぁ……」
 ため息のような吐息をついて、少年の身体が弛緩した。四回目とは思えない、元気な射精は終わったようだ。
「はい、おしまい」
 ポン、とその肩をたたき、つとめて明るく栞は言う。
 だが少年はもぞもぞと動き、枕もとのコンドームに手を伸ばした。
「あっ……、ダメよ」
「最後……最後だから……」
「慎ちゃんお願い、聞き分けて。お姉ちゃんもう終電だから……。お泊りはできないのよ?」
 いつの間にか着信音は止んでいる。婚約者に心配をかけているだけでも、手ひどい行動なのに……。
「ほんとにもう最後っ」
 だが泣きそうな顔でお願いされると、栞はどうしても弱い。
 そもそも、年上の自分が最初からいさめるべきだったのだ。
 そう言う弱みもあって、なかなか強くは拒絶できない。
「もお……、さっきもそう言ったでしょ」
 許可の調子を含めて言うと、慎介はうれしそうに顔を輝かせ、膣内から剛直を抜き取って、いそいそとゴムを付け替え始めた。
 相手は十歳年下の、まだ中学生の甥だ。
 二、三年前まではこの実家でいっしょに住んでいて、本当に弟のように思っていた。
 就職してひとり暮らしするようになってからは会う機会も減っていたけど……。
 いつまでたっても、子供のころみたいに、お姉ちゃんと結婚したいと言い続けていると思ったら、まさか、本気だったとは。
 女としてずっと愛されていた。
 そのことに気づかなかった自分にショックで、罪滅ぼししたい気持ちになったのと、あきらめてもらうきっかけになれば、そう思ったのと。
 求めてくる慎介を受け入れたのは、そんな理由からだった。
(でも……)
 こんなに何度もするつもりはなかった。
 栞が折れなければ、最初の一回でおしまいだっただろう。
 くるくるとゴムが巻かれていく、慎介の股間に目をやる。
(やっぱり……おおきい)
 将来の夫のモノしか栞は知らないが、それより幾段も太くて長く、カリ高のかっこいい形をしている。つい今朝まで子供だと思っていた存在の、しかも中学生が備えているものとは信じがたい。慎介は身体も小さいので、包皮にちんまりと包まれたのを想像していたのだった。
「栞姉ちゃん……」
 装着し終えた慎介が股間を密着させる。
 ずぶずぶと、肉ひだを掻き分けて、雄々しい男根が侵入してきた。
「最後……、最後だからね」
 言い聞かせるようにしながら、それを受け入れる。
 さすがにコンドームなしでセックスする気はない。バースコントロールに慎重な婚約者とも生ですることはないのだ。これ以上は拒絶できる、と栞も思っている。
 だから最後の一回……。
「ああっ、栞、姉ちゃん……! はっ、はぁっ」
 カクカクと腰が動き始めた。
 幾分慣れてきたようだが、まだまだテクニックもなにもない。ただ男が気持ちよくなるためだけの動作。
 いくら子供離れしたものを持っていたって、そこは童貞の少年にすぎなかった。
 だから、栞は理性を持って相手することができているのだ。
(でも……五回も……。信じられない……)
 淡白な婚約者はいつも一回出せばおしまいだ。
 しかも、すこし気合を入れてフェラチオしたり、自慢の胸でパイズリしたりすると、すぐイってしまって、そんなとき栞はお預けを食らったまま、悶々としなければならかった。
(慎ちゃんなら……何回でも……)
 もしこの肉棒を自分好みに躾けることができたら。
 たくましくて、太くて、熱い……。
 この雄々しいものが、愚直に出入りするだけじゃなく、膣内の気持ちいいポイントを、的確に突いてくるようになったら。
 胸に顔をうずめるだけじゃなく、乳首を吸ったり、クリトリスを転がしたり、責めの方法を覚えたら……。
(なっ、なにを考えてるの、わたし……!)
 あわてて、心の中で首を振る。
 無意識のうちに考えてしまったことが本音に思えて、栞はすこし怖くなった。
 このままだらだら関係を続けてしまう……。
 それだけは回避しなくてはならない。
(はやくイかせないと……!)
 いますぐにでも終わらせないと、癖になってしまいそうな恐怖が芽生えた。
 栞はマグロ状態で横たわっていた体勢をずらし、腰を持ち上げ気味にして、本格的に男を受け入れる姿勢を取った。
さっきから膣の浅いところばかりを男根は行き来していて、それではあまり気持ちよくないだろうと思ったのだ。全体を深く包み込めば、すぐにイってしまうだろう……。
「あんっ!」
 だがそれが間違いだった。
 膣奥の天井を亀頭がこすった瞬間、栞の身体に電流が走ったのだ。思わず高い声が出てしまう。
「……栞姉ちゃん、これ、気持ちいいの?」
 はじめて上げた嬌声を、慎介が聞き逃すはずがない。
 何度も同じところを繰り返し小突きながら、そう訊いてくる。
「そっ、そんな……こと、ないよ?」
 うそだった。
 そこは栞をオルガスムスへ導いていく場所。婚約者が唯一見つけてくれた、快感の集約点。セックスであまり絶頂へ達したことのない栞が、そのすくないオルガスムスの経験を味わった場所だった。
 喘ぎ声を必死でがまんしながら、取り繕うように答える。
 だが、慎介にはわかってしまったようだ。
 それまでの単純な動きから、えぐるように深いストロークへ……相手を気持ちよくさせようと言う意思を込めた腰使いで、栞を責め始めた。
 ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ!
 必然、腰と腰は密着度を増し、肉のぶつかりあう音が高く鳴り響き始める。
 いくら声を押し殺しても、身体は正直で、蜜がどんどん溢れてくるのは止めようがない。
 もはや栞の耳にも届くほど、水音が混じっている。
(ちょっと、まずっ、まずい……!)
 このままではイかされてしまう。
 イかされてしまったら……。
 イかされてしまったら、どうなるのだろう?
 仄かな期待感……、しかし、それよりも怖さが勝った。
 この男根を身体が覚えてしまったら。味を占めてしまったら。
 もう二度と、婚約者とのセックスでは満足できない。
 きっとまた、コレを求めてしまう。
(いけない、それだけはいけない!)
「くっ」
 必死に下腹へ力を入れ、膣を締め付ける。もっと肌がくっつくように、身体中で慎介を抱きとめる。
 それはくらくらするほどの快楽を栞にもたらしたが、それ以上に効果があった。
「うあっ!」
 慎介は驚いたような声を出すと、射精しないように腰を離そうとした。
 すばやくその尻に両脚を巻きつけ、自ら腰を持ち上げで、離れようとする男根を追いかける。
「うあ、あああっ!」
 そしてあっけなく、慎介は暴発した。
 我慢しようとした分、余計気持ちよかったのか、情けない声を上げながらへこへこと腰をくねらせて、最後のコンドームを消費していった。
「はぁっ、はぁっ」
 力が抜けた慎介を抱き寄せて、軽くおでこにキスすると、そそくさと栞は男根を抜き去り、身を起こした。
 秘所の火照りは信じがたいほど熱く、ぼたぼたと滝のように愛液を垂れ流しているんじゃないだろうか、と栞に危惧させるほどだった。
「そ、それじゃ、お姉ちゃん帰るから……」
 ゴムに包まれた慎介のイチモツは、まだ隆々と反り返っている。
 ごくりと喉が鳴るのを感じながらも、栞は背を向けた。
「あと始末しないと……。ティッシュ、どこにあるかな。慎ちゃん」
「……そこ、ベッドの棚のところ」
「ありがと。慎ちゃんもお片づけしよう。ね?」
「……うん」
 背後で慎介はコンドームをはずしにかかったようだ。
 これで終われる。
 おおきな安堵と、一抹の残念な気持ち、そして、身を焦がす火照りを覚えつつ、栞は四つん這いになってティッシュへ手を伸ばす。
 油断してしまっていた。
 そのかっこうは、慎介の目前に、自らの秘所を見せ付けるものだったのだ。
 ぬらぬらと濡れ光った、ちっとも満足していない女の部分を……。
「栞姉ちゃん!」
「きゃっ!?」
 飛びついてきた慎介に、後ろから押し倒される。
「姉ちゃん、姉ちゃん!」
「だ、だめよ。やめて、おこるよ!」
「姉ちゃん、いかないで、姉ちゃん!」
 逃れようと栞は身じろぎする。今度は紛れもなく、本気で拒絶の力を込めた。
 しかし、背中にのしかかって肩を押さえる慎介を、跳ね除けることができない。
(え……?)
 その力強さに呆然としてしまう。
 慎介は小柄で、栞よりも身長が低い。その力だって、たいしたものじゃないと、頭から思い込んでいた。
 いま、栞を押さえつける慎介は、その想像を軽く打ち砕いた。
 まさしく……男の力だった。
 ドキン――!
 荒々しい筋力を認識した瞬間、栞の心臓を、まったく異種の感情が昂ぶらせた。
 相手は子供ではない……弟でもない……。
 自分を求めて雄の本能を滾らせている、一人前の男なのだと。
 それは、慎介をひとりの男として理解してしまったことから来る、胸の高鳴りだった。
「あ……」
 脳髄の奥から発せられた光が、チカチカと頭の中を染めていく。
 肩にかかる手の圧力。
 うなじに吹きかけられる荒い吐息。
(だめ……だめ……!)
 子供だ。弟だ。そういう垣根が、膜をはがすように取り払われていく。
 抗おうとする身体が押さえつけられるたび、徐々に、すこしずつ、気持ちの奥底が見えてくる。
 その膜の向こうにある、栞の真の想い――。
(それはだめ……!)
 栞はギュッと目をつぶる。自らの心を垣間見ないために。
 それはけっして気づいてはいけないものだった。
 もうすぐ結婚するのだから。
 一生を共にする人と添い遂げるのだから!
「栞姉ちゃん!」
 ――ずぶり。
 まことにあっけなく、栞の努力は破壊された。
 尻肉を掻き分けるようにして到達した男根が、膣口を押し開いたのだ。中途半端でくすぶっていたそこは、歓迎するようにぬめりながら慎介を迎え入れていく。
「あ、あ、あ、あ」
 押さえつけられながらも、かろうじて自由になる喉を反らして、栞は自分でもわからない声を漏らした。
 いままでの自分を喪っていく絶望感。
 そしてあたらしい自分に塗り替えられていく期待感。
 心が、認識が、作り変えられていく。
 世界が変わる。
 慎介を愛していると言う世界に……。
「栞姉ちゃん!」
 叫んだ慎介が、膣口から一気に腰を突き入れた。
(――ッ!!)
 その瞬間、栞は絶頂した。
 恥丘の裏側付近に、文字通り亀頭が突き刺さっていた。
 そこはGスポットと呼ばれる性感帯――うつ伏せと言う体位で初めて刺激された、栞の知らない場所だった。
「はああぁぁぁぁん!」
 遅れて嬌声が喉からほとばしった。
 頭の中が真っ白になった。
 慎介がその様子を察知して、何度も何度もGスポットめがけて腰を振り下ろしてくる。
「あんっ! あんっ! あんっ!」
 もはや迷いも恥じらいもない、素直な喘ぎ声が飛び出て行った。
 抜き差しのごとに古い自分がカリのえらに掻き出されて、亀頭の先に乗ったあたらしい自分を詰め込まれていく。そんな錯覚すら覚えた。
「栞姉ちゃん、いいの? これいいのっ!?」
「いい、いいっ! すごいっ」
「もっとしてあげる! 好き、姉ちゃん好きだっ」
「わたしも好きぃ! ああーーーーっ!」
 また絶頂の波が襲いくる。
 こんなのは知らなかった。
 こんな快楽も、セックスのすばらしさも、人を愛する喜びも。
(もう戻れない……!)
 明滅を繰り返す法悦境で、栞ははっきりと思った。
 いままでを喪うことに哀しまなくたっていい。
 これからの不安におびえなくたっていい。
 自分の人生に、慎介が深く入り込んでくる。なんてうれしいことだろう。
「慎ちゃん、奥、奥もちょうだい! 奥ほしいのっ」
 なにもかも受け入れてしまえば、おねだりが自然に口を突いた。
 若さに任せた勢いで男根が差し込まれ、ごりっと子宮口が押し返される。
 浅く浅く、深く、浅く浅く。
 緩急をつけたコントロールで、慎介は責めはじめる。
 そのどちらもで、栞は性感帯を直撃され、数十秒ごとに軽いアクメを迎えた。数回の軽いアクメは、より深いアクメを呼び込んで、そのたびに喉は嬌声をしぼりだした。
「はっ、はっ、僕、もう、出そう」
「あ、えっ? なに」
「出そう、イっちゃう」
「あ――」
 その瞬間、どうしてかたくなに生を拒んだのか思い出した。
 排卵日。
 たぶん、一番危ない日なのだ。
 それを説明しようと言葉を捜すが、快楽に滅多打ちにされた思考は喘ぎ声以外の表現をなかなか見つけてくれない。
 ぐずぐずしているうちに、慎介の息はますます荒く、切羽詰っていく。
「出、出るっ! イくよ、栞姉ちゃん!」
「だ、だめ、膣内は――っ!」
「あ、ああぁーっ!」
 びゅくびゅくびゅく!
「なかっ、ああぁぁぁ! はああぁぁ!」
 はっきりと熱いものがお腹の中に打ち出された。
 その熱が栞をまた絶頂へ導き、膣内を痙攣させ、より精液を搾り出してしまう。
 奥へ奥へ、もっと奥へ――。
 雄の本能がそうさせるのか、慎介は尿道口を子宮口にディープキスさせ、子宮へと精子を放出してくる。
(でき……できちゃう……!)
 いや、間違いない。
 妊娠してしまった。
 これだけ激しく、一途に、思いの丈をぶつけられたのだ。
 それにきっと、慎介の精子も、本人に似てすこし強引で、想像以上に力強いに違いない。
 そんな精子に、自分の卵子が抗えるとも思えなかった。
 どく……どく……どくん……。
 最後の一滴までを子宮へ飲ませてから、満足したように男根は膣内から出て行った。
 さすがにふたりともぐったりとして、折り重なるように息を整えるしかできない。
 このけだるい感覚は、でも幸福感に満ちていた。
 膣内に出されて、かなりの確率で婚約者以外の、しかも近親の子供を妊娠してしまったと言うのに、栞の心はおだやかに透き通っていた。
 ルルル……ルルル……ルルル……。
 ハンドバッグから、ふたたび着信音が響く。
 脱力した身体を動かし、携帯を取り出すと、やはり婚約者からのものだった。
「……はい」
 慎介が不安そうに半身を起こした。
「はい。ええ、だいじょうぶです。ご心配をかけました……。ひさしぶりの実家で、くつろぎすぎたみたいで、気がついたら眠ってしまっていて。……はい。そうですね、そうします。今日はこっちに泊まることにします。ええ……」
 子犬のようにおどおどと揺れる瞳に、そっと微笑みながら、
「それと、お願いが……。結婚してもときどき、こっちに戻ってもいいですか? いつまでも姉離れできない、困った弟がいるので……」
 栞はやさしく、頭をなでるのだった。



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