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其の三 空を這う魚
脇息(きょうそく)に肘をついて窓から見える庭を眺めていると、はらりと大楠の葉が落ちた。
 風が出てきているようだ。今夜は荒れるかもしれない。
 葉は一枚二枚と枝を離れ、宙を舞って屋根を越えていく。
 書机に目を落とすと、立てかけた手鏡が自分の顔を映していた。
 押さえた色合いの小紋を羽織り、くちびるにはうすく紅をひいている。
 一時伸ばした髪は、やはり自分の好みではなかったので、再び切ってしまっていた。あご先に横髪が被るのはそこだけ癖毛だからだ。逆にそれが自分らしくていいと小枝は思っている。
 あごから鼻にかけては姉とよく似ていると思う。
 口が小さく、歯も小粒。すっと筆で引いたような鼻筋が、それを引き締める。
 目元は姉と違って吊り気味だ。眉も少し細く削ってある。多少表情のきつさは増すかもしれないが、それもまた自分らしさだ。歴々の親類一同を相手にする時も、凛とした威厳が出てよい。
 ふっと息を吐く。
 手元には陳情書の束。土地を治める地主から持ち込まれてきたものだ。地主たちをまとめる名主の家系の当主が、いまの小枝なのである。
齢十八。異例の若さを支えるのは、小枝の持つ天性の采配力と、寝る間も惜しむ努力であった――が。
 これらに目通しして印をつかねばならないのものの、さっきから一向にはかどらない。
 このところずっとそうだ。
 夜だけではなく、昼の仕事にも差し障りが出始めている。
 体の芯が熱く火照っているような感覚。
 ざわざわと本能を刺激するうずき。
「――またか……」
 もう一度息を吐くと、小枝は窓の障子を閉じた。
 宵の口だと言うのに、お盛んなことだ。
「あうっ」
 突如、熱いものを下半身に突きこまれたような感覚が襲う。
「はぁ……あ」
 じわりと秘所が蜜をにじませはじめるのが分かる。
 小枝は着物の合わせ目を開くと、着崩れも気にせず胸をまろびださせた。
「あたしだって……あんっ」
 乳房を撫で回し、桜の突起をつまむ。
 ずん、ずん、と肉ひだをかき回す、力強いものを感じる。
 その感覚をこらえきれない小枝の秘所は、降参したように蜜の涙を流し始めた。
 腰巻きから垂れていきそうだった。着物を汚すのはまずい。
 小枝は帯をほどき、すそを開く。
 少し思いついて、わざといやらしく股を開いてみた。
 あわい草むらとうすく充血した陰唇は、わかさとみずみずしさを存分に湛えて、まさに女の一番旨い時期を示している。
 手鏡が小枝の表情を映している。
 崩れた着物から覗く乳房。凛とした瞳はいまや熱く蕩け、大股を開いたはずかしい格好で痴態を晒している。
「あ……あっ」
 なにも刺激していないのに、小枝の秘所はぱくぱくと閉じたり開いたりを繰り返し、どろりと愛液を流した。
 感覚だけではなく、体も男を受け入れている様子を示しているのだ。
 新しい発見だった。
 それが興奮を掻きたて、指を突き入れて自らの中をまさぐりたい欲望をこらえた小枝は、両手で太ももと陰毛をさすって感覚を誤魔化す。
「く、くぅっん……うん……」
 声が我慢しきれない。小枝は帯を歯で噛みしめ、それを耐える。
 ずぶり、と深いつらぬきがきた。
 喉を反らし、帯をふりまわして、なんとか声を出さずに収める。
 小枝は手鏡を取ると、秘所の前にあてがった。
 ひくひくと誘うように蠢くそれは、女の悦びを垂れ流しつつ、突き上げる感覚があるたびにめくれ上がるような収縮を繰り返している。
「いやらしいあそこだ……」
 口の中でつぶやく。
 指を使って広げてみる。
 うす紅のひだが、ぬらぬらと光りながら奥まで続いている。
 どんな男だって、このなかに一物を突きこめば、この上ない悦びとともに果てるだろう。小枝には自信がある。
 だが欲求不満が限界に達しつつある今でも、例えば男娼を屋敷に呼んだりしようとは微塵も思わない。
「典太……」
 小枝が想うのは、ひとりの男だけだ。
 けっしてたくましくはないが、やさしい腕のぬくもり、髪を撫でる指先、そしてどうやら、人の物より一寸立派であるらしき男根。
「あふっ!」
 想うと我慢できず、小枝は指を濡れた熱い肉の中へ突き込んだ。
 細い指が二本、ずっぷりと埋没する。
 まだだ。
 三本目を入れても、奥へは届かない。
 典太のあの、太いものが子宮の入り口をこつこつと叩く、途方もない悦びは味わえない。
「うう……う……」
 体はいよいよ熱い。下半身を突き上げる感覚も激しさを増す。
 しかし指だけでは、小枝は満足出来なかった。
 このままでは生殺しのまま体の火照りを明日へ持ち越してしまう。
「ええい、もう!」
 一声あげて指を抜く。
 やけになって立ち上がると、小枝は着物を脱ぎ捨て、腰巻きも脱ぐと、うすい浴衣を衣掛けからはずして羽織った。
 この時間なら、厨(くりや)にはだれもおるまい。
 小枝は足音を忍ばせて屋敷の闇を歩き、しんと静まり返った厨にたどり着いた。
 明かりを消す前、だれぞがもいで冷やしたままの胡瓜が、桶の中に浮かんでいたのを知っている。下世話な女中たちが、男根にそっくりな一本を差して、げらげら笑っていたので覚えていたのだ。
「はぁ……はぁ……」
 ここまで移動しただけなのに、ひどく息を切らしてしまった。
 垂れた蜜がひざにまで流れている。人に会わないでよかった。
 桶の中には何本も胡瓜があったが、目的のものはすぐにわかった。
 水の中から取り出し、持ち上げて差し込む月明かりに照らしてみる。
 雁首に似たくびれまでついている、なんともひわいな形状だ。大きさも太さも申し分ない。
「うん……いい形だ」
 思わずつぶやき、小枝は流し台に腰を下ろすと、浴衣のすそをまくって、胡瓜の雁首を秘所へすりつけた。
 ちゅく、と濡れた音が小さくあがる。
 小枝はもう片手で陰唇を広げ、ゆっくりと胡瓜を差し込んでいく。
「――っ!」
 ぞくぞくとした快感が、背筋を駆け登った。
 あまりに予想外の感触に、声を上げるのも忘れてしまったが、そうでなければ大声を上げていただろう。
 ひやりと冷たいものが、熱くたぎる小枝の感覚をより鋭敏にしている。
 それだけではなく、胡瓜のいぼが内壁をぶつぶつと刺激して、味わったことのないような快感を与えてきた。
 声を我慢出来そうにない小枝は慌てて浴衣の肩口を口元へ持っていき、咥え込む。
 軽くしか止めていなかった帯が緩み、小枝の体を半裸に露出させた。
「んっ――ふっ――っ!」
 夢中で小枝は胡瓜を押し込む。
 まずは半分くらいまで、愛液の潤滑が充分に絡みついたところで引き抜き、また差し込む。次はもう少し奥。ぬめった胡瓜が月明かりでてらてらと光る。
 何度かそれを繰り返し、小枝はいよいよ最奥めがけて、思い切り突き込んだ。
「あふっ!」
 思わず浴衣を口から離して、小さく声を上げてしまう。反射的に痙攣した足が胡瓜の桶を蹴った。
 大きな声をあげてしまったように思えたが、そうでもないらしい。どちらにせよここは母屋から少しはなれているので、物音程度ではだれも様子を見に来ないだろう。
 それより胡瓜が奥の壁を叩いただけで、軽く果ててしまった。
「これ、いいな……」
 もっと味わいたい。とびきりいやらしい格好で、自分を慰めたい気分だった。
 小枝は流しの横の、いつもはまな板を並べるところへよじ登り、体を横たえた。
 まな板の上の鯉を想像する。
 男たちがもし、こんな自分の姿を見たらどうするだろうか。
 もはや体を隠していない浴衣からこぼれた乳房、誘うように開らくすらりと伸びた足、濡れそぼって蕩けた秘所。
 がっつくようにむしゃぶりつくに違いない。
 何人もの男に犯されるのを思い浮かべて、小枝は握った胡瓜を出し入れしはじめた。
 秘所には入れ替わり立ち替わり、男が欲望を突き刺していく。
 口にも男根が差し込まれ、胸は乱暴にもみしだかれ、小枝は汚れた精液を降り注がれながら、何度も執拗に秘所を責められる。
「くぅ……う、――あっ!」
 両手で胡瓜を握り、脳天までつらぬくように力いっぱい動かした。
 奥の奥へ、地響きのように響いてくる。
 太い一物が小枝の子宮をこじ開けるように、叩きつけられる。
「はあ、ああぅ!」
 いつの間にか想像の中で、小枝を抱いているのは典太になっていた。
 その腰が動くたびに、小枝の秘所は蜜の滴りを増やし、とめどない快楽のるつぼへ誘い込んでいく。
 頭の奥が真っ白になるような、酩酊感が襲ってきた。
「てん――典太っ!」
 その体を抱いているように足を宙に開くと、小枝は全身を痙攣させた。
 うすく目を開いていると、天井を蹴るようにびくびくと足先が震えているのが見えた。
 膣は胡瓜を食いきらんばかりに引き締まり、自分の手で動かすのも困難だ。
 何度も背筋を跳ねるように反らして、小枝は果てた。
「ふ――う、うあ……」
 絶頂の快楽がじょじょに引いていき、小枝は足を下ろす。
 冷たい台の上に寝転がったまま、呆と暗闇の厨房を眺める。
「……なにやってるんだ……」
 仮にも当主とあろう者が、股間に胡瓜をはさんだままこの格好では、示しがつくとかつかないの話ではない。火照りが覚めるにつれて、なんだか情けなくなる。
「くふっ」
 深々と差し込まれた胡瓜を引っこ抜き、地面に降りて愛液にまみれたそれを汲み置きの水で洗った。
「これ……どうしようか」
 まさか自慰に使ったものを喰わせるわけにはいくまい。かと言って捨てるにもあやしすぎる。
 明日の朝、輪切りにして典太の皿に出してやろう。
 思いついてにやりとする。久々に手料理をつくると言えば、屋敷の者も気づくまい。
 小枝が自慰に耽っている間に、体を弄ぶあの感覚は消えていた。
 あちらはさっさと終わってしまったみたいだ。
 このところ小枝を悩ませているのは、性感を刺激してくるこの感覚だった。
 どうやらまだ、小枝は紗由里とどこかでつながっているらしい。
 それも、性的な快楽だけが、小枝に流れ込んでくるのだ。
 つまり紗由里が情事をするたびに、こうやって小枝は悶々とせねばならぬのである。
「勝手なことだ」
 紗由里はいま、典太と離れで暮らしている。
 正式な婚儀はまだまだ先になるだろうが、紗由里を助け出した傑物と屋敷の者は典太を認めているし、身分云々にうるさい親戚の連中は、紗由里の半陰陽の状態を教えると黙り込んだ。典太くらいしか嫁の貰い手もないのである。
 けっきょくあのふたりは、そのおかげでうまくいっている。
 それはいいのだが、小枝の気持ちはすっきりしない。
 小枝もまた典太を愛している。嫉妬めいた感情はないが、たださびしい。体だけの関係でもいいから、また典太に抱いて欲しいと思う。
「……ん?」
 胸に舌先が這ったような感覚。
 ふたたび刺激がはじまった。乳房の先端を吸われながら舐めまわされている。
 直した浴衣を開いて胸元を見ると、みるみる乳首が固くしこり立っていくのがわかった。
「もう一回か。ああもう、こっちの身にもなってくれ!」
 ようやく火照りの収まった秘所へも刺激が始まった。
 ゆるやかに股間を撫で回す感覚に立っておれず、桶のそばへしゃがみこんでしまう。
 むらむらと沸きあがる性欲と同時に、理不尽さに対する怒りがこみ上げてきた。
 小枝は胡瓜を握り締めると、立ち上がった。
「今日と言う今日はゆるさん!」
 息巻くと厨を飛び出し、離れへ向かった。


***


「あんっ。……もう、まだし足りないの?」
「紗由里様だって」
 典太は紗由里の胸に顔を押し付けると、そのまま布団へもつれこんだ。
 今日は一度出しただけでは収まらなかったのだ。
 元気ね、と紗由里が半立ちのままの一物をもてあそぶので、火がついてしまった。
「ああ……胸ばかり、そんなにいじめないで」
 典太の頭をかき抱き、熱いささやきを放つ。
 典太はその裸身の下部へ手を這わしつつ、訊ねる。
「紗由里様は、胸が感じるんでしょう?」
「うん……でも胸ばかりだと、こっちが切なくなって……」
「こっちって、どこです?」
 秘所の上を、つっと撫でる。
 ぞくりとしたように、紗由里は身をすくめた。
「いや、はずかしい……」
「言って欲しいな」
 かり、と乳首に歯を立てる。はっと吐息の塊を吐き、紗由里の肌が軽く粟立った。
 紗由里はいじめられると燃える気がある。
 所を押さえてはずかしめたり、強い刺激を与えたりすると、こうやって肌を粟立てて享楽を示すのだ。
 典太はその所をよくわきまえている。
「ああ……私の陰(ほと)、陰の割れ目が切ないの……」
 ついに淫語が口を割った。
「よく言えましたね。ご褒美です」
 はずかしさに赤くなった紗由里の、その陰を愛撫する。
 期待に昂ぶった女の亀裂は、撫で回す指につぎつぎと蜜をからめていく。半陰陽の男根も、固く屹立していた。
 熱いその蜜をすくいとってさらにすりつけながら、典太は陰唇をもむようにてのひら全体を動かした。
「ぁはあ……うぅ……」
 紗由里は声を抑えようとしているが、どうしても閉じたくちびるの端から漏れてきてしまう様子だ。
 典太はまたいじわるくささやく。
「がまんしないで、大きな声をだしちゃどうです?」
「やだ……母屋に聞こえちゃう」
「聞こえてもいいでしょう。僕たちはもう認められた仲なんですから」
「そうだけど……はずかしい……」
「みんなに聞かれたら、困りますね?」
「うん……みんな……ふ、うっ!」
 自分の淫猥な声に聞き耳を立てられたところを想像したのか、また紗由里は肌を粟立てて反応した。
 典太の指は、ちゅぴちゅぴと水遊びの音を立て始める。
 紗由里は無意識に、自分の胸を撫で回していた。
 両手でお椀を作っても隠し切れない豊かな乳房は、ぐにゃりと自在に形を変えてやわらかさを視覚的にも伝えてくる。
 汗の流れる白い首筋に顔を寄せ、典太はささやいた。
「紗由里様、もう入れたいです……」
「い、いいよ。入れて……典太」
 体勢を変えて、紗由里の両足首をつかみ、大きく広げる。
 はずかしさに目を逸らした紗由里は、しかし期待に頬を上気させていた。ひくひくと男根も震えている。
 典太は限界の固さに復帰した怒張を紗由里の泉へ添える。
 入れずに上下にすりつけると、紗由里は軽い喘ぎを放った。
「あっ、くふっ、……はやく……ちょうだい」
 蝋燭の炎に照らされた横顔は、これを越えるものはないと思うほど、艶っぽい――。
 腰を定め、亀頭の先を沈み込ませようとしたとき、
「たのもう!」
 がらっと離れの扉が開いた。
「きゃあっ!?」
 反射的に体を離した紗由里に蹴り飛ばされる。
 典太は箪笥に背をぶつけた。
 背と後頭部を打った典太が、涙目で戸口を見ると、小枝が仁王立ちしていた。
 あの白いあじさいの浴衣を着ている。
 だが着衣は乱れ、胸元は大きく開いて中身をまろびださせそうだ。帯の止め方も適当である。
 そしてなぜか、太い胡瓜をにぎりしめていた。
「さ――小枝? なに、一体」
 混乱した様子で紗由里が訊く。布団の端を持ち上げて胸元を隠しているが、逆にそれが色っぽい。
「姉様、気づいているか知らないが――」
 扁平な声で小枝は話し始めた。目が座っている。
 小枝が語ったのは、紗由里の感覚が流れ込んでくると言う話だった。
 毎夜毎夜、気が乱れて仕事が出来ぬと。
 仕事を抜きにしても気持ちだけかきたてられ、翌日の昼も呆とすることが多いと。
「けものみたいにさかりつきおって。あたしの身にもなれ!」
 はやくちにまくし立てて、小枝は胡瓜を振り上げるとそれで紗由里を差した。
「そ、そんな……」
 真っ赤になった紗由里は泣きそうな顔で典太にまなざしを向けた。
「えーっと、小枝様」
「お前はだまっていろ」
 なんとか助け舟を出そうとした典太はぴしゃりと言いはたかれ、二の句を継げない。
 小枝は畳へ上がりこむと、いきなり紗由里の肩をつかんで、布団の上へ転がした。
「きゃっ」
「と言うわけで、姉様、相手をしてくれ」
「ええっ!?」
「典太に抱かれたのではあたしも未練が残る。さいわい姉様には男のものもついていることだ――」
「なにそれ、やめて小枝っ」
 おびえた顔の紗由里に、くっくっく、と邪悪な笑みを向ける小枝。
 完全に暴走している。
 手に持った胡瓜を、ぺろりと舐めた。
「だいじょうぶだ。いいものも持ってきた」
 男根そっくりなそれを、紗由里の秘所へあてがうと、抵抗する間もなくずぶっと差し入れる。
 典太のものを受け入れるために準備万端になっていたそこは、あっと言う間にその胡瓜を飲み込んでいった。
「あはうっ!」
「いー声だぞ姉様。もっと鳴いてくれ」
「や、だめっ! ああん」
「気持ちいいだろう。なんせ実証済みだ。あたしも、いいぞ、姉様」
 口では拒絶する紗由里も、下半身は開ききったままで閉じようとしていない。小枝はもう片手を浴衣のすそへ入れ、自分を慰めはじめた。
 濡れた音が二箇所から立ち昇った。
「あん、やあ……あふっ。ごめんなさい小枝、ゆるして……」
「だめだ。それより姉様、その旨そうなものを喰わせろ」
 紗由里の股間へ顔を寄せた小枝が、いきり立った男根を口に含んだ。
「はふっ!」
「んん!」
 ふたり同時に、ひときわ嬌声をあげる。
 小枝の顔が紗由里の股間の上で上下に動き、緑の肉棒と化した胡瓜が秘所の蜜肉を抉り取ろうとするごとく暴れ回った。
「ううう――くぅっ、さ、小枝やめて、お願い」
「ひやだ」
「だめなの、私、両方されると……」
「ひいんだりょ?」
「ああ、だめ。はあっ、あっ、だめよやめて!」
「なにがだめだ」
 突然顔を上げた小枝は、胡瓜からも手を離して身を起こす。
 急激に刺激の去った紗由里は、いっしゅん呆然とした。
「あ……」
「わかってないな、姉様。あたしを愉しませないかぎり、ゆるしてやらないんだぞ。それに、隠したってわかってるんだ――」
 小枝は大きく股を広げると、横になった紗由里の前に自分の秘所を見せつけて、そこに指を入れた。
「うっ――」
 顔を歪めたのは紗由里の方だ。小枝は秘所の中をいじる手を止めず、言う。
「あたしの火照りが伝わるだろ? あたしも姉様の快楽が直接わかるんだ。どこをどうしたら悦ぶか、いまからたっぷりと味あわせてやろうと思ったのに……」
「うう……」
 紗由里が小枝の指に合わせて、眉を寄せていく。小枝は浴衣を完全にはだけて、胸をもみ股間をいじり回した。
「はっ、ああ!」
 その感覚が伝わる紗由里は、我慢できずに自分の胸に手を当てる。
「さあ、続きをしてほしかったら、自分でそのまたぐらに刺さったものを動かして。ほら!」
「いや……もう……」
 紗由里は半分泣きそうだ。小枝はその胸を足で踏みつけ、ぐりぐりともむようにこねくりまわす。ぞくっとした震えが走る感覚を、小枝は見逃さない。
「どうした姉様。鳥肌が立ってるぞ」
「ああ……やめて、言わないで……」
「感じるのか? いや、答えなくても全部わかってるんだ。姉様のはずかしいところ全部」
「いやっ! いやあっ!」
 顔を覆って紗由里は首を振り、すすり泣き始めてしまった。
 小枝は困った顔をする。
「あや……いじめすぎたか。な、姉様。あたしに協力すると思ってさ」
「…………」
「でないとあたしは、典太を取ってしまうぞ。いやだろ?」
「いや、取っちゃだめ……」
「じゃあ自分でその胡瓜を動かすんだ。はやくしないと、そこで間抜けな顔をしてるやつを襲ってしまうかもしれん」
「だめ……」
「ならわかってるだろ?」
「……うん」
 間抜け呼ばわりされた典太は、ようやく我に返った。
 姉妹の痴態があまりに強烈過ぎて、呆然としていたのだ。
 典太は箪笥から背を離すと、布団のそばまで移動した。
「手伝うなよ」
 最初から釘を刺される。
 見通された典太は、仕方なく紗由里の足元へ座った。
「ほら、姉様。典太に見せてやれ。自分の一番いやらしい姿を」
「あ……」
 ちらりと視線を向けた紗由里は、とろんとした目を逸らし、ゆっくりと胡瓜へ手を伸ばした。
「典太……見て……」
 たのまれてもいないのにつぶやくと、つかんだ胡瓜を動かしはじめる。
 おずおずと引き抜いて、ゆっくりとまた埋没させていく。
「あ……は……」
 くちびるはひめやかな喘ぎを漏らした。
 動かし方が慣れていくにつれて、その速度は徐々に速くなっていく。
 ちゅぷちゅぷとまた水音が響きはじめた。
「……紗由里様」
「見てるの? 見てるの、典太」
「ええ……紗由里様のあそこが、緑のをくわえ込んで、濃い汁を流してるのを」
「はぁん……言わないで、お願い」
「ぬらぬらに光ってます。胡瓜が引かれるとまるで吸い付いてるみたいにひだが伸びて――差し込まれるとそれがたたまれるように飲み込まれていく」
「やめて、私、こんなことして、いやらしい女みたい――」
「紗由里様はいやらしいです」
「ああっ!!」
 典太がそう言った瞬間、紗由里は大声を上げて喉を反らした。胡瓜を奥まで深々と突き込んで押さえたまま、震えている。
 びくん、と足先が痙攣した。
 典太の言葉で絶頂を感じたのだ。
「やうっ!?」
 姉の卑猥な様を見ていた小枝も、つられて声を上げると、体をすくませた。
 紗由里の絶頂が乗り移ったのだろう。
 そのまま紗由里の胸の上にばったりと顔を乗せる。
「はぁ……はぁ……ね、姉様、辱められると感じるんだな」
「そ、そんなこと……」
「はずかしいだろ? あたしにばれちゃったぞ、姉様の性癖」
「う、うぅ……」
「でもよく出来たな。ご褒美にたっぷりしてあげるから。――典太、お前もいいぞ」
「え? あ」
 混ざれと言う趣旨を理解して、典太は紗由里の股間から胡瓜を引き抜いた。
 真っ白い粘液の塊がこびりついている。
 まるで男の精液のようだ。
「どういうかっこうがいいかな……。うん、姉様、四つん這いになれ」
「う――うん」
 紗由里が様子を伺いながら体を起こし、布団の上で犬の体勢になる。
 小枝がその髪を撫でて言った。
「いいかっこうだ。さかりのついたけものにぴったりじゃないか」
「ひ、ひどい」
「うるさい。あたしがおかげでどれだけ迷惑をこうむったと思うんだ。典太、けものみたいにしてやれ」
 小枝が立腹しているのは本当のようだ。
 こっちはまあ、逆らえる状況にもないし、一刻もはやく紗由里の滴る蜜の中心へ一物を埋めたくてうずうずしている。
「じゃあ紗由里様……」
 すべすべの尻に手を当てると、紗由里は入れやすいように腰を持ち上げた。なんだかんだ言って、紗由里も欲しくてたまらないのだ。
 典太は猛りきった怒張の狙いをつけ、指で軽く陰唇をかき分けると、一気につらぬいた。
「うんんっ!」
「ああ!」
 紗由里どころか、小枝までも甲高い声をあげた。
 小枝は紗由里の顔の前で、股を開いてみせる。
「ね――姉様が交わってるあいだ、あたしがどんなことになってたのか、見せてやろう」
 典太が一物を抜き差しするたびに、小枝の秘所はぱくぱくともの欲しげに開いたり閉じたりして、白濁の汁を流していた。
「どんなだ、姉様。あんっ! あたしのここ、いやらしいか?」
「うん、いやらしい。濡れて光って――っあ、は、とっても」
「こんな妹の姉様なんだ――姉様も、いやらしいだろ?」
「うん、うん! 私も、淫乱なの! ああっ! 小枝っ!」
 背筋に鳥肌を浮かせる。
 紗由里は目の前に濡れる亀裂に顔を寄せると、腰に手を回して舌を這わせた。
「ひゃっ!? 姉様、そこまでしなくても――ううっ」
「私も、小枝の気持ちいいところ、全部わかるんだから!」
「ああっ! やっ! だめっ!」
 見えない男根につらぬかれているかのような秘所を舐め上げられて、小枝はあられもない声をあげると紗由里の頭を太ももではさんだ。
 今度は小枝が責められる番だった。
 典太も紗由里に協力することにする。腰の動きは休めずに、紗由里の股に手を伸ばして、宙ぶらりんでさびしそうな一物をしごきはじめた。
「あああ! いい、気持ちいい、姉様……!」
 恍惚の表情で小枝が目を閉じる。
 すぐに体に力を入れ始めると、小枝は叫んだ。
「やあっ! あたし、もう」
「果てて、小枝。姉様が果てさせてあげる」
「ああ――そんな、ああ、あうううっ!」
 ぎゅっと目を瞑ると、小枝は紗由里の髪の上で体を丸めて硬直した。
 握り締めたこぶしが白くなっている。
「うっ、うっ、う――」
 絶頂の叫びを必死で耐え、小枝は責めを受けながら細かく痙攣した。
「んんっ――!」
 その股間でくぐもった声を上げると、紗由里の背もびくびくと震える。
 一物の埋められた膣はきつく収縮し、しごきたてる典太の手の中で紗由里の男根は大きく脈打った。
 射精している。
 出るのは子種ではなく、愛液に近いもののようだが、それは男のものと違って女性特有の、果てなく何度でも絶頂のたびに放たれるのだ。
「姉様、姉様っ!?」
 射精の感覚が間近で伝わってきた小枝は、自分のものとは違う異質な感覚に戸惑いながら、続いていく絶頂の酩酊に翻弄された。
 飛び散った紗由里の精液が、布団に白い染みを作っていく。
「――は――」
 末期の息のような声をあげると、小枝はばたりと力を失って倒れた。
 紗由里も布団の上に顔を伏せ、肩で大きく息をしている。
 この中で達していないのは典太だけだ。
 満足そうなふたりに告げる。
「僕も忘れないでくださいよ」
 一時止めていた腰の動きを、大げさに開始する。
 ぱんっと肌の打ち合う音が離れの中に響き渡った。
「ひゃう!」
「あっ!」
 突然の刺激に、けだるさに身を任せつつあったふたりは不意打ちの喘ぎを放った。
 紗由里が顔をあげ、目を閉じたまま髪を振り乱した。
「ああ、典太! もっとして、もっと激しく」
「だめ姉様、そんなことしたらあたしが――」
「いいの。典太のそそり立った剛直が、私の奥まで当たってる! ああっ!」
「やあぁ!」
 わざと卑猥な言葉を発する紗由里の中を、その言葉通り奥までつらぬく。
 汗に濡れた肌がぶつかるたびにぱんぱんと打ち合わせる音が鳴った。
 息も絶え絶えな小枝が、紗由里の横に転がったまま両手を股間に当て、のたうっている。
「姉様ぁ、変になる、ああ! いじめてごめんなさい、ゆるして!」
「だめよ、小枝っ。姉様、怒って、るんだからっ。はんっ。ゆるしてほしかったら、私に奉仕しなさ、い」
 紗由里も無我夢中で、切れ切れに言う。
 小枝がその体の下に顔を入れて、張りを保ったまま揺れる乳房へ吸い付いた。
「んうっ!」
 その刺激が余計自分の快楽を増す。紗由里は乳房に吸い付く顔をつかんだ。
「む、胸もいいけど、もっとおいしそうなところがあるでしょう」
「あ……やだ、そこを舐めたら、あたし……」
「いいから!」
 紗由里に押されて、小枝はさかさまのままふたりのつながった部分へ顔を持っていく。
 結合部分から垂れた愛液が、ぽたぽたと小枝の顔を汚した。
 典太は紗由里の男根をつかむと、小枝の口元まで持っていく。受け取った小枝が、それを手でさすりながら口に含んだ。
「あああっ!」
 今度は紗由里が嬌声をあげる。
 今にも達してしまいそうだ。膣はまたぎゅっと絞られてきた。
 そのきつさに思わず出そうになった典太は、腰の動きをゆるめる。
 その隙に紗由里は転がっていた胡瓜を手に取り、自分の顔の下で開かれている小枝の秘所へ突き込んだ。
「――っぐ!?」
 一物を含んだまま、小枝は驚きの声を発する。
 紗由里は奥深くのもう入らなくなるまで埋め込んで、一気に引き抜き、また差し込んだ。
 同時に腰を深く落として、小枝が口の中のものをはずせないようにする。
「姉様の、方が、強いんだからっ」
「んんうぅーっ!」
「ああ、でも、いい。私、果てちゃう」
 潮時のようだ。
 典太は再び腰の動きを激しく再開した。
 肌の打ち合う音がまた響き始め、紗由里はあられもない声を飛ばした。
「ああ、典太、いいっ! いい! もっとぉ」
「紗由里様、僕も、もう、いいですかっ」
「ええ、出して、小枝にかけてあげて!」
「ううっ!」
「あはぁっ!」
 紗由里の絶頂と重なり、典太は腰を引いた。
 のどの奥まで一物を突っ込まれてうめき声も出さない小枝の顔へ怒張を向けると、典太はしごきはじめる。
 射精した精液は小枝の髪と額を汚し、紗由里の一物に降りかかって、小枝の口元へ流れた。
「んぐう……んんん!」
 紗由里の一物もどくどくと脈打っている。
 紗由里の絶頂に合わせて、一物も射精を始めていたらしい。
「ぷぁっ、はぁ、あ、あああああ!」
 のどの奥へ直接注ぎ込まれていた小枝は、なんとか窒息寸前でそれを引き抜くと、息を吸い込むと同時に嬌声を上げる。
「小枝、男の人が出す感じって、すてきでしょ?」
「これ、いい、もう、あたし――何度も果てて――」
 意味のわからない言葉を発している間にも、典太と紗由里の一物はふたり分の精液をその顔に降り注いでいった。典太は自分だけでなく、小枝のものもしごいて出していく。
「あうう……っく」
 ひとつうめいた紗由里の射精が収まり、ぐったりと力を抜いた。典太の一物もそのころには、震えながら脈動を止めていく。
 小枝の顔の上から体をどけて、紗由里が倒れこむように横になった。
 ふたりの精液でたっぷり汚された小枝は、呆然と天井を仰いだまま、焦点の合わない目で喘ぐ息遣いを繰り返している。
 典太は大きく息を吐いて呼吸を整えた。
 女ふたりは気を失いかねんばかりだ。
 投げ飛ばされたみたいにてんでばらばらに手足を投げ出し、動かない。
 紗由里はいいとしても、小枝はこのまま朝までここにいるわけにもいかないだろう。
 なんとか復活して戻ってもらわないといけないが、だいじょうぶだろうか――。
 後始末はなんだか、いつも典太の役割だ。
「ふぅ」
 しばらく座り込んだまま体を休めて、典太は軽く衣をひっかけると、手桶を持って離れを出た。
 そとは思いのほか蒸している。
 先ほどまで出ていた月は厚い雲に覆われて、形も見えなくなっていた。
 しばらく前まで吹いていた風がまた出てきている。
 このまま明日は大風を迎えるだろう。
 この屋敷は里から少し離れたところに位置しているが、頑丈な造りだ。少々の風では屋根瓦も飛んだりしない。
 井戸にたどり着いて、滑車を回していると、ふと視界の端を白いものが走っていったような気がした。
「ん?」
 目を向けると、なにやらぼんやりと輝く蛇のようなものが地面に居た。
 ただし輪郭がとなりの茂みとはっきりせず、しかも頭が四つに分かれて獲物を咥え込む牙のような形をしている。
 それはすぐ体をうねらせながら茂みの中へ消えていったから、目にしたのはほんの一瞬だったが――。
 典太の腕には鳥肌が立っていた。
 なぜだか本能的にぞっとしたのだ。
「妖物……だよな」
 どこか、本で見たような気もする。
 寒気がやまない。自分の腕で体を抱きしめ、もう一度空を見上げる。
 黒い雲が風に流れて押し寄せてきていた。
 それに混じって、大きな影が空中に漂っていた。
 はじめは折れた枝が何かの拍子に空中で絡まっているのかと思ったが、明らかに形状が違った。
 それは魚だ。
 のたり
 そう言う音で表現するのがふさわしい。
 四本の足のようなひれをもった奇怪な魚が、典太の頭上を過ぎて、這っていった。
 夢でも見ているのだろうか。
 その魚は風を受けてよろけもせず、鎧のようなうろこをわずかな明かりに輝かせながら、ゆっくりと屋根の上に降り立った。
 いつの間にか半分口を開けていた。
 そいつは呆然と立ちすくむ典太の方にまんまるい目を向けると、
「ゲコ」
 とつぶれた蛙みたいな声で鳴き、今度は屋根をすばやく這って消えていった。
「……なんなんだ」
 大風がこの世ならぬものを連れてきたのだろうか。
 あの大きな魚も妖物?
 それとも幻覚か……。
 突然人恋しくなって、典太は急いで水を汲むと、離れへ駆け戻っていった。
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