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-chapter5- アラヒトガミ
 地球に帰還した途端、想像したどれよりも意外な命令がタケミカヅチクルーに下った。
 休日(オフ)である。
 まんまと裏をかいて地球の大気圏へ突入した八十禍津日神の本体は、なぜか途中で粉々に砕け散った。
 物理的に大気摩擦をしのぐことができなかったのか。
 それとも高天原より中つ国へと世界を跨ぐ力が残されていなかったのか。
 総配備されていた連邦軍艦隊は、それこそ呆けたように強大な邪神が砕けるさまを見守った――。
 ようやく報道管制が解かれ、新聞に記事が載ったのは今朝のことである。
 ディラックはその内容を反芻して、皮肉気に唇を歪めた。
 むろん事実そのままが報道されることは無い。一般大衆に必要なのは、虚報でも安心を与えるものでなくてはならなかったし、今のところ報道に嘘はない。邪神は人々の負の感情も食らう。人心の不安を煽ることは例え真実がそうであったとしても、益にはならない。
 ディラックが嘲ったのは、一番肝心な部分が伏されて伝えられているからだ。もっとも、その肝心な部分と言う物は、報道陣はおろか連邦軍の幹部にも知らされていない。
 連邦軍の中枢の中枢たる一員――最高会議室のみ知るトップシークレットである。
 エレベーターが本部最上階で止まる。連邦本部ビルの地下から数えて88階。
 ドアが開く。
 目前には銀のプレートで――『連邦最高会議室室長執務室』とある。
 室長。
 重厚な木造の扉を叩く。
「ディラック・ルーデンス少佐、ただ今戻りました」
「どーぞ」
 投げやり気味な、軽い口調が内から響いた。最初に聞いた脱力は今でも忘れない。無遠慮に扉を開く。
「ふふ、よく生きて帰ったわね」
 外観の重厚さと比べて、いかにも質素――質素と言うより淡白な部屋だ。スチールデスクに、オフィスチェア。簡単な造りのライト。
 その前に若い女がたっている。
和服とも浴衣ともつかない衣装。どちらにせよ、着流すというよりは着崩すと言ういでたちだ。開いた胸元からは白く豊かな隆起が陰影をつけて覗いていた。
栗色の髪をアップでまとめ、零れ落ちた髪の束が細く長いうなじに妖艶さの筋を付ける。
ディラックよりも2,3年上にしか見えない。25そこそこのこの女性が、最高会議室室長――つまり、世界で一番権力を持っている人物となる。
「生きて戻れるとは、思ってませんでしたよ、室長」
「ああん、私のことはユキって呼んでって言ってるでしょう。呼びなさい」
 愛人(イロ)じゃねえんだから――と、心の中で呟き、ディラックは言い直した。ユキの機嫌は途端に上昇する。単純なのか無邪気なのかわからない。しかし、こういうタイプこそ本当に底が知れないのだということを、ディラックはすでに学習している。
「いちお、色々と聞いてるけど。本人から直接もう一度聞きましょうか」
 ユキは言って、奥の襖を開ける。一段高くなったそこより向こうは和室である。妙な造りであるとしか言いようが無い。
 ユキは靴をはいたまま、開けた襖の桟に腰掛けた。
 もう引退した老獪な先輩エージェントの言葉が思い出させる。
 あれは……わしが手ほどきを受けた、30年前から若いままだよ。
 酔った、酒の席でぽつりと漏らした言葉だった。他の同席者は冗談と思って聞き流したが、ディラックにはそう思えなかった。冗談どころか、笑い顔すら見せない男だったからだ。
 真偽は別としても、ユキにはそんな言葉すら真実味を帯びるほど、得体の知れない部分がある。
 ユキは歳を取らない。いつからここに居るのか誰も知らない。そもそも、存在自体を知る者は少ない。
 もはや生きた怪異である。
 その怪異が連邦の頂上に立ち、裏から巧みに指導している。しかしそれは頼もしいのと同じくらい、不気味なことでもあった。
 言葉に出さずも、関わるものはみんなそう思っているはずだ。
 証拠に、暗黙のうちで厳禁とされているユキの身辺調査は、ディラックの先輩の先輩、そのまた先輩、さらに先輩――の代から行われているのである。
 と言ってもそれはディラックが世話になった老エージェントの言っていたことであり、そのエージェントもやはり先輩から聞き及んだことだ。そもそも嘘と言う可能性もある。
 その脈々とした調査を信頼するならば――わかっていることは3つ。
 ユキが不老不死であること。
 天照大御神の現人神であるらしいこと。
 過去に一度、結婚したらしいこと。
 これだけだった。
 連邦で最高の技術を持つ、諜報のプロが代々調べてこれだけである。
 そんなことをぼんやり考えながら、ディラックは航海の詳細を報告した。
「……ふぅん」
 また脱力する。
 気の抜けた相槌を最後に返して、ユキはポイと履物を脱ぎ、しなやかな動作で畳の上に上がりこんだ。押入れの襖を開いて、なにやら取り出している。
「……あなた、1つ隠してるでしょ。黙ってる」
 ディラックが返事をせずにいると、上がりなさい、とユキが言った。
 靴を脱いで従う。そもそも畳は慣れない。
 ユキは布団を取り出していた。ぼふ、と放り投げるようにして畳の上に広げる。引っ掛けた肩口がずり落ちて、細い肩が覗いた。
「黙っているとは」
 質問が続いてこないので、ディラックは促した。もっとも、すでに観念している。
「アレに会ったんでしょ。八十禍津日神に。何か、言われたでしょう」
「……おれは、スサノオの現人神であると」
「そうよ。そのとおり」
 軽い肯定に、怒りが突如爆発した。
「なんで黙ってた! おれは得体の知れないものに始終悩んでいたんだぞ――」
「だって、あなたは死なないもの」
 またもや軽い口調。正面から放ったパンチをすっといなされた気分で、ディラックはユキの後ろ髪を――ずれて露出した肩口を見つめた。
 ちょい、と小粋な仕草で衣服の乱れを直し、ユキは振り向く。するっと近づいてきた。
「バーカ」
「は?」
「いい大人が、うじうじ悩んでるんじゃないわよ。あなたにはその力を恐れて震えてるだけっていう選択肢もあるのよ。なんであえて、戦う道を選んだの。選んだなら悩んでないで戦いなさい馬鹿」
 早口で罵られた。
 確かに正論だ。正論なだけに腹が立つ。
「うるせえ!」
 カッとしてユキを突き放すと、よろけて布団の上へ仰向けに転がった。
 裾がめくれてきわどいところまで露出している。薄暗さに白い太ももが艶かしい。
 突如怒りが沸いたのと同じように、突然ディラックは欲情した。
 じっと見つめていると、ユキが転がったまま言った。
「……もよおした?」
「…………」
「犯す?」
 その上目遣いを見て、ようやくディラックはユキが布団を敷いた真意を知る。ここまでの流れすべて――怒ることから罵られること、欲情することまで――全部ユキの仕組むところなのだ。
「……しばらく、お相手してなかったな」
「そうよ。勃ってるの知ってるんだから」
 気が抜ける。相手をしていると調子が狂う。
 しかし、闇に浮かんだ太ももは、どうやらその付け根の奥まで開いている。ユキは下着を着けないのだ。
「まー、仕方ねえよなぁ」
 ディラックは言ってから、親父臭いセリフだと反省した。
 転がったユキの上に覆いかぶさる。
 きゃは、と子供みたいな声を、ユキはあげた。
 乱暴に着物の胸元をつかみ、引き剥がす。2つの白い果実が弾けて揺れた。こぼれおちそうなほど大きいその頂点の突起へ、ディラックはむしゃぶりつくように舌を這わせる。
「あ、ああ! そうよ、もっと、乱暴にして」
 柔肌は逆にディラックの唇を吸いつけてしまいそうなほど瑞々しい。確かに――訓練と称して初めて床を一緒にした5年前と、肌の質感になんの衰えもない。
「この、マゾ女め!」
 乳首に歯を立てると、ユキは声無き声を上げて喉を反らせた。しかし知っている。自分の前でだけ、ユキはこうなのだ。同じく『訓練』を受けたトウキは、まったく別の印象を受けていたし、なによりクラもその『訓練』の相手をさせられている。
 いくつもの顔を持っているのは間違いない。いまだにそのどれも、ディラックは見たことが無い。
裾を割って股間に手を突っ込むと、手を触れるまでもなくしとどに濡れそぼっていた。
嗜虐心が掻き立てられる。
きっと――そうしむけているのだとわかっていても、ことさらにディラックは駆り立てられた。
理由はあるのだ。
指を秘所に突きいれ、かき回しながら、ユキの顔をじっと見つめる。
ユキは身を捩じらせて喘ぎながら、口を開いた。
「――抱いたのね、あの子を」
「あの子?」
「サク――う、ふっ……サクヤ艦長よ。目を見たらわかる」
「…………」
「似てた?」
 思わず責めの手を止める。ユキは薄い笑みを浮かべていた。
 なぜかディラックはぞっとした。
「――似ていた。姉妹のように」
 思ったより硬い声が出た。
 そう――ユキとサクヤは。
 栗色の髪から、顔かたち、スタイル……秘所の中まで。
 姉妹のようにそっくりなのだった。
「苛めた?」
 暫時、ぼうっとしていたらしい。ユキの笑みは、いたずらっぽいものに変わっていた。
「ああ。あいつは苛めがいのある女だ」
「あんまり執着しちゃダメよ。あなたに御しきれる女じゃないから」
「……あんたと同じで、調子をはずされる。もう相手はしたくねえよ」
「あなたでも懲りることあるんだ」
「うるせえ」
「きゃ!」
 秘書の中の指を乱暴に動かすと、ユキが痛みに身をよじった。だが逆に蜜は溢れ出してくる。
「も、もっとやさしく――」
「うるせえってんだろ」
 ユキの両手をディラックは片手でつかみ、布団の上に押さえつける。もう一方の手はさらに激しく動きを強める。
「う、うう、ん」
 苦痛にしかめた眉が、妙に艶かしく映る。
 溢れた蜜で、秘所からはくちゃくちゃという厭らしい響きが漏れはじめていた。
 乱暴にすればするほど、ユキは喜ぶのだ。それは、ディラックの前だけでかもしれない。だが、ユキと肌を重ねている瞬間、得体の知れないこの女の底を見た気がして、安堵を覚えるのだ。
 だから今また、こうやって――。
「いれるぞ」
 ディラックはチャックから取り出したイチモツをユキの濡れた割れ目へあてがう。きて、きて、とユキが子供のようにねだる。一気に奥まで貫くと、身体を硬直させて仰け反った。
「あああ、あー!」
「くっ」
 締め付ける膣の圧力と、ぬめりの感触に、ディラックも思わず呻く。
 暗い室内の中、白い胸がぼんやりと浮かび上がっている。乱れた着物がエロティックだ。ディラックは手を伸ばして、ぐっと力を込めて乳房をにぎる。
「もっと、もっと!」
「もっとよくしてやろうか!」
 奥まで差し込んだイチモツを大きくグラインドさせ、打ち付けた。着物の裾から伸びる片足を持ち上げ、それを抱きしめるようにして股を広げさせる。不自然な格好で犯されたユキは、体を横にねじったまま喘いだ。イチモツは膣の上部をこするように刺激する。
 ユキのつかんだシーツが、渦巻きのようなしわを作っている。ディラックはその渦の中へ押し付けるように、ユキの頭をつかんで押さえつけ、腰の動きを強めた。
 ぱんぱん、と肌と肌が放つ湿った単純な音と、シーツの中でくぐもったあえぎ声が不自然な和室にこだまする。
 ディラックは絶頂が近いのを知った。足を離すと、そのままユキの体を回転させて、うつぶせにさせ、自分はその上にのしかかる。潰れた乳房が布団の脇からはみだしていた。細いうなじには玉の汗が浮かんで、散り散りに降りかかる栗色の髪が、相変わらずエロティックさを加えている。
「ユキ……ユキ!」
「イキそう? ねぇ、イって、出して!」
 うなじに顔を押し付け、夢中で腰を振るディラックに、ユキは首を上げて、腕を後ろに回しその頭をなでる。
「ああ……イクぞ、ユキっ!」
「出して、出していっぱい! あっ! はぁん、あぁーっ!」
 ディラックは体を震わせて射精した。
 迸る精液はユキの体内へ確実に挿入されていく。
 ユキは首を反らせたまま、長く尾を引く嬌声をあげ、ディラックの射精が終わったと同時に、糸が切れたように顔を落とした。
 ディラックがイチモツを引き抜くと、くぽっと小さな音を立てて、秘所からは大量の白濁した液が流れてた。ひくひくと痙攣する膣の動きにあわせて流れ続けるそれをしばし見つめ、ディラックも倦怠感に任せて布団の上にねっころがる。
 二人の息を整える音が静かになったころ、ユキがぼそりと言った。
「ディラック、あなた怒ったわね」
「……あ?」
「得体が知れないもの、あなたの近くにもう一つあるんじゃないかしら」
「……それは、あんたのことを指してるのか」
「得体の知れないものは不気味? 怖い? 正体を知らないと、不愉快?」
「そんなんじゃねえよ。知らない方がいいこともあることくらい、わかっている。怒鳴って悪かったよ。あんたが教えなかったのは、おれにとって『知らない方がいいこと』だからなんだろ」
「ふふ、よかった。でも私は意地悪だから、『知らない方がいいこと』をあなたに教えてあげる」
「…………」
「あなたはサクヤ艦長を愛するかもしれない。そう感じたから身を引いたの」
「――馬鹿言うなよ」
「そう、正確じゃないわ。なぜならあなたが愛しているのは――この私だから。同じ姿のサクヤ艦長では、代償にならないのよ」
 ディラックは首をねじって、隣に居る得体の知れない女に目を向けた。
 ユキは半身を起こしてディラックを見下ろしていた。うなじから落ちた髪が、蛇のように白い肌を這っている。
 もう一度、ぞっとしたものがディラックの背筋を駆けていった。
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