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山吹色の昏黒 あとがき
書き終わっての所見

実質一週間ちょいで、これだけ書き上げました。
アスティアの第一部も二週間で書いたものなのですが、当時は学生だったのもあり、もうこんな馬鹿みたいな執筆は出来ないだろうなと思っていたんですが、仕事しながらでもやりゃあ出来るんですね。休日を使って其の二の後半~其の三全部~其の四冒頭付近まで一日で書いたり、自分でもよくやったもんだと思います。
そのかわり出来栄えはまあ……反省点も多々。
描写に力を入れようとそれだけを念頭に置いたのに、まだまだ圧倒的に足りません。今後の課題です。
それと時代物は背景設定と下調べが重要と思いました。思いましたって言うか書く前に気づけって話しですが。蛇足ですが設定を述べると、江戸時代中期付近を基調としたファンタジー世界です。

各章の所見

・ 其の一
 処女を書いたことがなかったのでがんばりました。作者の趣味が出ますね。あまり破瓜のシーンは好きじゃないのです。血とか苦手。
・ 其の二
 フタナリは女の形をした男を描写すればいいので、楽だしエロいです。Hへの導入や結びがかなりやっつけになってしまった感があります。
・ 其の三
 一番のって書けました。オナニーシーンは全編通して一番お気に入りです。やけになって襲い掛かる小枝も、Mな姉様もいいです。ただ、視点の切り替えに若干無理があったような気がします。
・ 其の四
 対してこちらが一番苦労しました。もっと縄に縛られて喘ぐ様子を描写したかったのですが、なかなかうまく話が流れてくれず、何度も書き直しました。自分の場合書き直せば直すほどその部分と他の部分との接合部に違和感が出るので、そのあたりが心配です。またしても最後らへんがやっつけです。
・ 其の五
これまでの章の三倍を誇る分量の五章。章が進むにつれて内容が過激になってきているので、それを踏まえたものにしたところ過激になりすぎました。読者がついてきてくれるかともかく、いろんな描写を試せてよかったです。人体の限界に挑んでしまいました。ラスボス戦の人体交合は、アスティア外伝のアシリア編のアイデアを流用しました。なかなか、ほかでは見られないシチュエーションだと思います。こう言うのはありなのだろうかと、ひそかに心配です。ちなみに作者はこう言うのじゃ抜けません。


登場人物に対する所見

・ 小枝
 大好きです。この人のために書いたようなものです。一応作者の中ではツンデレです。
・ 紗由里
天然系お嬢様役。あまりキャラが立っていないかもしれませんが、気に入ってくれた人が居ると幸いです。
・ 典太
あいかわらず主人公の男は「ごはん」です。色とりどりの「おかず(女性)」を引き立てる役割です。最後には昼行灯よばわりまでされてます。
・ 愛宕
ケツで感じる熟女お姉様のはずが、最後は獣化までしてしまいました。これはこれで、色々シチュエーションを試せてよかったと思います。
・ 伝助
 最後でいい味を出してくれました。目玉で成長するって言うのは、おとぎ話からのアイデアです。乳のかわりに目玉を赤子にしゃぶらせるやつ。
・ 親父
こう言う作中に登場しないけど強烈に話にからんでくるキャラも好きです。スレイヤーズのリナの姉さんみたいな。

総括

全部で約十万文字です。気づけばアスティアの第一部よりも長いような。
ここまで読んでくださった方には感謝の意を伝えます。ありがとうございました。
番外編 天かける獣
 ――姉様!
 ――紗由里様!
 駆け寄ったふたりを両手で抱きとめ、紗由里は丘を渡る風に髪をなびかせて、そっとこう言った。
 ――ただいま
 その身体から憑き物は落ち、ようやく姉妹とそれに関わる男には、久方の平穏が訪れたのであった。
 それを見届けると、伝助は四肢を鳴らしきびすを返した。
 下草を踏む音に気づいた三人が馬を髣髴とさせる竜を振り仰いだ。伝助は言った。
 ――母の手助けがなければ紗由里を連れ戻せなかった。母が竜のことわりを破りおれと紗由里を助けたのもなにか故あってのこと
 ――行くの?
 紗由里の声。伝助は振り返らない。
 ――おれは妖物を追う。守りたいものを守れる強さを手に入れるまで
 伝助はたしかにその時、紗由里へ心惹かれていた。

***

 月は満ち欠け、桜の花が二度散った。
 紗由里が小枝の元へ戻ってから二度目の夏がきていた。
 十八の小娘だった小枝も二十歳を向かえ、がむしゃらやってきた当主としての職務も、貫禄を持ってこなせるようになっていた。変わらず、伝助の居た池を一望できる部屋から書机にひじをつき、書類に目を通したり、印を押したりしている。
 離れで暮らしていた典太と紗由里は、戻ってより早々に祝言を上げ、近くに小さな家を建てて住むことになった。とは言っても、諸事情で引退した典太の父に代わり、紗由里とともに諸国を漫遊しているので、年に数えるほどしか家には戻らない。屋敷を離れたことがなかった紗由里も楽しそうにしているし、典太への未練を断ち切りがたい小枝にとっても、居ないなら居ない方が気持ちが楽ではある。
 その日、屋敷には珍客があった。
 学者を名乗る青年が訪れ、ぜひ当主に話を聞きたいと言う。うさんくさがった屋敷の者は追い返そうとしたが、小枝は面白いと思った。田畑が収穫を迎える前の夕凪のような時期で、農民たちは忙しくてもそれを束ねる者は暇だったのもある。
「失礼します」
 小枝の部屋に現れたのは、同い年くらい年齢の背の高い青年だった。旅の暮らしで培われた精悍な面構えをしている。無精ひげや後ろで無造作に括られただけのざんばら髪など、たしかに屋敷の者は一目で追い返したくなるのもうなずける風貌だ。
 だが、不思議な輝き方をする瞳やまばらに伸びた髭の向こうの頬、すっと伸びた背筋など、こぎれいな格好をすればなまなかの美青年になるはずだ。なにより、不思議な懐かしさのようなものを感じて、思わず小枝は問いかけていた。
「あんた、前に会ったことあるか?」
「初対面の相手に『あんた』か。噂どおりのお方のようだな、小枝様」
 目を閉じてふっと笑うと、青年はどっかりあぐらをかいた。瞳を開き、
「おれは栢森(はくしん)と言う。妖物について調べる学者だ」
「――ああ」
 物怖じの欠片もない物言いと、迫り来るような力強い雰囲気に押され、押しの強さには自信のある小枝すら、若干返事が遅れた。栢森と名乗る青年は、まるで自分が主人で小枝が客であるように、堂々と続けた。
「旅の途中で興味深い話を聞いてな。……この屋敷、二年前に一度、あの世へ呑まれたそうじゃないか。それについてここに逗留していた典太と言う男が調査結果を発表しているが、おれにはどうも、おためごかしに感じられる。つまりあんたたちはなにか隠してるって思えるんだ」
 二年前の事件はあまりに強大で、あまりに危険すぎた。妖物は屋敷を中心にこの世とあの世をつなげ、この世の調律を保つ『竜』と言う存在がかろうじてその穴を塞いだのだ。とても、まともに世に出せるものではない。しかし屋敷に起きた変事は隠しようがなく、典太はそれにまつわる記録を偽って発表したのである。
 いずれ学者連中が矛盾点に気づいて屋敷を訪れるだろう。そう典太は予言もしていた。だからそう言うときのために、小枝は入れ知恵をされていた。
「その話なら、あたしにはまったくわからんのだ。あいにく典太は旅に出ている。いつ戻るかもわからん。言伝なら承るが――」
「いいや、かまわない」
「と、言うと?」
「おれは人の話など信用しない。自分で見て、たしかめる。しばらく屋敷に泊めてもらえないだろうか。勝手に調査させてもらう」
「…………」
「もちろん邪魔にはならないつもりだ。昼間は働けと言うなら、それでもいい。人並み以上に役には立つ」
「ふふふ、典太と言い、その父上と言い、学者は変人ばかりだな。いいだろう栢森殿。期限を二週間に定めて、好きに調べてくれ。なにか用事が出来れば頼むかもしれないが、基本は自由にしてくれたらいい。あとで女中に部屋を用意させよう」
「ありがたい」
 礼の言葉もそれだけで、栢森は大木のように立ち上がると、きびきびとした動作で襖を開け、小枝の部屋を出て行った。
「……変なやつだ」
 それを見送る小枝の口元からは、なぜか小さな笑みが離れない。栢森の巻き起こした風に残るかすかな体臭、その香りを前にどこかで、嗅いだような気がするのだった。

***

 案の定、屋敷の者の大半は、我が物顔で敷地の中を行ったり来たりし、客人が覗いたりしないような場所まで無遠慮に立ち入る栢森に、迷惑極まりない様子だった。実際、日に数度は女中や使用人が、あいつをなんとかしてくれと小枝に直接文句を言いに来る。暗に込められた『なんでこんな男を連れ込んでおくのだ』と言う意図を汲みつつ、小枝はそのつど捨て置けと取り合わなかった。
 栢森は離れに寝泊りしている。今は使っていないし、なによりそこがあの世との接点になったからだ。なんの変哲もない離れの中を、栢森は時折眉をしかめて、難しい顔で眺め回している。
「小枝様」
 夏の日差しも今年は弱く、過ごしやすい。昼下がりにぶらりと庭へ出た小枝を、栢森が呼び止めた。
「あと三日だな」
 小枝はにやりと返す。今日は公務もなく、朝から普段着に愛用している白い紫陽花柄の浴衣を着ていた。最近ではようやく小枝も周りの目に気づいて、その下に湯文字を一枚着ることにしている。
「今日はどうしても調べたいところがある」
「もう全部、回りつくしたんじゃないのか」
「いいや。ただひとつ、書庫だけは」
「…………」
 それは紗由里があの世に呑まれ、典太と小枝がこの事件に関わることになった、いわば発端の場所だった。小枝はしばし躊躇し、それから言った。
「いいだろう。あたしも久々に覗いてみることにするよ」
 小枝はじんわりと暑い庭から地下へ続く書庫の扉へと、栢森を案内した。
 最後にここを開けたのはいつだったろうか、と考えなければならないほどだった。一年以上は閉じたままだろう。事件の前までは虫干しや換気をしていたのだが、それもなくなってしまった。
 四角い小さな戸を開け、身をかがめて小枝は中に入ろうとする。
 と、突如横合いから伸びた手が、それを制した。驚いた小枝は手の持ち主の横顔を眺め、さらに驚いた。栢森はぎょっとするほど真剣な目で、地下の闇を睨んでいた。
「――ここだ。居るぞ……」
「なにがだ。いったいどうした」
 尋常ではないものを感じ取り、小枝は問いただす。栢森は目も合わさず答える。
「妖物だ。ここに妖物を閉じ込めたまま、長く放置しただろう。ここは繋がりやすい場所だ。妖物が沸きやすいと言う事は、それだけあの世と近いと言う事でもある」
「お前――」
 その言葉を聞いた瞬間、小枝は理解した。栢森がこの屋敷に逗留したのは二年前の事件のためではない。妖物の調査のためだったのだ。荒く染められた麻の着物の袖をつかみ、小枝は短く聞き糾した。
「栢森殿、お前は何者なんだ」
「おれは妖物を追う者。強い妖気に引かれてここへ来た。再び、戻ることはないだろうと思ったこの場所へ」
「――やはり昔、ここにいたのか」
「早く処置しなければならない。小枝様、おれが入ったら戸を閉めろ。あとは任せてくれ。このままでは危険だ」
「あ、ああ……」
 それだけ言うと、栢森は一陣の風のように地下へと吸い込まれていった。しばし呆然とその先を見つめていた小枝は、我に返ると書庫の戸を閉めた。
 それきり、栢森は戻らなかった。

***

 数日が過ぎた。
 栢森が消えた日の宵から降った雨は、いまもしとしとと屋敷を濡らしている。
 寝付けぬ夜を小枝は迎えていた。
 栢森はいったい誰なのか。少なくとも、小枝はその姿を屋敷の中で見たことはない。
 危険だと言う妖物、その存在も、書庫の戸を閉めたきり考えないことにしていた。
 書庫の中でいつかの紗由里のように消えてしまった栢森は、おそらく妖物に呑まれてあの世へ取り込まれたのだろう。
 再び、この世ならぬ影が小枝に迫ってくる気がした。ひどく心細くなって、小枝は布団の中でぎゅっと身体を縮こまらせた。
 こんなときだれかを頼りたくなるのは、女として、人間として当たり前のことだろう。ただ小枝を困惑させたのは、脳裏に自然と浮かび上がるのがどこか遠い地を放浪する典太ではなく、書庫の前で自分をさえぎった栢森の頑丈な腕だったことだ。無性にどぎまぎして、心が乱され、小枝は日を追うごとに寝付くことが難しくなっていた。
 諦めて布団から身を起こし、手持ちの燭台に火を入れる。夜着を脱いで、打ち掛けに無造作に置いたままの、白い浴衣を羽織った。
 小枝はそのまま、明かりを持って書庫までやってきた。屋敷は寝静まり、かすかな虫の音、雨音だけが畳の上を這うように響いている。そっと、ゆっくり地下への戸を開いた。きしむ音が何度か鳴り、小枝は誘い込まれるようにその闇へと歩を進めた。
 頼りない蝋燭の明かりだけでは、押しつぶされそうな濃い闇だった。階段を降り、本棚の並んだ書庫へたどり着いても、小枝にはなぜここへ来たのかわからなかった。
 明かりを四方へ向け、ぐるりと見回す。
 栢森の姿はなかった。それを確かめたかっただけかもしれない。
 パリパリと小さな異音がした。それを聞いた小枝は我に返り、急に空恐ろしくなった。
 ここには妖物がいる。連中の恐ろしさは身をもって知っている。
 きびすを返した足が、ずぶりと沈み込んだ。
 はっと下を向くと、床一面が真っ白い餅のようなもので覆われていた。
「いやっ」
 足を抜こうとするが、沼のようにはまり込んで動かない。逆に安定を崩し、小枝は燭台を取り落として前のめりに倒れてしまった。
 全身が沈んでいく。その速度は、床が飲み込む意志を持ったように速まっていた。わずかに片手が階段に触れた。だが身体全体が下へ引き込まれて、その手はもぎ離されてしまった。
「助けて!」
 小枝は首から上のみ床から残し、絶叫した。
「栢森!」
 その言葉を最後に、床は火の消えた燭台だけを残して静まり返った。

***

 気がつくと真っ白い空間に倒れていた。
 知っている。ここは、『あの世』だ。この世と対を成す、妖物の世界。色も形もない無の世界。
 小枝が気づくのを待っていたかのように、目の前の地面が陰影を作り、盛り上がって人型を取った。状況を把握するだけで精一杯の小枝は、それがどんな意図を持っているのか、覆いかぶさるように抱きすくめられるまでわからなかった。
 広げられた股間の中心に固い棒状のものが当たっている。自分の秘唇を割って入ろうとしている。
「いや、やだ!」
 暴れて抵抗するが、白い人型はいくら叩いても木偶人形のようにびくともしない。容赦なく異形の一物が小枝を犯した。
「あぐうう!」
 無理やり突き入れられた苦痛も一瞬、次の瞬間には脳髄が閃光で殴打されたかのような快感が吹き上がった。
「ああ! あああっ!」
 思考も理性もいっぺんに快楽で塗りつぶされて、小枝は我を忘れ喘いだ。突き入れられた物は何度も規則正しく律動しはじめ、そのたびに信じがたい快感が身体中を侵食して、律動が数度続くたびに絶頂感が頭を焼く。涙を流しながら快楽に犯される小枝は、目を見開いた時、白い人型の顔を見た。
「て――典太……」
 それは真っ白い造作に過ぎなかったが、たしかに典太だった。あの世のなにがそう描写させたのだろうか。それとも、無我夢中の小枝が見た幻のようなものなのか。
 どちらにせよ、小枝は拒絶した。
「やめてくれ! あたしは――」
 決別したのだと。
 しかし人型は動きを緩めず、ついに子宮の入り口をこじ開けるように腰を深く突き込んで、どくりと震えた。
「――!?」
 自分の内部になにかがほとばしる。その感覚が恐怖と、それ以上の快楽となって小枝を打ちのめした。反射と言ってもいい動きで背筋は反り返り、これまでの倍以上の快感が筋肉と言う筋肉を硬直させ、痙攣させた。
 どくんどくんと、異形の精液が注ぎ込まれている。執拗なくらい続いたそれは、小枝が快楽のあまり意識を失って、また快楽に叩き起こされるのを数度繰り返したくらいに、ようやく収まった。
 典太の顔を持った白い人型が離れても、小枝は全身を痙攣させたまま動くことも出来ずにいた。注ぎ込まれ続けた膣からは、しかし逆流するものは一滴もなく、全部が子宮の中へ納められたことを示している。
「しゃああっ!」
 突然、吹き上がるような声と共に、白い空間を切り裂いて巨大な影が踊り込んだ。
 それは駆け抜けざまの一撃で白い人型をこなごなに打ち砕き、反転して小枝に近づいた。
 小枝はその金色の燐粉を放つ身体を見つめて、小さく呟いた。
「伝助……」
 麒麟を思わせる雄大な姿。四肢を軽やかにおどらせ、二年前に去った竜は小枝へ身を寄せた。
「遅かったか。すまない……」
 その声を聞いたとき、小枝は目を見開いた。それは栢森のものだったからだ。
 二の句を告げずにいる小枝に、伝助は口の端を動かして答えた。
「栢森と言う名は旅の途中で手に入れたものだ。おれの名は栢森伝助。人化の術を覚え、人の世をさすらってきた。まだまだ力不足の身、お前たちの元へ顔を出すのは先のことのはずだったが――」
 言葉を切り、伝助は身を震わせると、金色の輝きが全身を覆って、その姿は人間に変わっていた。たくましい裸身の栢森がそこにいた。
「書庫の奥であの世が広がっていたのだ。おれの想像より深く。それを処理しきれなかったのも、お前を助けられなかったのも、すべておれの責任だ……」
 動けない小枝は、ゆるく首を振った。そんなことないと言いたかった。慙愧の表情で伝助は小枝の慰めをはじき、さらに告げた。
「小枝、お前はあの世のものを孕んでしまった。生まれてくる子は人外の異能を持ち、世を混乱に陥れるだろう。歴史上も何人かいたはずだ。殷の妲己なんぞもそうだ」
「あ……あたしは」
「ひとつだけ方法はある。おれの子を孕めば、子宮の中であの世のものを食らい尽くすだろう。ただしお前は人と竜のあいの子を育てねばならん。……それでもいいなら」
 小枝は片手を伸ばし、伝助を招いた。身をかがめた伝助の唇に唇を重ね、ささやいた。
「抱いてくれ」
「……わかった。久しぶりに見たとき、驚いたんだ。紗由里より綺麗になった」
「伝助、姉様を好きだったんだな」
「ああ。でもお互い、人の物のことは忘れた方がいい」
「ふっ、はははは。そうだ。そうだな。――ああっ!」
 小枝を抱きしめた伝助が腰から伸びる剛直を差し入れる。小枝は甘く叫び、その身体へしがみついた。
「もっと、もっと激しく! あたしから、忘れさせて!」
 それに応え、熱いたぎりは犯された穢れを吹き払うように、過去の人影を追い払うように、小枝の中を満たしつくした。
 伝助の男根は小枝の奥を何度も何度も叩きつけ、小枝はそのたびに膣道をぎゅっと絞らせてそれに反応した。溢れてきた愛液はお互いをぬめりに包み、どちらともなくふたりは首筋へ手を回して口付けを交し合った。
「はあっ、ああ! すごい、もっと!」
 高々と足を抱え上げた伝助が、最奥へとたくましい物を挿入する。膣の上部のもっとも感じるところを、前後運動のたびに抉られて、小枝は妖物に犯されたときとはまったく異質の、ぞくぞくとした享楽に酔いしれた。
 それは久々に感じる、愛されていると言う想いだった。
「で――伝助、あたし、もう」
「小枝、しっかり受け止めるんだ」
「うん。――はあぅ!」
「くっ」
 伝助の呻きと共に、男根から精液が射出された。
 汚らわしい妖物の体液を清めながら、脈動のたびに繰り返される射精が、小枝の中に酩酊するような快楽を生み出していった。その精を逃すまいと本能的な動きで小枝は伝助に抱きついて、腰と腰を密着させ、子宮口と射精してくる場所とを、ぴったりとくっつけている。
「あ――ああっ」
 息を詰めて絶頂を感じていた小枝は、最後に一声叫ぶと、全身の力を解き放って地面に身を横たえた。射精を終えた伝助も、さすがに荒い息を吐いてその隣へ身を横たえた。
「……伝助に抱かれることになるなんて、変な感じだ」
 やがて呼吸の整った小枝は、くすりと笑って言った。
「変か?」
「いや。いい男になった」
「…………」
 横目で見つめると、照れたらしい伝助は身体を起こし、その途中で金色に輝いた。
 立ち上がるころには立派な獣の姿へ変わっている。寝転がったままの小枝を見下ろして、重く告げた。
「二年二ヶ月二十二日後、女児を授かるだろう。その子は遠い将来、我が母、愛宕の後をついで竜たちの母となる定めを負っている。人の身でそれを育てることは並大抵ではいかぬだろう。だがひとりではない」
「……ああ。そのころには戻って来い。あたしを守れるだけ、強くなってな」
「……もう行こう。おれは違う道からこの世へ戻る。お前は来た道を戻れば、屋敷へ帰れるはずだ」
「ああ。達者でいろよ」
 小枝は半身を起こして微笑み、不器用な別れを告げた伝助を見送った。四肢を鳴らした獣は空を駆け上っていく。
 あの世の白い風景が、金色に輝く身体を煌かせて消えた。
其の五 愛宕の竜 四
 気がつくと小枝は、真っ白い空間に浮かんでいた。
 全裸で体を大の字に伸ばし、なんの支えもなく宙を漂っている。
 引き裂かれんばかりに犯された体も、狂いそうな媚液の影響も、いまはもうない。
 しかし全身が弛緩して力が入らず、意識もぼんやりと薄霧がかかったままだ。
 動く気力も無く、小枝は真っ白の世界で流されるままだった。
「うふ。小枝、おはよ」
 いつの間にか隣に紗由里が立っていた。
 なまめかしく微笑むその顔へ、小枝は力の無い視線を向ける。
「姉様……」
「おはよう、小枝」
 反対側から、また紗由里の声がした。
 小枝が首を向けると、そこにも紗由里がたたずんでいる。
 もう一度首を元に向け、微笑む紗由里の姿を確認してから、小枝は混乱した声をあげた。
「……え?」
 左にひとり、右にもひとり。つまり紗由里がふたりいる。
 どちらとも同じような笑みで、小枝を見下ろしている。
「おはよう」
「おはよ」
 次々と、どこからともなく紗由里が現れはじめた。
 何人も何人も。
 異常な光景にようやく小枝は意識がはっきりしてきた。
 相変わらず体に力が入らない。
 あっと言う間に小枝は紗由里たちに囲まれてしまう。
「な……なに?」
 なにをどう言っていいかわからず、小枝は意味のない疑問符をつけるので精一杯だった。
 最初の紗由里が、小枝の体に指を滑らせながら言った。
「小枝、私たちがひとつになれば、通路が完成するの」
「……通路?」
「この世とあの世、無と有の幽冥境がつながるのよ。有るも無いも意味が消えて、溶け合っていくの。素敵でしょう?」
「す……素敵なもんか。お前、もう姉様じゃないな」
「どうしてそんなひどいこというの? 私も――」
「私も……」
「私も」
「私も」
「私も」
「みんな紗由里。あなたの姉様よ」
 口々に言われて、小枝は眩暈がした。一瞬気を失いそうになる。
 置かれている状況について考えると頭が変になりそうだった。
 どうせなす術はない。
 現実をどうしのいでいくかの方がはるかに重要だ。
「だからみんな、あなたとひとつになりたいの。いいでしょう?」
「小枝の中に入れさせて。この張り詰めた肉の塊を」
 紗由里が自らの男根を撫でさする。
 ようやく気づいたが、すべての紗由里が腹につかんばかりに怒張をたぎらせ、欲望に潤んだ瞳で小枝を見つめていた。
 男根の大きさも普通の男のものの三倍はありそうだった。軽く一尺を越えている。
「いや……いや」
 首を振って拒否する。
 さっきまで巨大な触手を受け入れていたことを忘れ、小枝は恐怖した。そんなものを突っ込まれては股が裂けてしまう。
 安心させるように、やさしく髪が撫でられた。
 ひとりが耳元でさとすようにささやく。
「だいじょうぶ。これはひとつになるための儀式。痛くなんかないのよ。それどころか……ふふ。あとはお楽しみ」
「だって、全身が性器になるんですもの」
「私が男根でつらぬいたその場所が交合するための場所になるのよ……」
「い、意味がわからない」
 かろうじて虚勢をはり、小枝は反駁する。
 ふたりの紗由里が、目配せしあって小枝の足元へ立った。
 足首をつかみ、足の裏を男根へこすりつける。
「実際やってみればすぐにわかるから」
「ほら、こう言うことなの……」
 ふたりは股間のものをさすりながら、足の裏へ切っ先を添える。
 それがぐっと押し当てられ――そしてずぶりと足の裏へ埋没した。
「っ!?」
 同時に小枝は動かない体をわずかに反らせて反応した。
 まるで膣の中へ男根を入れられたかのような快感が、そこからほとばしったのだ。
 足の裏に男根が刺さる。それだけでも異常なのに、そこが強烈な快感をもたらしてくる。
 小枝は理解できないまま大きく口を開けて喘いだ。
「あ……あ……あ……」
「気持ちよさそうね」
「よかった」
 それぞれ足を股間にあてがい、ふたりの紗由里は潤んだ瞳で見つめ合う。
 そしてふたりとも、膣の中へ突き入れるのと同じ動きで腰を振り始めた。
 足の裏に裂け目も穴も生じていない。
 男根は肌へ溶け合うように突き刺さり、ずるっと抜き出されて、また突き入れられた。
 ぱんっぱんっとはしたなく股間に足裏を打ち付けはじめる。
 訳が分からずただ喘いでいた小枝は、やがてその快楽の大きさに翻弄され始める。
 足の裏が秘所の代わりをしているのだ。それも、両方が。
 本物の秘所からはなにも入れられていないにも関わらず、だらだらと悦びの涙が垂れ始めた。
「見て……小枝。あなたはあんなところで交わってるのよ」
 後ろに回った紗由里が、小枝の上半身を支えてよく見えるように起こす。
 細い足首を両手でつかんだ紗由里たちは、その欲望のおもむくままに巨大な男根を根元まで差し込んでは抜いていた。
「ああああ」
 なにをされているのかはっきりと認識して、小枝はおののく。
 こんなの悪夢だ。
 自分の体まであらぬものに作り変えられた気がして、心の底から恐怖が沸きあがる。
 しかしそれは、すぐに熱い快楽の昂ぶりに押し流されてしまった。
 のどからは我知らず、さえずるような甘い嬌声が漏れている。
 足の裏を犯され、しかも感じてしまうなんて。
 そう言う被虐的な思いも小枝の体を昂ぶらせる。
「ああっ、もう果てそう」
「私も……。先に、いい?」
「ええ、はやくしてね」
 ひとりが体を離し、びくびくと跳ねる肉の棒をさすりながら、小枝の下腹をまたいだ。
 お腹の上に射精しようと言うのか。
 屈辱感をこらえ、小枝はくちびるを噛む。
 巨大な男根はしかし、予想に反してその上空に留まらず、ずぶりと肌へと埋め込まれた。
 下腹へ太くて熱い物が差し込まれている。
 痛くもないし血も出ていないが、その様子は恐怖をあおるのに充分だった。
「だいじょうぶよ……だいじょうぶ」
 歪なものを突っ込んだ紗由里は、やさしくなぐさめながらも自らの欲望をしごく手を止めない。やがてびくっとその体が震えた。
「うっ……し、子宮の中に直接出してあげるね」
 男根の先端は、下腹から子宮へ差し込まれていたのだ。
 小枝は反射的に拒否する。
「いやっ! やめて、出さないで」
「もうだめ。もうおそいの。はぐっ!」
 うめいた紗由里の腰が揺れ、男根が大きく脈打った。
 血管が不気味なくらい浮き出て、それはどくどくと跳ねるような脈動を繰り返す。
 熱い物が腹へと落ち込んでいくのが感じられた。
 小枝は震えながら下腹に刺さった男根が射精する様を見つめる。
「あああ……いやぁ……」
「あはっ、いい。小枝の子宮に出してるの、出してる……」
 男根をしごいて射精を続けながら、恍惚と紗由里は言った。
 永遠かと思うほど長い時間が過ぎて、ようやく射精は止まる。
 下腹から抜き取られた瞬間、その結合部は水面のように揺らいだ。
 いったいそこはどんな理屈で男根を受け入れるのだろう。
 呆然とした頭がそんなどうでもいいことを考える。
 どろどろと、子宮から逆流した精液が、膣を通って陰唇の割れ目から零れ落ちていた。
「つぎ、私の番なんだからっ」
 その間も足の裏を犯していたもうひとりが、離れたひとりと入れ違いに小枝の上にまたがる。
「もうやめてえ……」
 泣き声の懇願は欲情に蕩けた耳には届かない。
 長く歪な肉棒をしごきながら、その紗由里は小枝の体に視線を這わせる。
「どこに出そうかな……どこに……」
 やがて恐怖にひくつくのどにそれは向けられる。
「うん。ここがいい」
「あ……」
 胸の下をまたいで、鎖骨の中心あたりから、斜めに紗由里は男根を差し込んでいった。
 それは小枝に快楽をもたらしながらずぶずぶと沈み、そして急激な違和感をのどの奥へ与える。
「あごっ!?」
 男根が食道に差し込まれたのだ。
 胸元から舌の付け根あたりまで、いっぱいに紗由里が詰まっている。
 息が出来ない。
 窒息する恐怖に小枝はあばれる。
「だから、だいじょうぶよ。ここじゃ呼吸なんていらないもの。あるのはただ快楽だけよ」
 耳元でささやく声。
 たしかに呼吸をしなくても苦しくない。
 安堵で全身が弛緩する。
 紗由里は食道を膣のように使いながら、腰を振った。
 喉ぼとけの下から上あごまでを、思う様に亀頭が行き来している。小枝が嚥下しようとすると、それが締め付けとなって心地いいのか、びくんと熱く震えた。
 奥の方から口へと男根が持ち上がってくるたびに、押し出された空気がのどを震わせて、くぱっくぱっと奇妙な声を小枝に吐かせた。
 なんだか間抜けな声だ。
 小枝は笑いそうになる。
 その瞬間、のどの奥の異物が熱い塊を吐き出した。
 普通口からのどへと入っていくものが、逆にのどから口へとほとばしった。
 ふるふるとした塊のような精液が、奥から奥から口の中へ溢れてくる。
 飲み込むことは出来ないから、出された精液は溜まりきらなくなると、だらしなく口の端から垂れ始めた。
 まだ子宮に出された精液もその中に納まりきっておらず、秘所から垂れ流しの状態だ。
 上の口からも下の口からも精液を吐きながら、小枝はなすがままに犯された。
 たっぷりと出したいだけ出すと、紗由里は食道から男根を引き抜いて離れる。
「……は……」
 ようやく開放された。
小さく喘いで小枝は周りを見回した。
 周りを取り囲んだ紗由里は、みな一様にてらてらと男根を先走りで光らせ、情欲のまなざしを小枝に向けている。
 その全員と小枝は眼があった。
 いまからまだ、これだけの人数に犯され続けるのだ。
 あの数の男根を相手に、体中を性器代わりにされて。
 むちゃくちゃにもてあそばれるのだ。
「あふっ……ふふふ……」
 小枝は笑った。
 張り詰めていた脳裏の糸が切れてしまった。
 精神の崩壊を免れるため、理性を脱ぎ捨てて小枝は状況を取り込んだ。
 あきらめたら何も怖くない。
 いっしょに愉しんでしまえば苦しいこともない。
 ここにいるのは、みんな姉様なのだ。
「あはっ……ちょうだい、もっと……」
 手近な男根をつかんで、口元へ運ぶ。亀頭をちゅぱちゅぱと舐めると、居並ぶ紗由里たちはいっせいに、花が開くように微笑んだ。
「やっと姉様を受け入れてくれるのね……」
「うん……うふっ」
「うれしい小枝。じゃあほら、こうしてあげる」
 背中に紗由里が抱きついてくる。
 後ろからそのまま下半身を押し付け、男根を差し込んだ。
 それは小枝の体をつらぬいて、背中から臍へと突き抜ける。
「はあっ!」
 強烈な快感に小枝はにぎった男根を手放し、まだ精液の混じる涎を吐いた。
 すぐさま自分の腹から生えたそれを両手でつかみ、ぎゅっと力を込めてしごいていく。
 後ろの紗由里は派手に喘いだ。
「ああ――小枝、そこまでしてくれるなんて」
「いいのか、姉様ぁ……」
「いい。いいよ……いっぱいしごいて。もっともっと」
「ずるい。私も」
 背後にもうひとり割り込む気配。
 突然小枝は、首の裏から突き込まれ、口から男根を吐き出した。
「えぐっ!?」
 さすがに目を見開いて硬直する。しかしそれでも、感じるのは苦痛ではなく、脳髄が犯されるような甘美な快感だった。
「んぐぐぅ」
 頭をつかんだ紗由里が、首の裏を基点に律動し始める。
 奇怪な舌のように男根が口から出入りしていった。
 小枝はその男根も刺激しようと、舌で裏側をねぶり、くちびるをすぼめて締め付けを与える。
 反対側からの口淫だった。
「んふっ、んえう……」
 涎が零れ落ちるのも気にせずに、口中の力を使ってありえぬ位置から挿入された男根を吸い込み、舐めすする。
 その間もずっと、腹から生えた一本をしごくのはやめない。
 やがてその紗由里が、こらえきれぬように叫んだ。
「小枝、出ちゃうう!」
「ああ! 私も、私も――」
 同じように、首の後ろから犯す紗由里も叫んで、そして放った。
 口と腹、両方から突き出た怒張がびくびくと震え、射精を開始する。
 小枝は自分の口から精液が飛び出していく様子を、うっとりと見つめた。
 腹の男根も力いっぱいこするたびにどくんと脈動して、先端の溝から白いものを空中に放り投げていく。
 二本の男根は、繰り返し脈打って、ようやく果てていった。
 欲望の吐き終わった物がずるりと引き抜かれる感覚に、そのまま魂まで引き出されそうになって、小枝は一瞬白目を剥く。
 気を失いそうになった小枝を覚醒させたのは、紗由里の手だった。
 三人ほどがぐったりとする小枝の体に取り付き、それぞれ胸と股間へ手を当てている。
「入れられてばかりじゃ不公平だもんね」
「小枝も入れたいでしょ? どう?」
 にこやかな問いに、小枝は焦点の定まらぬ目を向けて答える。
「入れ……入れたい……」
「うふっ。じゃあ私と同じもの生やさないとね」
 ぐっとその手が、乳首の上から胸の中へ埋め込まれていく。
 がくがくと小枝は痙攣し、舌を突き出してその異物感に耐えた。
 胸の中で手が探るように蠢いている。
 それはつかみ上げるような動作で、ずぼっと胸からなにかを引き上げた。
「あああ――うそ……」
 それは男根だ。
 びくびくと震え、固く屹立するそれは、紗由里のものと比べても遜色ない立派な一物だった。
 そんなものが乳首から生えたのだ。
 もう片方の胸も、ずるっと引き抜かれて、男根がそそり立つ。
「こっちもね」
 陰部に手を差し込んだ紗由里が、そこからまた巨大な異物を引き抜いた。
「ひあああっ!」
 三本目の男根が股間から引き抜かれ、その刺激に耐え切れず小枝は絶頂に達する。
 びゅるびゅると三本ともが射精した。
 それは頭の中が真っ白になるほど刹那的で強烈な快楽だった。
「ああああああ」
「出してる出してるっ。ね、初めて射精する感じ、どう?」
「いいでしょ、とても」
「次は私たちの中で出してね」
 まだ精液の残滓を吐く男根をつかみ、紗由里が笑った。
 ふたりが背中合わせに小枝の胸の上に乗り、ひとりが股間の上で騎乗位の体勢を取る。
 三人の紗由里は、目配せしあって同時に小枝の男根を挿入した。
「せーのっ」
 ずぶっと三本とも、秘所の熱いぬめりに呑まれていく。
「あはああぁ!」
 小枝は味わったことのない感覚にのどを反らして嬌声をあげた。
 胸も、股間も、熱くぬるぬるしたところで溶かされるようだ。
「動くよ」
「私も動く」
 胸の上に腰掛けるようにしたふたりが、杵つきのように交代に腰を持ち上げ、下ろしていく。
 乳首がわりの男根がその中で締め付けられ、粘膜にこすりたてられていく。
 股間のひとりも上下運動を開始した。
 入りきらないとも思える怒張を根元までずっぽりと秘部へ収めて、ひざが伸びきるまで立ち上がり、そして座り込む。それでも亀頭の付け根くらいが紗由里へ入り込んだままだった。
「はあっ、はあ」
 淫靡な屈伸運動を始めた股間の紗由里のせいで、小枝の快楽はどうしようもないほど高まっていく。
 男根が刺激される感覚に慣れていない小枝は、はやくもまた絶頂へ向かっていった。
「姉様、あたしまた果てるっ」
「いいのよ、いくらでも果てて」
「たくさん出すのよ」
 胸のふたりもわざと膣を締め付けて、小枝の射精を促した。
 快楽に抗えず、小枝は二回目を放つ。
 目の前で星が散っていくようだった。頭の中から血液が全部、股間と胸へ流れて出て行くようだ。
「素敵、素敵……」
 奔流のような快感に流されるまま射精する小枝は、うわごとのようにつぶやく。
 その頭がぐっと後ろからつかまれた。
 快感に打ち震える瞳を向けると、男根をひくつかせた紗由里が額の上へそれを乗せてきた。
「小枝、自分ばっかり気持ちよくてもいけないのよ」
 乗せられた男根が移動し、脳天へ当てられる。
 なにもかも受け入れた小枝も、さすがに慌てた。
「待って姉様、そんなところ入れないで」
「ここが一番いいのよ。脳髄で交合されるの。想像してみて、小枝……」
「あああやめてぇ」
「いやよ。ほら、入った――」
 ぐぬぬ、と脳天から焼け杭のようなものが侵入してくる。
 それは快楽を受け取るべき脳を冒して、想像を絶する刺激を小枝に与えた。
 侵入してくるものが小枝の思考をすべて真っ白に塗りつぶしてしまう。
 のどから絶叫のような嬌声がほとばしった。
「ああああーっ!」
 収まりかけていた射精が、ふたたび跳ねるように開始される。
 膨張した男根によって、それを受け入れていた三人も体を震わせた。
「わ、私も……果てちゃう……」
「いっしょに果てましょ、ね?」
 胸の上のふたりは背を曲げてくちびるを合わせ、舌をからめあった。
 射精する男根は激しさを増し、子宮へと精液を叩きつけて、膣の中を荒れ狂っている。
 その感覚がふたりを絶頂へ導いた。
「ああ、そんなに出されたら私だって――」
 股間で大きな上下運動を繰り返していた紗由里も、射精の勢いに飲まれて自らの男根からも放ち、欲望のままに果てていく。
「あはぁ、あああ!」
 小枝は脳天から犯されつつ、この世ならぬ快楽を味わって絶叫を続けていた。
「いいでしょ、いいでしょ」
 こめかみを両手で押さえ、紗由里は頭の中へ思うがままに男根を突きいれ、腰を振るっている。
 果てた三人が体から降り、すぐにまた違う紗由里たちが小枝をむさぼり始めた。
 今度は胸の両脇からふたりが男根を差し込み、乳房の頂点から伸びる異物を口に含んで口淫しはじめる。
 太ももにもそれぞれふたり、足と腕にもまた紗由里が取り付き、あいている尻や腹の一部へも、なんとか屹立した肉の棒を収めようとのしかかってくる。
 体中が性交の場所にされてしまった。
 全身がはげしく突かれ、かき回され、ただ快楽だけが怒涛のように押し寄せる。
 脳天の紗由里がいよいよ動きをはやめていく。
 小枝の思考はすでに破り捨てられ、その跡にはただ真っ白な闇が快楽のままに存在した。
「小枝、出すよ、頭の中に出すよ!」
「はああぁー!」
 その宣言にも答えられず、ただ嬌声をあげて応じるだけだ。
 ひときわ熱いものが脳髄へと流し込まれてきて、ついに小枝は意識を失った。


***


 屋敷のちかくに戻った典太は、夜の闇のなかでも白く薄く輝く奇妙な霧がそのまわりに渦巻いているのを見て、息を呑んだ。
「これは……!」
 時折その中から雷のような筋が閃いている。
 遠巻きに屋敷を囲んでいる使用人たちのひとりが典太を見つけ、駆け寄ってきた。
「典太戻ったか!」
「一体なにが起こったんです?」
「わかんねえ。お館様と紗由里様が寝ている離れから突然白いものが溢れ出してきたんだ。おれたちは驚いてすぐ逃げ出したから無事だが……」
「ふたりは、あの中か」
 視線を強くして、異様な霧の漏れる門を睨みつける。
 いらない荷物を打ち捨てると、すぐさま典太はその門めがけて走り出した。
 慌てた使用人が叫ぶ。
「いっちゃいけねえ!」
「僕はこのために帰ってきたんだ!」
 叫び返し、霧の中へ飛び込む。
 まるで体に粘りつく糸のような霧だった。
 掻き分けるように両手を動かしながらでないと、うまく前にも進めない。
 水中を泳ぐようにして典太は庭へたどり着く。
 瘴気のような白い霧はますます濃く、まわりもよく見えない。特に離れの付近は、とりもちに呑まれたように真っ白だった。
「くっ……」
 まずは伝助を探さないと。
 あれでも竜の幼生、愛宕の子だ。
 竜は魚のような姿から徐々に試練をこなし、進化とも言うべき成長をするらしい。
 愛宕の話した内容では、おそらく伝助は滝登りを終えただけの第二段階。とてもこの状況を打破する力はないだろう。
 愛宕の目玉には一気に成体へと成長させる効果があると言う。
「伝助ー!」
 こんなに一生懸命、あの間抜け面の名前を呼ぶのは初めてだ。
 なんとか小枝の部屋のほとりの池へたどりつき、その中を覗くが、伝助の姿はなかった。
 まさかこの状況に脅えて屋敷から逃げ出したのだろうか。
 敵わないなりに立ち向かっているに違いないという想像をしたのが間違いだった。戻らないといけないが、体はなにかに捕らえられたように動きが鈍くなりつつある。
「くそっ」
 悪態をついたそのとき、どこからか潰れた蛙のような声がした。
「ゲコ」
「――伝助か!? どこだ」
 のっそりと、小枝の部屋からまんまるな瞳が顔を出す。典太はわめいた。
「お前そんなところで――いやいい、ほらこれ、いいもの持ってきた」
 懐から大事に包んだ目玉を取り出す。
 差し出そうとする手が、急に引っ張られたように動かなくなった。
 震える指先をぎりぎりと動かし、包みを解く。
 きらりと白い闇の中、金色の瞳が輝いた。
「伝助、行くぞ」
 手首だけの動きで目玉を放り投げる。
 放物線を描いたそれは、見事に伝助の鼻先へ落下し、魚のような竜はぱくりと口を開いて飲み込んだ。
「うわ!?」
 とたんにその体から、金色の光りが溢れ出す。典太の体にからみついた白い闇が、一気に消し飛ばされた。
「ほ、本当に――」
 ここまできても半信半疑だった典太は、輝きながら姿を変える伝助を見て度肝を抜かれた。
 不恰好な体は長く太く伸び、ひれだった足は立派な爪をそなえていく。まんまるの瞳はまぶたを備えた切れ長の眼へと変化し、その上辺りから竜の象徴たる角がにょっきりと伸びていった。
「しゃああああ」
 吹き上げるような声を一声上げて、伝助は四肢で庭に降り立つ。
 思ったよりは小さいが、それでも体高だけで典太の身長ほどあった。竜と言えば蛇のような姿を想像しがちだが、伝助は馬のように長く力強い足を持ち、太い首も短めの尻尾も草食蹄類を思わせる。あの間抜けな魚が、一瞬でよくもここまで威厳を備えたものだ。典太は感心した。
「礼を言うぞ、典太」
 太く響く声で伝助は言った。言葉を得たらしい。
典太は肩をすくめて応じる。
「礼なら愛宕さんに言ってくれよ。僕は運んだだけだ」
「ふっ。あいかわらずだな。……ここから先はおれの役割だ。お前は戻って待っていろ」
「僕も行く」
 じろり、と金色の大きな眼が典太を見据えた。口の端を動かすようにしながら伝助は言う。
「行けば戻れんかもしれんぞ」
「なら戻らないだけだ。戻るときはふたりを連れて帰る。邪魔になるなら、もちろん遠慮するけど」
「……邪魔にはならん」
 伝助は目を逸らす。
 その様子から、典太は伝助が自信を持てずにいると察した。
 成長の段階をいくつも段飛ばししたのだから、自分の力量も測れていないだろう。稚児が急に侍へ成長し、いまから果し合いをしようと言うのだ。
 そう一気にうまく解決するものじゃないらしい。
 愛宕が自信ありげだったことだけが、唯一心強いが――。
 考えても仕方ない。典太は白に塗りたくられた離れを指差す。
「行こう。あそこだろ?」
「おそらく。おれが道を拓く。あとをついて来い!」
 ざぁっと下草を揺らして伝助は地を蹴った。
 雄大なけもののあとを追って、典太も走り出す。
 大地を駆けるその姿は、やはり竜と言うよりも麒麟のような荘厳さだ。金色の輝きが燐粉のように散るたび、白い闇は掃き散らされるように消える。
「ジャッ」
 ひとつ吼えて、伝助は離れへと頭から飛び込んだ。
 伝助の突っ込んだところには、丸く金色の輪があく。典太もそこへ、ままよと走りこんだ。
 その瞬間、光景が一変する。
 そこは見慣れた離れの中ではなく、ただ真っ白いだけの空間だった。
 覚えがある。これは、紗由里を助けるために立ち入ったあの世の光景だ。
 伝助がとなりにいた。
 匂いを嗅ぐように有るのか無いのかわからない地面へ鼻を向け、そして走り出す。
「こっちだ」
 慌てて典太もそれに続いた。
 風景のない世界は、自分の速度感をまったく狂わせてしまう。
 一生懸命足を動かしているのに、止まっているような感覚しかない。前を走る伝助の波打つ体だけが、唯一進んでいることを教えてくれる。
 突然、ばりばりと引き裂くような音を立てて、伝助の前方が布を突き破るように歪んだ。
 典太がそこへ走りこむと、ようやく色のついたものを目にすることが出来た。
 いくつもの肌色の裸体が空間へ浮かんでいる。
 それは全部紗由里だった。
「え――」
 驚きで声が出ない。
 紗由里たちも驚いている様子だった。巨根を生やした股間を隠しもせず、こちらを見つめている。
 紗由里たちに取り囲まれた中に垣間見えたのは、ぐったりとする小枝だった。
 それを見た瞬間、典太は我に返る。
「小枝様!? し、死んでないかな」
「……だいじょうぶだ。気を失っているだけのようだ」
「よかった。じゃあ小枝様はいいとして……紗由里様はどれを連れて帰ったらいいんだ」
「馬鹿者。全部偽者だ」
 伝助がうなる。
 あやかしを見破る力は、さすがに竜と言うところか。
 そうこうするうちに、向こうも状況を理解したようだった。小枝の体から離れ、こちらへ向き直る。
 その中のひとりが言った。
「典太……迎えに来てくれたのね」
「――聞く耳を持つな」
 伝助が目を向ける。典太はうなずいた。
 紗由里たちは感激した面持ちで、口々に言葉を発し始める。
「ありがとう典太」
「いっしょに行きましょう」
「さあ、こっちへ」
「私と愛しあいましょう」
「ほら……早く」
 手を差し伸ばし、満開の花のように紗由里たちは笑った。くらっと眩暈がする。典太は頭を振ってそれに耐えた。
 頭では理解しても、どうしてもそこにいるのは紗由里だと思ってしまうのだ。
 愛する女性が何人も何人も自分を誘っている。
 脳内に矛盾が発生して思考が止まりそうだった。
「妖物め。紗由里を汚すとは許せん!」
 吼えた伝助が走り出し、紗由里へと突撃した。
 突進する巨体にぶちかまされ、ひとりが宙を舞う。それは途中でふっと呑まれるように消えてしまった。
「きゃあああ!」
「やめて伝助!」
「助けてっ」
 悲鳴を上げながら逃げる者。
 うずくまって泣き出す者。
 怯えきってすくむ者。
 伝助は美女を喰う大蛇のように紗由里たちへ襲い掛かり、牙や爪の餌食にしていく。
 致命傷を負った紗由里たちは、白く体を濁らせて消えてしまう。
 相手は妖物とわかっていても、正視に堪えがたい光景だった。
 それこそが相手の取る防御手段なんだろうが――。
 典太には伝助と同じことをしろと言われても、とても無理だろう。
 伝助にしても同じ気持ちかもしれない。一番かわいがっていたのは紗由里なのだ。
 そう思うとひどく哀しくなった。
 この状況で、やめてくれと叫ばないことだけが、唯一典太に出来ることだった。
「伝助……どうして……」
 涙を流しながら地面へ沈むように最後のひとりが溶けていく。
 見上げるその顔を頭から踏み潰し、伝助はしゅるる、とうなった。
 典太は吐き気をこらえながら立ち尽くす伝助に近づき、その背を叩く。いまはとにかく小枝の救出だ。見たところぐったりしているだけで、なんら外傷も見受けられない。
 裸身を抱きかかえると、腕の中で小枝は薄く目を開けた。
 か細い声で信じられぬものを見たように言う。
「典太……本物か?」
「ですよ」
 典太は目元に落ちた髪を払ってやる。とたんに小枝は涙ぐんだ。
「お前……いつからこんな格好のいい役になったんだ」
「いやまあ」
「気取っている場合じゃない。様子がおかしいぞ」
 伝助がそう告げたとたん、白い世界を地揺れが襲った。
 地揺れと言うべきか、空間そのものが揺れているのだ。水中で波に翻弄されているようである。典太は必死で小枝を落とさないように耐えた。
 そんな中でも平然とした様子の伝助が冷静に状況を分析する。
「世界の均衡が戻り始めている。第一の目的は達したが、まずいな。通路が閉じるぞ」
「なんだって?」
「お前たちふたりは先に戻れ。おれは紗由里を探す。このまま皆で残ることは出来ない」
「しかし――」
 しぶる典太に、伝助は首を振った。
 あの間抜け面からはとうてい想像できない威厳を込めた声で、行くようにうながす。
「おれに任せておけ。必ずつれて帰ろう」
「わかった……紗由里様を頼む」
 小枝を抱いたまま、典太はやってきた方向へ走り始めた。
「そのまま走れ! 後ろは振り向くな、白の切れ目が出口だ――」
 伝助の声が背後から追った。
 世界の揺らぎはますます激しく、走るどころか立っているのも困難だ。
 しかしどんなに体勢を崩しても転ぶことはなかった。上下も、右左も意味がないのだ。
 ただ足を動かしていれば前に進む。
 そう言う世界であることを、典太はようやく理解してきた。
 体の回りの空間が、あぶくのように沸き立ってきた。
 これが世界の臨界点であることは、直感的に感じられる。
 出口は見えない。間に合わないのかもしれない。
 その瞬間、あたりは金色に包まれて輝いた――。


***


「結局、戻らぬままか」
 ぼそりとつぶやいた声は、迫りくる夕闇に押しつぶされるように消えた。
 典太は屋敷の裏の小高い丘から、呆と夕陽を見ている。小枝がそのとなりでひざをかかえていた。
 離れにあの世の口が開き、そこから小枝を救出してはや数日。
 屋敷は元に戻ったものの、伝助と紗由里があの世から戻ることはなかった。
 典太にはもう、待つ以外打つ手はなかった。
 数日間の空白は、絶望と悪い想像が悪鬼のように膨らむのに充分な期間だった。
 あのまま紗由里はあの世に呑まれたかも知れない。
 まったく違うものへ変わってしまっているのかも知れない。
 よしんば無事だったとしても、それを連れ帰るはずの伝助が無事でいないかもしれない――。
 小枝も心労でやつれている。
 眠れていないのだろう。目の下の隈は痛々しいくらいだ。
「――なぁ、典太」
 力の無い声でささやくと、小枝は典太の肩へ体を預けてきた。
 しっとりとした重さがかかる。典太はその首筋に手を回し、さらさらと髪を撫でた。
「もしこのまま姉様が戻らなければ、お前はどうする?」
「……屋敷に居る意味は、なくなるでしょう。親父とまた旅空に戻るか――いや、それもないな」
 愛宕の顔が浮かぶ。約束は約束だ。
 ため息を吐いて、続けた。
「わかりません。だけど、ここからは居なくなるでしょう」
「……そうか。なら、そのときはあたしも連れて行ってくれないか」
「…………」
「肉親と呼べるのは姉様だけだ。肉親の居ない家などあたしも居る意味は無い。当主の座など親類の爺どもにくれやろう。もうあたしに残ったのは、お前だけなんだ……典太」
「それも、いいかもしれませんね」
 小枝は疲れきって投げやりになっている。それは典太も同じだった。
 ただ空の輝きだけが美しい。
 美事な夕暮れ。深い青から橙色、黄色に移って、まるで黄金が輝いているような光を放ち、夜の薄闇へ沈もうとしている。
 小枝がそれを眺めながら、つぶやいた。
「きれいだな。まるで山吹が咲き誇っているみたいな黄昏だ」
「……黄昏の意味をご存知ですか?」
「……いや?」
「あれはだれだ、と言う意味の『誰(た)そ彼は』が変化して、たそがれと言う言葉が出来たんです。昼でもない、夜でもない、あれが誰だかわからくなる時間……」
 典太は夕暮れを眺める小枝の横顔を見つめた。金色の光に映し出されたその顔に、ひどく紗由里の面影を見る。小枝が無言なのを見取って、典太は続けた。
「毎日ここから夕焼けを見ているのはね、この時間なら紗由里様が帰って来る気がするからです。逢魔が刻って言うでしょう。あの世とこの世がほんの少しだけ、どこかでつながるんですよ、きっと――」
 さらに無言が続く。典太も黙って、山吹色の空を見上げた。
 ざぁっと、湿気を含んだ風が丘を駆け抜けていく。
 ふたりの居る後ろから、夕陽の沈む方へ。まるで押し流していくように。
「――ん」
 ぐったりと、と言う表現が正しいような格好で典太にもたれていた小枝が、気づいたように後ろを振り向いた。
「……夕立か」
 暗くなったのは夜のせいと思ったら、厚い雲が立ち込めてき始めたためらしい。同じ方向を振り向いた典太は、反対側の地平から急速に黒雲が流れてくるのを見た。
「帰る、か」
 つぶやき、立ち上がる。典太もそれに習った。小枝が着物に付いた草っぱを払いながら、短く唄った。
「あめたんもれりゅうがんど――ってな。夕立のたびに思い出すよ」
「なんですかそれ?」
「あたしは覚えていないが、小さい頃やっていた雨乞いの音頭だよ。姉様が気に入って夕立のたびに歌ってた。雨を下さい龍神様って意味らしい」
「紗由里様らしいですね。夕立が降ってるのに歌うなんて」
「ふっ、そうだな。でも姉様らしい理論があってな。夕立って言うのはもともと雷をさしたらしい。雷ってのは竜のものだろ。雷が鳴ると龍竜(りゅうたつ)様が雨をくれるって言うのがなまっていって、夕立が雨をさすようになったそうだ。りゅうたつとゆうだちって、語呂が似てるからな」
「りゅうたつ……」
 典太は雷雲を見上げる。もうそれは頭上まで伸び、強さを増した風が運ぶ湿気は肌に直接水分を感じさせるほどだ。
 反対側を振り向く。黄昏はいまだ、黄金に輝いていた。
 暗雲と夕陽、黒と金色。相対する不思議な色合い。丘の上に立つふたりは、半分が輝き、半分が闇に染まっていた。
 典太はなぜか、確信を持って言った。
「僕、ここへ残ります」
「――姉様が帰って来る気がするからか?」
 見事に言い当てられた。目をしばたきながら肯定すると、小枝は笑ってうなずいた。
「実はあたしも、なんだか急にそう思ったんだ。見ろ、典太。まるで竜でも降りてくるような夕立だ」
 黒雲の下には目でわかるほどの土砂降りが、厚い壁のようにたぎり落ちていた。
 迫ってくるその壁を、避けようとせず、ふたりは立ち尽くす。いつのまにか手を握り合っていた。
 ざぁっ。
 重いものに叩かれるような雨粒を体中に受け、ふたりは目を閉じる。
 着物は一瞬で水を含み、まるで素肌へ直接雨が注いでいるような感覚が生まれる。
 これほど雨に打たれるなんて、何年ぶりだろう。
 いっそすがすがしい心地で、典太は目を閉じたまま天を仰いだ。
「遅くなって申し訳ございません」
 聞き覚えのある、やわらかな声が耳元でささやく。
「今回のことは特別。あの約束、きっと守ってくださいませ」
 はっと目を開ける。
 金色の巨大で長いものが目前を周回するように駆け抜け、ばっと空へ登った。
 光の塊となったその姿を目で追うことはできない。地上から逆にいなづまが雲へ刺さったように黒雲は煌き、そしてそこから円を描いて晴れ間が広がっていく。
 雨はやんでいた。
「……短かったな」
 何事もなかったかのように小枝が言った。気づかなかったのか、典太にしか見えなかったのか。たしかめようと口を開きかけたとき、丘の向こうに人影が見えた。
「姉様!?」
「紗由里様!?」
 発見は同時だった。大きな馬のようなものを連れたその影へ、すぐさまふたりは駆け出していた。
 その背を金色の残滓が照らし出す。山吹色の昏黒は、静かに暮れようとしていた。
其の五 愛宕の竜 三
 目が覚めると朝になっていた。
 部屋に愛宕の姿はない。
 昨夜はあれだけ乱れたのに、部屋の中は整然としていて、引き裂かれたはずの布団の破れもなかった。
 体の傷も消えている。
 愛宕のあの姿も、なにもかも夢だったんだろうか。
 ぼうっと座り込んでいると、廊下を足音が進んで障子に人影が映った。
 すっとひざをついて障子を開けたのは、清楚な和装に身を固めた愛宕だった。
 目元のほくろも、結い上げられた髪も、最初に会ったそのときと変わらない。
 耳に心地よい声が朝の挨拶を告げ、笑顔を向ける。
「よくお眠りになられましたか?」
「あ、おかげさまで……」
「朝餉をお持ちしました」
 旨そうな膳を運んでくる。白米に味噌汁が湯気を立てていた。
 早速味噌汁をすすり、典太は言う。
「すいません、なんか。いたれりつくせりで……。こっちはなにもお礼できないのに」
「いいえ。礼ならいただきました」
 愛宕は下腹を押さえ、にっこりと微笑む。
 その意味するところを知って、典太は味噌汁を噴出しかけた。
「あああ、まさか」
「うふふ。ご安心なさって。子を成す確立など万にひとつ。わたくしが孕むには、人と一万回は交合せねばならぬのです」
「ああ……そりゃ、たいへんですね……」
 気の遠い話だ。たしかにそれなら、一晩でも二晩でも交わり続けなければならないはずである。
 すっと体を寄せて、愛宕が流し目を作った。
「でもあなたとなら、子をもうけとうございます。いつまで居てくださってもよろしいのですよ」
「それはありがたい申し出ですが……そうですね」
 典太は白米を喉へ流し込み、箸をおいて合掌する。
 それから愛宕へ目を向けた。
「その役目は僕じゃなく、親父に譲りましょう。あの風来坊はそろそろ腰を落ち着けるべきだと思うんです」
「ほ、本当ですか?」
「今度親父に会ったら、縛ってでもここへ連れてきますよ。そのためにも、僕はもう戻らないといけません」
「約束してくださいね。きっと……」
「ええ」
 典太はうなずいた。
 ほうっとため息を吐いた愛宕は、体を離して正座する。
「それではお約束どおり、婚約者を救う手立てをお教えしましょう」
 本題へ入ったことを察し、典太もいずまいを正す。
愛宕は続けた。
「シフはケイフのつがいになるもの。シは至る、フは府庁の字を当てます。この意味はお分かりになりますか」
「……いえ」
「府はものごとの中心のこと。中心へ至るもの、それがシフです。径不は道を開け、至府は中核を成す。そしてあの世が、この世に口を開ける」
「……それは――まさか」
「あの世は無の世界。無の世界と有の世界は境界を隔てているからこそ、背中合わせに存在しています。シフの開ける穴は、その境界を食い破ってしまう。シギョやそのほかのものが開ける、揺らげば消えてしまう小さなものとは違うのです」
「穴が、広がる性質を持っているんですか……」
「ご安心なさってください。わたくしの息子が、必ずその元凶を絶つはずです。しかし――まだまだ力不足の身。本当は認められた者にしか与えぬのですが、息子へこれをお渡し願いたいのです」
 愛宕は片目に手を当てた。
 人差し指と親指が、その眼窩へめり込んでいく。
「――っ!?」
 典太は驚いて腰を浮かした。
 対して涼しげな表情の愛宕は、ぐっと指を引き抜いて、ころりと目玉を取り出してしまう。
 義眼だったのだろうか。
 引いている典太へ片目を閉じ、愛宕は微笑みかける。
「ご心配なく。すぐまた生えます」
「生えますって……。これ、本物?」
「もちろん」
 いや……本物って。
 目玉を手渡された典太は、おそるおそるそれをつまみ、明かりにかざしてみた。
 綺麗な金色の瞳だった。
 こんなものを渡してどうするのだろう。
 しかも、息子がどこにいるのか聞いていない。
「あの……」
「疑問はすべて、帰るべき処へ戻れば解決しましょう。息子はすでに、あなたがたの屋敷で世話になっております」
「え……?」
 ずらっと屋敷の面々の顔を並べてみる。
 そのどれも、愛宕には似ても似つかないし、それに年齢が合いそうなのは小間使いの少年ひとりくらいのものだ。
 昨夜の愛宕の姿が脳裏に閃いた。
 その姿に、かろうじて似るのはひとり、いや一匹だけいる。
「まさか、でん――」
 そのまま言葉を続けることが出来ず、典太は絶句した。
 あでやかな美女は、朝日の中微笑を湛えている。


***


「ああっ、やあ、あは!」
 太く熱い肉の塊が小枝の中をつらぬき、引き抜いてはまた奥まで思う存分暴れまわっている。
 軽々しく、毎晩相手してやるなど言うんじゃなかった。
 小枝はそれから数日目にして早くも後悔していた。
 夜を重ねるごとに激しくなる紗由里の性欲は、もはや人のものとはいいがたく、今夜も夜半を回ってから交わり始めて、何度欲望を注ぎ込まれたか計り知れない。
「小枝、小枝っ……!」
 甘く蕩けた表情で、紗由里は強烈な矛を小枝の中へつき込んでいく。
 その腰がびくびくと震えた。
 紗由里は太ももをつかみ、背を反らして叫ぶ。
「また、また出ちゃう!」
「もう許して姉様――あたし、お腹の中いっぱいで」
「あああ、だめ、全部受け止めて!」
 熱い物が腹の中へ流し込まれてくる。
 受け止めようにもすでに小枝の膣はもちろん子宮も精液でいっぱいに満たされ、物理的に新たな奔流の流れ込むところはない。
 それでも子宮口にぎゅうっと押し付けられた紗由里の男根が、入り口をこじ開けるようにして中へ注ぎ込んでくる。
「やあああ……姉様の、孕んじゃう……」
 紗由里に精嚢はなく、出ているのはただの愛液と知っていても、そう言う錯覚を覚えてしまう。
 注がれた精液は古いものを押し出して子宮から溢れ、膣と男根の隙間を塗って秘められた貝の割れ目からどろどろと流れ出した。
「ああは! はあっ! はあぁ!」
 今度の射精はずいぶん長かった。
 どくどくと脈打つものがいつまでも子宮へ快楽の産物を吐き出し続けている。
 小枝は頭の中を真っ白に染めながら、それを受け入れるしかない。
 精液が流し込まれるたびに、小枝の理性が押し流されていってしまうようだった。
 紗由里は気が狂ったようにがくがくと首を前後に振りながら、射精を繰り返した。
「はあは! さ、小枝っ! おかしいの、止まらない!」
 悲鳴のような紗由里の声で、小枝はようやくその様子が尋常ではないことに気づいた。
 腰は相変わらず快楽を求めて小枝の中へつき込んでいるが、紗由里の上半身はそれを引き抜こうと努力しているようだった。
 そらした喉の向こうで口が空気を求めるようにぱくぱくと開き、紗由里は半分白目を剥いている。
「ね、姉様!?」
「ああああああああ」
 断末魔のような声をあげ、紗由里は気を失ってがくりと腕を垂らした。その間も男根は小枝の子宮へ射精をやめない。
「くうっ……」
 腰などもうとっくの昔に砕けてしまっているから、その責めから抜け出すのにも一苦労だった。
 なんとか体を離した小枝の目に、なおも白い塊を吐き続ける男根が映る。
「……一体どうしたんだ……」
 半腰のまま、紗由里は気を失っているのに、男根だけは別のもののように射精しているのだ。まともな光景ではない。
 いや――。
 小枝の脳裏にいやな考えが閃く。
 紗由里の男根は、そもそも別のものなのだ。
 ケイフと言ったか、それが作り出したものである。
 紗由里の性欲も、なにもかもケイフのせいと考えれば、この状況も納得がいく――。
「……典太、はやく戻ってくれ……」
 あの昼行灯の顔が、無性に恋しい。
 小枝には、姉をどうすることも出来ないのだ。
 ――がさっ
 背後で物音がして、小枝は振り向いた。
 小窓の隙間から、何かが入り込んできていた。
 白くぼんやり輝く、蛇のようなものだ。
 それは体をくねらせながら畳へ上がりこみ、鎌首をもたげた。
 その頭は牙のように四つに割れ、中心に真っ黒い穴があいている。
「――っ」
 急激に寒気が襲って、小枝は体を抱いた。
 これは危険なものと本能が教えるのだが、恐怖と混乱で思考が回らず、体が動かない。
 その不気味な白い蛇は小枝の横をうねうねと通り過ぎる。
 こいつだ。
 典太が大風の前に言っていた、不吉の正体。
 たしかに、わけもなく人間の心の底からの恐怖を引き出してくる。
 いや――それは純粋な恐怖とはいえないかもしれない。
 感じるのは虚無の気配。なにもない無。
 無への感情が、恐怖となって心を凍らせるのだ。
 なおも精液を吐く紗由里の手前で、四つ首の蛇はその体に飛び掛った。
 男根を四つの牙でくわえ込み、ばたばたと尻尾を振って飲み込んでいく。
 男根をくわえ込んで白い蛇は、そうやりながら急激に肌へ溶け合っていった。
「ああ……あああああ」
 低くうめく声が紗由里の口から上がり、ようやく小枝は我に返った。
「姉様! だいじょうぶか」
 立ち上がって紗由里の体を抱く。その瞬間、思わず手を離してしまった。
 冷たい。
 温度が『無い』。
 白目を剥いた紗由里が、びくん、と体を跳ねた。
 皮膚の下を這うように、何か筋のような物が全身を駆け巡っている。
 腹から胸、首筋、そして背中へと。
 小枝は震えて、うしろにしりもちをついてしまった。
「あああう!」
 絶叫を上げ、紗由里の体から何か蛸の足のようなものが飛び出す。
 皮膚の下の物が体を突き破ったのかと思ったが、そうではない。体から生えたのだ。男根と同じように、奇妙に蠢く長いむちのようなものが。
それはまるで烏賊や蛸の足を思わせる触手だった。
「はあっ! はあっ!」
 紗由里が息の塊を吐くたびに、触手は次々に体から伸びる。
 肩や腹、腕、背中まで。
 異物を生やした紗由里は、突如表情を取り戻して、小枝の方に首を向けた。
 にっこりとあでやかに微笑む。
「……続きをしましょ、小枝」
 びゅるっと触手が小枝に伸びる。
 完全に腰の抜けてしまった小枝は、逃げるどころではない。
 あっと言う間に手足を巻き取られ、大股を開いた上体で畳の上へ組み伏せられる。
「いやあ! たすけ――んぐっ」
 口の中へ触手がつきこまれ、声を封じられる。
 その触手は筋肉の塊のようで、しなやかでいながら固く、弾力を持っていた。噛み切ろうとしても柔軟に返され、まるで歯が立たない。
 のどの奥まで侵入され、小枝は体を硬直させた。
 口からのどまで、いっぱいに異物が占領している。目を見開いてその苦しみに耐える。
 触手が脈打ち、何か液体を小枝の食道から胃の中へ、直接流し込み始めた。
「んぐうう」
 小枝は体を振ってそれを拒否するが、手も足も腰さえ自由を奪われて、身悶えるくらいしか出来ない。
 腹の中へ得体の知れないものがどんどん溜まっていくのがわかる。
 恐怖が涙を流させた。
 流れ落ちる涙もしばらくのこと、徐々に小枝は、体が熱く火照ってくるのを感じる。
 触手がのどから引き抜かれ、口の中へその液体を塗りつけ始めた。
 甘い。
 淫靡な甘さのその液体は、舌の上で味わうと脳髄がじーんと痺れるようだった。
 小枝は口の中へ注がれたものを、いつのまにか夢中で嚥下していた。
 甘くて、頭が痺れて、なにも考えられなくなっていく。
 全身の力が抜けていく。
 触手の分泌が少なくなると、小枝はその先端の穴にくちびるを当てて、ちゅうちゅうと吸い出そうとまでした。
「もう……欲張りな子」
 艶然と紗由里は言い、もの欲しそうな小枝から触手を抜く。
 そのあごからのど、胸の間と指を滑らせ、腹の上で円を描き言った。
「この中にもたくさんあげたでしょう?」
「もっと……姉様もっとぉ……」
「ふふ。本当に気に入ったのね、私のいやらしい汁を。でもそろそろ、下の口にも欲しい頃じゃないかしら」
 その液体は強力な催淫の効果があるのだろう。
 小枝の火照った体は秘所をどうしようもなく疼かせ、滝のように蜜を垂れ流させていた。
 股の間に体を入れた紗由里が、両手に触手を握り、ちろりとその先を舐めた。
「欲しくないかしら? これが」
「ああ……欲しい……」
「どっちが欲しいの? 左手の細い方? 右手の太い方?」
「太いの、太いの欲しい――」
「私の手首くらいあるこれを? ふふ、やっぱり小枝は欲張りな子ね」
 紗由里が触手を離し、両手を使って秘所をぐっと左右に広げる。
 液体の効果で完全に弛緩してしまった筋肉は、お産のときのようにぱっくりと大きく穴をあけた。
「奥の奥まで丸見えよ。どろどろに濡れて、ひくついて――ああ、姉様哀しい。妹がこんな淫乱になってしまって……」
 手でめいっぱい秘部を広げたまま、触手がその手前に持ち上がる。
「お仕置きしなくちゃ。――えい」
 ――ずぶ。ずぶりっ
 肉ひだの中へしなやかな触手が潜り込む。そして一気に奥までをつらぬいた。
 弛緩した子宮の入り口をもつらぬき、その中へ入り込んで本当の奥までを異物が犯す。
「ひいううう!?」
 小枝は絶叫し、杭を打ち込まれたかのように背を直線に伸ばした。
 ぴんっと足指までを伸ばし、硬直する。
 子宮の壁をどんどんと叩いた触手は、子宮口をずるずると引き延ばしながら抜き出、また助走をつけて勢いよく奥までをつらぬく。
 そのたびに張り詰めた体をぴくぴくと反応させ、小枝は声もなく喘いだ。
 むちゃくちゃな犯され方をしているのに、感じるのは痛みではなく閃光を脳裏へ叩きつけられたような快楽だ。体の中をぐちゃぐちゃにされるほど、強い快楽が小枝を震わせる。
「あはっ。すごい。まだ入りそうよ」
 さらに膣を広げた紗由里が、半分ほどの大きさの触手をその隙間にねじ込んだ。
 めりめりと二本目が膣を広げていく。
 その隙間から間欠泉のように愛液が噴き出した。
 一本よりも二本の方がもっといい。
 小枝は我を忘れた叫びを放つ。
「もっと入れてぇ、もっとお!」
「うーん……じゃあもう一本だけ。それ以上いれたらほんとに裂けちゃうから」
「っああああああ!」
 三本目が隙間を縫って侵入した。
 一番太いものは子宮の中を乱暴に叩きながら出入りを繰り返し、あとの二本はそのまわりでぐるぐると円を描くようにのたうっている。
 その三本に犯されて、小枝は涙と涎を垂れ流しながら悦んだ。
「あうあああー! あおおー!」
 口からほとばしるのはけもののような絶叫だ。
 紗由里がにこやかに笑いながら、そんな妹を見下ろす。
「壊れちゃったね。でも、まだ小枝の体には入るところがあるのよー」
 つっと触手の下へ手を当てる。
 同じく弛緩しきった菊の穴へ、紗由里は指を入れた。
 新たな感覚にびくっと反応する小枝へ、あくまでおだやかに笑いながら言う。
「こっちには姉様の手をあげるね」
 そのまま指をまとめ、小枝の肛門へ手首まで突き入れた。
「――っ!」
 声も出せず小枝はまた硬直する。
 ずぶずぶと紗由里の腕は尻の中へ差し込まれていく。
 腕の半ばまでを尻に埋没させ、紗由里は触手と同じような律動をそこで開始した。
「あぐっ、がっ!」
 泡を飛ばし、腕の動きで加わった圧力を口から逃すように、小枝は空気の塊を吐いた。
「どう? 素敵でしょ?」
 質問の意味もわからず、ただうなずく。
 紗由里は触手と腕の動きをやめないまま、もう片手でいとおしげに小枝の頬を撫でた。
 触手が子宮を犯し、腕が尻をかきまわすたびに、がくがくと全身が痙攣している。
 あまりの快感が逆に理性の芽を覚まさせた。
 ようよう、うわごとのようにつぶやく。
「――こわい、姉様こわい……」
「心配しないで。その快楽に身を任せて。大事な妹ですもの、このままひとつになりましょ。――ほら、わかる? あなたと私、いま心も体もつながってるの」
「あああいやぁ……」
「見て小枝。あなたの快楽が流れ込んで、私の体に穴を広げていく……」
 そのぞっとする内容に、小枝は必死で紗由里の体へ視線を向ける。
 犯されながらも小枝は一瞬すべてを忘れた。
 紗由里の胸元には穴があいている。
 それは黒い穴ではない、白い闇を湛えて、静かにその面積を広げていた。
 いつか昔、紗由里を連れ戻すときに見た景色。
 それはあの世の情景だ。
 その白い闇は、あの世がそこへ口を開いていることを示している。
 小枝は恐怖やら絶望やらが入り混じって、泣き叫んだ。
「いやああ! 姉様ぁっ!」
「いっしょにひとつになりましょ。ねぇ、小枝……」
 闇が、白い闇が帷のように広がった。
 それに包み込まれ、飲み込まれながら、小枝の意識は急激に遠のいていった。
「典太……」
 うわごとのようにその口が男の名を呼び、声は飛沫のように消えていく。
其の五 愛宕の竜 二
 おかしい。
 典太はそのおかしいところを整理しようと、さっきから四苦八苦していた。
 まずはこの屋敷、深い山中にあるのに新築の建物のように何もかもが真新しい。ここまで獣道が続いていたのだ。これだけの調度、材木、彫刻の類をどこから調達したのか。
 屋敷の人間もそうだ。愛宕しか居ないのである。先ほど出された夕餉の膳運びからなにから、全部ひとりで行っており、他に人の気配はない。
 夕餉と言えば、出された料理もそうだった。この山の中で海の幸が出たのである。あちこち旅した典太は、それが鮮度の高いうちでないと食べられない品であるとか、そう言うことも知っている。変とかそう言う次元ではなく、純粋にこの山中ではありえないことだ。
「狐狸の類に化かされているのか……」
 結果、たどり着いた結論はそれだった。馬鹿らしいが、そうでも結論付けないといつまでも堂々巡りしてしまう。
「お待たせしました」
 障子が開き、ひざをついた愛宕が丁寧きわまる物腰で部屋へ入ってくる。
 先ほどまでのきっちりした和装から着替え、涼しげな浴衣姿だ。
 まとめ髪も結びなおしたのか、若干髪型が違っている。ぱらぱらと散らした後れ毛がうなじにからみあい、そこに漂う色気を存分に引き出していた。
 行灯ひとつがふたりを照らしている。ここは寝室に当てられた部屋で、すでに布団がひいてあった。なんだか初夜を迎える新婚みたいな様相だ。
 すっと身を寄せた愛宕が、典太の体にくっついてくる。浴衣に焚き染めた香の香りがかぐわしい。
 やっぱりそうきたか。ようやく予想が当たって、典太に少し余裕が生まれた。
「愛宕さん?」
「……夜伽(よとぎ)のお相手をいたします。このような年増ですが、お好きになさってくださいませ」
 年増だろうが年若だろうが、こんな美女を抱けるなら死んでもいい男はごまんといるだろう。
「あのー、申し訳ないですけど、僕には婚約者がですね」
「存じております。その方を救いたくてここを訪れたのでしょう?」
「……どうして、知ってるんです?」
 もう典太はむやみに驚かない。うつむいた愛宕は、しおらしく言った。
「お話しいたします。……始まりはあの方が偶然ここに辿りついたことからでした。わたくしはそのとき、すべての子供を世に送り出して、ひとりさびしくここへおりました」
 子持ちだったのか。しかも全員成人している?
 典太はまじまじと愛宕を見る。うつむいていてよく顔が見えないが、とてもそんな年には思えない。化粧で年を誤魔化すにしても風呂場でそれは無理だし、なによりあの肌の張りは本物だ。
 愛宕は続けた。
「普段ならそんなことはいたしませんが、なにぶんさびしくしておりました。肌のぬくもりが恋しく、わたくしはお泊めしたあの方のもとへ忍んでいったのです。――それはそれはすばらしい夜でした。生涯わすれることはかなわぬ、そんな風に愛し合いました」
「は、はあ」
「わたくしはあの方が望むまま、昼は妖物(あやかしもの)について知ることを教え、夜はその力強い腕に抱かれ、めくるめくような楽しい日々を過ごしました。しかしあるとき、急にいとしい人は姿を消したのです。理由も告げずに」
「ひどい人ですね」
「その通り。ひどい方です。あなたのお父様のことですよ」
「なっ――!?」
 絶句する。
 あの親父……こんなところで美人を手篭めにしていたのか!?
 驚きで典太はあんぐりと口を開けて、非難めいたまなざしを向ける愛宕を見つめ返していた。
 たしかに時期的にも、典太の知る父の性格的にも、愛宕の言うことは当てはまっている。なにより、典太がここにいるのは父が詳しい場所まで教えたからなのだ。
 その際、どういう訳か色々と嘘も教えたようだった。里だの、民謡など、全部嘘っぱちだ。まさか親父も、典太が実際訪れるとまでは思わなかったようである。
「あなたにはあの方の血が半分流れている。わたくしは半分だけでも、あの方を感じたい……。そこで、卑怯と思われるかもしれませんが、交換条件をつけさせていただきます」
「条件……?」
「婚約者を蝕むのはケイフの対となる、シフです。捨て置けば途方もない災厄となってしまうでしょう。わたくしにはそれを止め、救うことの出来る品があります。それを提供する条件として――あなたには、あの方と同じようにわたくしを愛してもらいたい。あの熱い夜とまでは言いません。あの方を想い起こさせるようにわたくしを抱いて欲しいのです」
「……わ、わかりました……」
 ようするに親父の代わりを務めろと言うことなのだ。
 胸中は複雑だったが、紗由里のためである。そう、もちろん愛宕を抱くのは紗由里のためであって、なにも誘惑されたからとかではないのだ。
 自分の心理をそう言う風に納得させて、典太は咳払いする。こちらもたしかめなくてはならない。
「妖物にお詳しいようですが、学者をされていたんですか?」
「学者ではありませんが、そのようなものを。そのためにわたくしはこの世に居るようなものなのです。あなたの力になら、必ず」
「信じます。……それじゃ、目を閉じて」
 典太の肩にしなだれかかった体を抱き、あごを持ち上げてくちびるを合わせる。
 なんとも甘い味がした。気のせいだろうが、まるで糖蜜のような味のするくちびるだ。
「んふ……」
 その甘さをもっと味わおうと、典太は舌を差し入れる。その感触に愛宕は軽く喘いだ。
 すぐに体を熱く火照らせはじめた愛宕は、典太の首筋に腕を巻いて、情熱的なくちづけを繰り返す。興奮が高まるにつれ、逆に典太の口の中へ舌を入れ始めた。
 愛宕の舌は人のよりもずいぶん長いようだった。典太の舌に巻き付くように動き回り、歯の裏や舌の裏、普通は届かないのどの方まで別の生き物のような動きで舐めまわす。
 さすがに年の功か、巧みだった。
 典太はその動きを受け入れるので精一杯で、翻弄され続ける。
 しばらくお互いの口内を愉しんだ後、ふたりは顔を離す。
 ずるっと典太の口から愛宕の舌が引き抜かれる。
 そのままだらりと、あごまで届きそうな舌を垂らしたまま、愛宕は艶やかに微笑んでいた。
 信じられないくらい色っぽい姿だ。
 先程までの清楚な和装の美女は去り、男の精を吸い尽くす悪女がそこには居た。
「……素敵。でも、まだまだですよ」
「ふ、っ……」
 背に手が回され、首筋から胸元へと舌が這っていく。
 乳首を吸われ、典太は喘いだ。
 一物はもう、爆発しそうなくらい反り上がって着物のすそをもちあげている。
 典太の乳首を舌先で転がしつつ、愛宕がそそり立った一物を着衣の上からさすった。
 それだけでびくびくと痙攣し、先走りの汁が注ぎ出るのがわかる。
 愛宕は胸へ吸い付いた顔はそのままに、器用に典太の下帯をはずし、着物の帯を解いた。
「……袖を」
 言われて典太は着物を脱ぎ捨て、全裸になる。愛宕が下半身へ顔を移動させた。
 なまめかしいうなじが欲望の象徴の上で立ち止まる。
 はぁっと吹きかけられた息に反応し、また典太の一物はびくりと反応した。
 じっと見ている様子に、典太は訊ねる。
「どうですか……?」
「たくましゅうございます。……お父様よりも」
 ちらりとこちらを見て、微笑んだ。典太はなんだかこそばゆい気持ちになる。
「それではご奉仕させていただきましょう」
 愛宕が耳の上の後れ毛をかき上げた。
 くっとその口が一物を飲み込んでいく。
 あたかかくやわらかく、そしてどこまでも心地よい口だった。
 典太は後ろに手をつき、美女が股間の上で奉仕する様を、じっくりと観察する。
 くちびるをいっぱいに開きながらもすぼめ、多少苦しげではあるものの一生懸命に一物を飲み込み、首を前後させる。後れ毛がまた顔にかかり、片手でそれを押さえつけた姿もひどく扇情的だ。
 年上の女に淫らな奉仕をさせている。そう言う興奮も覚える。
「いいです……気持ちいい――あっ」
 うっとりと言った典太は、突然加わった舌の動きに思わず喘いだ。
 愛宕の長い舌がねっとりとからみついて、まるで何重にもぐるぐる巻かれているような錯覚を覚える。活きのいい魚のように怒張の周りでその舌は踊り跳ね、ぐるりと巻きついては離れる。
 これが人間の舌だろうか。
 波打つように裏筋を何度も行き来したかと思えば、円を描くように怒張をもてあそんで、竿の部分に舌の根が当たっているはずなのに、雁首の裏の敏感ところをすぼめた舌先がくすぐっている。
 妙技は言うに及ばず、絶技とでも言うべき舌技だ。
「あっぐ!」
 竿の根元から先までを一気に舐められ、その瞬間に射精しそうになった典太は、とっさに愛宕の髪をつかんで動きを止めた。
 ゆっくりとくちびるを離した愛宕は、唾液の垂れる口元をぬぐいもせず、淫らな目を向ける。
「もう降参ですの?」
「は――はい」
「これは全部お父様が仕込んだこと。父には及ばずと言う事になりますよ」
「う……助平親父め……」
「うふふ。では一度搾って差し上げましょう。わたくし、こんなことも仕込まれましたのよ」
 艶然と言った愛宕が一物を口に含み、そのままぐーっと喉の奥まで飲み込んでいく。
 喉ぼとけに先端が当たり、それでもさらに奥の奥まで怒張を侵入させる。
「うわわわ」
 亀頭は食道に入り込み、ついに愛宕は立派な一物の根元までを口に収めてしまった。
 敏感な部分全体を呑まれる、いままで味わったことのない感触に典太は背筋を震わせる。
 ずるるるっと一物を引き抜いて口を離し、唾液にまみれたそれを愛しげにしごきながら、愛宕が感想を求めてくる。
「いかがです?」
「あわ、わかんなくらい、いいです……」
「ふふ。それでは、わたくしの喉の奥へ、注ぎ込んでくださいませ」
「ああ――や、やめて。ほんとに出ちゃいますって」
 また飲み込まれていく感触に、典太は情けない声をあげて天を仰いだ。
 まとめ髪の美女が、太くて長いものをありえない位置まで侵入させている。そんな倒錯的な感覚が欲望の源泉を刺激する。
 深く飲み込んでは引き抜き、口と喉の境目の締め付けで典太の一物は愛撫され、倒錯感がそれに加わって、射精を促していく。
 頭の中がきーんと鳴っているような快楽が、思考を奪い脳髄を沸騰させた。
「あ、で、出るっ!」
 射精感が限界まで達し、典太はのけ反った。
 ぐっと根元までを飲み込んだ愛宕の喉へ、脈打つ怒張が欲望の体液を流し入れる。
 どくどくと、それは奔流となって愛宕の体内を汚していく。
「ああ、あああ」
 信じられない。
 苦しかろうと思って典太は身を引こうとするのだが、尻に手を回しぴったりと顔と腰をくっつけた愛宕は、射精に暴れる怒張を根元まで含んだまま離そうとしない。
 いまこの瞬間、喉の奥では思うさま精液を飛ばし、怒張が荒れ狂っているのだ。
 美しい横顔をわずかにしかめただけで愛宕はそれを受け止め、体の中へ直接白濁したものを受け入れていく。
 それは目の前が明滅するような快楽を典太にもたらした。
「あう……あ」
 射精が終わるころには腰に力が抜け、典太はそのまま仰向けにぐったりと倒れる。
 途方もない快感だった。
 これを仕込んだと言うなら、親父の勝ちだ。
 ぼんやりした頭でそう思う。
 一物を喉から抜いた愛宕が、ちゅるっと音を立てて尿道に残った精液を吸い取った。
 魂を抜かれた蛇のように、ぱたりと暴れ馬は倒れ伏す。
「降参しますか? わたくし、まだ満足しておりませんのよ。これでは婚約者を救う品を与えるなど……」
「う……っく。とりあえず、僕の一敗は認めます……」
 いつの間にか勝負になっているらしい。
 浴衣の帯をはずし、徐々に裸体をさらしていく愛宕が、わざとらしく股の中心を開き気味にして座る。豊満な胸をこするようにして合わせ目を開き、その摩擦で揺れる乳房が行燈の光で障子に陰影を震わせた。
 今日は二回出したと言うのに、典太ははやくも立ち直ってく感覚があった。
 あんまり長い間溜め込んでいたせいだろうか。それよりは、愛宕の体をもっと味わいたいと言う率直な欲望が大きい。
 全裸になった愛宕は、力を取り戻しつつある一物をつっと指でなぞる。
「もうひと勝負、なさいますか?」
「是が非でも……」
 典太は体を起こす。
「うふ。楽しみ」
 そのあごに片手をかけ、愛宕は後ろざまに布団へ倒れこんだ。典太も手に引かれるようにその上へ折り重なる。
 また熱くくちびるを合わせているうちに、すっかり一物は固さを取り戻した。まだこの調子なら、二、三回できそうな勢いだ。
 負けられないぞ、と妙な敵愾心が沸く。
「じゃあ、いきますよ」
 典太は固さを戻したものの根元に手を添え、濡れて開く花弁へ先端を乗せた。
 熱い泉へ浸したかのようだ。愛宕の秘所はとめどなく溢れる蜜で潤みきっていた。
 まさに突き入れようとした瞬間、すっと横から手が伸びて、それを止められる。
「そちらもよろしいのですが……」
 一物をつかんだ手は、花弁からつつつと下へ先端を持っていく。
 そこには垂れた愛液で濡れる菊が咲いていた。
「こちらへくださいませ。これも、お父様に教えられた場所ですの」
「こ――こっちで?」
 はやくも典太は機先を制されている。
 にっこりうなずいた愛宕は、自らの秘所から蜜をすくい取り、水でもやるように一物へ振りかけ、ぬめりをよくしていく。
 典太は唾を飲み込んだ。
 さすがに尻の穴はやったことがない。しかしそこがどんな場所か興味がないわけではなかった。
 愛宕の指に導かれるまま、菊の門をとんとんと叩いてこじ開け、その中へ入り込んでいく。
「――あぁ……」
 亀頭を侵入させると、愛宕は熱い吐息を吐いて目を閉じた。
 尻で感じているのだ。
 ぞくぞくとしたものが典太の背から頭頂まで駆け上がる。
 ずぶ、と竿の半ばまで差し込み、愛宕の反応がさらに強まったのを確認すると、一気に突き入れた。
「ああっ!」
 まぎれもない快楽の喘ぎがあがる。
 腰を引き、突き動かすたびにそれは何度も繰り返された。
 尻で行為をしているのだ。
 こんなところ、本当は交合のための場所じゃないのに。
 愛宕はそんなところで感じている。
 興奮が高まって押さえきれない。尻を犯すたびにあがる嬌声が典太の脳を熱く焼いていく。
「こ――こんなところで、するの、変ですか?」
 喘ぎの合間に、愛宕が訊いてくる。
 典太は少し考え、わざと冷たく答えた。愛宕はなぶられるのを期待している。そう直感したのだ。
「変ですよ」
「あっう、――さ、蔑まないでくださいませ」
「いやです。だって、尻の穴ですよ」
「あああ……いやぁ……」
「尻の穴に太いのを入れられて、どうしてそんなによさそうにしてるんですか」
「あふ、よ、よくなんて……ああっ」
「嘘をついて」
「あうっ」
「いいんでしょう」
「……は、はい」
「愛宕さんは変態ですね」
「いやっ。違います」
「尻でよがるなんて、変態だ」
 ぎゅっと赤い筋がつくほど、乳房をわしづかみにする。
 びくっと反応した愛宕の尻がすぼまり、一物をきゅっと締め付けた。
 乳首をつねるようにひねりまわすと、やはりそのたび締め付けが強くなる。
 ようやく典太は弱点を見つけた。
 愛宕は被虐心の塊なのだ。すぐ泣いてしまう紗由里とは違う、責められれば責められるほど悦ぶ部類の人間なのだ。
「へ、変態なんかじゃありません――あはぁ!」
「へえ。じゃあなんですか、こっちの濡れ具合は?」
 乱暴に花弁を掻き分け、泉の中へ指を差し込む。愛宕の体はその刺激で軽く跳ねた。
「ち、違います。違うんです」
「じゃあどうしてなんです」
「――それは……」
「白状するまで、指で前も犯してあげましょう」
「ふっうううっ」
 差し込んだ指の薄皮一枚向こうに、尻に入れた一物が蠢いている。
 女性のふたつの穴がこんなに間近であることははじめて知った。がんばれば、膣の中からつかめそうな気さえする。
「あああ、ごめんなさい、ゆるして! わたくし、わたくし」
「じゃあ言ってごらんなさい。自分がどこで感じるか」
「尻です! 尻の穴で感じます!」
「変態ですね!」
 典太は腰の動きをさらに激しくする。ぱんぱんと肌がぶつかり合った。
 膣に突っ込んだ指を抜き、それで乳房をつかんで、乱暴にもみしだく。
「い、痛いっ」
「痛いのがいいんでしょ?」
「い――いいです、ああ、もっとぉ!」
「肌の音が鳴るほど尻を犯されて、感じるんですか」
「ああああ! 感じます、いいの、果てる!」
「果てちゃうんですか? 果てていいんですか? 僕、尻で果てるところ、じっくり見ちゃいますよ」
「いやあ! 見ないで、お尻で果てるところ見ないでぇっ! あああ―っ!」
 がくがくと足を痙攣させ、派手に愛宕は体をひねった。
 逃れようとするかの動きを典太は押さえつけ、とどめの一撃を突き入れる。
「はあぁ、あああ!」
 なりふり構わない喘ぎ声を放って、愛宕は絶頂へ達した。
 ぎゅうっと痛いくらい尻が締まり、痙攣を始める。
 同時に前の花弁から、ぷしゃっと勢いよく愛液が噴出した。
 それは痙攣して震える菊門の動きに合わせて、ぴゅっぴゅっと射精するように典太の腹へ吹き上がった。
「ああ……あ……出、出てしまい……ました……」
 呆然と天井を見つめながら、愛宕がつぶやく。
 快楽に思考が流された表情で、ときおり体全体をびくびくと振るわせている。
 典太はその体を抱きしめ、耳元でささやいた。
「今度は僕の勝ちです?」
「は……ふ……。ええ、もちろんです……」
「連戦といきましょう。僕、まだ果ててないんですから」
「あ――抜かずにもう一回なんて……。そんなにしたらわたくしは」
「もっとよがってください。こんなに綺麗でおしとやかな人が、尻に入れられて感じているなんて、ぞくぞくします」
「あ……」
 その言葉に、きゅっと敏感な締め付けがあった。
 典太はまだ相手が呼吸を整え終わる前に、律動を開始する。
「今度は僕が気持ちいいように、動きますから!」
「あ、は、ああ! 待って、わたくし、まだ」
「勝手に果ててしまうのが、いけないんです」
「そんな……はぁっ!」
 膣とは違った濃厚な締め付けをしてくる尻の中で、典太は一物を思う様動かし始める。
 包容力のある膣のひだに比べ、こちらは狭くてきつく、まさに犯している感じを味合わせてくれる。
「あああ、そんな、そんな」
 片手を額に当てた愛宕が、我を忘れて叫ぶ。
「もっと、欲しいんでしょう」
「欲し――欲しいですけど、ああ、このままじゃ――」
「感じて、ください!」
 しとどに濡れた秘所が、腰のぶつかるたびに蜜を溢れさせ、それが潤滑剤となって尻の中をより心地よい場所に変えていく。
 典太は愛宕の首筋に顔を伏せ、夢中で腰を振った。
 愛宕の手が頭を抱き、ぐっと力を込めてくる。
「ああ――また、また来てしまう! もう、だめ!」
 嬌声が高く上がった。
 その瞬間、手指の圧力が変化する。
 ぎりっと鋭い物が典太の頭を押さえつけ、やわらかな肌の首筋は、急激にざわざわと蠢いた。
「な――」
 思わず動きを止め、顔を離す。愛宕の手が目を覆った。
「み――見ないでください!」
 その手は人の形から離れていた。爪は猛禽のように伸びて、手のひらにはうろこのようなざらつきが這っている。
 こんな状態で見るなといわれても無理だ。典太は手首をつかんで目隠しをはずすと、息を呑んだ。
 愛宕の顔はこめかみからあごにかけて、うろこで覆われていた。それだけではない。首から肩口、胸の脇など、随所が深緑に光っている。
 耳の後ろからはにょっきりと角が二本生えていた。髪は黒から鱗と同じ深緑に染まり、まとまりがほどけて布団の上へばらりと散っている。
 反らした目は金色に薄く光って、猫のような縦の筋を刻んでいた。
「愛宕さん……」
「う……」
 金色の目からは涙がこぼれる。典太は呆然としたまま、無意識に手を伸ばしてそれを指ですくった。
「わたくしは人ではないのです。ご覧のように歪で不気味な姿。まだこれも本性ではございません」
 ぽろぽろと涙をこぼし、告白する。
 ならば何者なのか、と訊こうとして、典太は野暮だと思った。
 狐狸に化かされていると言うのは、半分くらい正解だったのだ。
 涙の流れた髪を、やさしく撫で付ける。
「どんな姿でも、愛宕さんは変わりませんよ。そんな姿でも変わらず美しいです」
 はっと息を呑む気配。
 恐る恐る、確かめるように言う。
「……本当ですか?」
「ええ。僕の婚約者の、次くらいに綺麗です」
「ふふ、ふっ」
 軽く笑ったそのまなじりを、また涙の塊がころげていく。
 微笑む典太の顔を鉤爪のついた両手ではさみ、
「やはり親子ですのね。お父様と同じことをおっしゃいます」
「……親父も?」
「はい。こんな姿のわたくしを綺麗だと。その言葉がどれほどうれしかったか。わたくしは人と交わらねば子を産めません。いままで幾人もの男がわたくしを抱き、そしてこの姿に恐怖して去りました。そのたびに深く深く、傷ついてきたのです」
 そしてふっと遠くを見つめた。
「あの方はそんなわたくしを受け入れてくれた。こっちの方が燃えるとまで言ってくださった。人ではないわたくしをそう言って抱いてくれた――」
 それは親父の趣味が常軌を逸しているだけの可能性があるが。
 しかし爪を生やそうが鱗を生やそうが、愛宕の人間の部分は間違いなく美しい。それは確かだ。
 親父も自分も、妖物と言うこの世ならぬものを扱ってきたおかげで、愛宕の変化にも驚きが少ないのかもしれない。典太は鱗の生えた額に口付けて言った。
「僕も今の愛宕さんを抱きたいな」
「……うれしいです。それでは、わたくしのこの体を使って存分に奉仕させていただきましょう」
 体の下から身を起こし、逆に典太を布団へ寝かせた愛宕は、その脇へ座ってつっと爪を胸板へ這わせた。
 その典太の下半身へしゅるりと何かが巻きついた。
 それは愛宕の腰から生えた蜥蜴のような長い尻尾だった。
「わ!」
 尻尾の先が器用に一物を巻き込んでいく。そこには鱗が生えておらず、ひやりとした肌の吸いつきが勃起を促した。まるで手のようにぎゅっと変幻自在な締め付けをしながら、竿を上下にこすり始める。
 まさか自分の男根が尻尾でしごかれるなんて、想像したこともなかった。
 典太は喘ぐ。
「す、すご……い」
「お気に召されました?」
 尻尾の先へ唾液を垂らし、潤滑を与えながら愛宕は微笑む。また、目は欲情に熱く蕩け始めていた。
「わたくしの尻尾、気持ちいいですか?」
「いいです、すごい、た、たまりません……」
「ああ……もっと褒めてくださいませ。わたくしの歪な部分、嫌われつづけたところを……」
「あ――愛宕さんの、体に、歪なところなんか……あうっ」
「……そこまでおっしゃってくださるなんて」
 てろっと愛宕は舌を吐く。
 舌先がふたつに割れたその舌は、長く長く伸びて、上空から典太の亀頭をちろちろ舐めた。
「ふぎは、ほのようにひたします」
 舌を出してしゃべれない愛宕はもごもごと言い、尻尾を解放して、代わりにその長い舌を巻きつけ始めた。
「うわわっ」
 驚きの連続だ。
 屹立した一物の根元から先までを蔦のように巻いて覆い尽くし、舌はきゅっと締まる。
 割れた舌先が溝の辺りを刺激しながら、今度は舌で上下に竿がこすられた。
 じゅるっと熱い舌が唾液を滴らせつつ、血管の浮き出たたくましいものを淫靡な拘束具のように締め付ける。
「あ、もう、なにがなんだか」
 包み込まれているのは一物だけなのに、体中を舌が這っているような錯覚を覚える。背筋なんか鳥肌が立ちっぱなしだった。射精感がどんどん高まっていく。
「んふ。ひもちいいれふ?」
「気持ち、いい……! ああ、で、出そう」
「らひて」
 愛宕はなおさら熱心に舌の愛撫を繰り返す。
 巻き込んだ舌をぐっと上に引き寄せると、典太の一物の周りをぐるぐると回転しながら舌が登り、また根元まで上から巻きついていく。その動きのたびに典太は後頭部を布団に押し付け、強烈な快感に喘いだ。
「くうっ、出る!」
 びくびくと怒張が射精の合図を始めると、愛宕は舌ごと一物を飲み込んだ。
 その口の中で全体を愛撫されつつ、典太は射精する。
 閃光がまたたいたように目の前がはじけ、あとはただ快楽の流れるままに任せ、愛宕の口へと放った。
 びゅるびゅるとそれは続き、流し込まれたものを愛宕は残さず飲み干していく。
 熱い奔流がひと段落し、一物が痙攣しながら精液の残滓を吐き出すようになると、今度は亀頭をちゅうと吸って最後の一滴まで搾り取り始めた。
 その刺激に背を反らし、典太は全部を出し尽くす。
「はぁ……あ……」
 もうだめだ。
 脳髄がじんじんとして、思考もうまくまわらない。快楽と言う快楽を全部放ちきってしまった。
 典太が放心していると、その胸の上を跨いだ愛宕が、自らの手で陰唇をくぱっと開いた。
 とろりと透明な液を溢れさせるそこを呆然と見ていると、その花弁が口元へぐっと押し付けられる。
「んぐ……」
「お舐めくださいませ。わたくしの蜜には精力の源が含まれております」
 典太は舌をその中へ差し込み、えぐるようにすくって蜜を口へ運んだ。
 甘い。
 人間のものとは成分が違うのだろう。
 味わえば味わうほど、頭の奥がどんどんしびれてくる感覚がある。
 夢中になって舐め取っていると、鱗の生えた太ももがぎゅっと典太の顔をはさんだ。
「そ、そんなにすると感じてしまいます……」
「んん……もっと」
「ああ……しようのないお方」
 股を開き気味にし、奥まで舐められるように体勢を変える。
 尻尾はまた典太の下半身へ伸び、立ち上がりつつある一物をこすり始めた。
 不思議なくらいまた欲望が沸き起こってくる。
 まるで今日初めて一物を触られたかのように、先程果てたはずのものは元気よく屹立していった。すぐにぴんっとそそりあがったものは、三度もその中身を吐き出したとは思えぬ固さだ。
 それを尻尾でしごきつつ、愛宕はあでやかに目を細くする。
「どうです? こうやって一晩、二晩続けて交わることも出来るんですよ。体力も精力も、蜜を舐めれば無尽蔵に沸いてきます」
「う……それは魅惑的な……」
「うふふ。お望みになるなら――わたくし、夜明けまであなたの上で腰を振ってもよろしいのですよ? 何度も、何度もわたくしの中で果てながら、どこまでも続く快楽を……」
 それはまさしく至上の悦楽だろう。
 沸きあがる欲望のまま、いくらでも絶世の美女の中へ放ち続けられるのだ。
 ぼんやりした頭でその悦びを想像し、それから典太は一生懸命打ち消した。
 自分には帰るところがある。
 なにをしにきたのか、見失ってはいけない。
 わずかに理性が勝った。
「ぼ、僕は……」
 すっと典太の上から股を離し、愛宕は爪の先でくちびるを押さえた。
 金色の猫目が笑っている。
「言わないで。今夜はわたくしの恋人です。……では一度だけ、心を込めて……」
 尻尾で一物の位置を調整しながら、愛宕はその上に股を下ろしていく。
 典太に舐め尽くされた蜜は早くも泉を潤し、その中へ浸しこまれていく一物は、熱泉に差し込まれたかのように熱く蕩かされる。
「うっ……う……は」
 小さく声をあげて、愛宕は根元までを受け入れた。
 腰を上げ、また下ろす。自分自身の動きで愛宕は感じ、喘ぎ声を深くしていく。
 腰が上下するたびに、ばたんばたんと尻尾が布団を叩いた。
 典太は手元に転がってきた尻尾の先をつかむ。
「あっ」
 びくっと体を反応させ、愛宕は動きを止めた。
 尻尾をつかんだ瞬間に膣の中がきゅっと締まったのだ。典太はしばし考え、その先端をしごいてみる。
「あう……あ、あ」
 吐息の熱さが増した。
 明らかにここで感じている。
典太はしごく動作を続けながら言った。
「尻尾が感じるんですね」
「は……はい。とても敏感な場所です……」
「体のほかの部分で言うと、どこくらい?」
「尻尾の先の方は……ち、乳房の先と同じくらいに……」
「じゃあこれは、乳首なんですね」
 緑色の先端を口元へ持っていき、そのまま口へ含む。
 ちゅうちゅうと吸うと、愛宕は背を反らして喘いだ。
「ああ! そ、そんな……」
「親父はこんなことしました?」
 ぶんぶんと首を横に振る。
「そこが弱いことも、お気づきになられませんでした……」
「じゃあここを開発するのは、僕の役目ですね」
 典太はまた先端を口に入れ、舐めまわす。尻尾の先はかなり細くなっていて人差し指くらいの太さ。くねくねとよく動き、たまに典太の舌とからみあった。
「あうう……」
 愛宕が快楽を深めるたび、その体はざわざわと蠢いて、けものの度合いを深めていくようだった。
 このまま完全なけものと交わることになっても構いはしない。典太は責めの手を緩めず、やわらかな胸をつかんだ。
「腰の動きがお留守ですよ」
「も、申し訳ありません……」
「ね、愛宕さん」
 そのとき思いついて、典太はささやいた。
「僕の口よりいい場所があるでしょ」
 尻尾の先をその付け根付近へ持っていく。
 典太との結合部、その上の場所。
 ひっそりと息づく愛宕の菊門へ、緑の先端を当てる。
 びくりとその体が震えた。
「あ……いや……」
「どうして? 大好きなお尻の穴ですよ」
「は……でも、わたくし、自分でもそんなこと……」
「親父には色々開発されたのに、僕のはいやなんですか?」
「そ、そんなことございません」
「じゃあ入れて。愛宕さんのもっと淫らなところを見たいんです」
「わかり……ました……」
 愛宕は自分で尻尾を動かし、そのよく締まった筋肉質な先端で菊門をこねるようにほじって、内部へ侵入させていく。
 とたんに上半身は過激に反応して、どさりと典太の上へ倒れてきた。
「もっと。もっと奥まで」
 尻尾を押して、さらに中へ入れさせる。
 びくびくと震えながら、典太に抱きついた愛宕はその指示に従った。夢中で立てた爪が肩に筋を付ける。
 鱗の並びだす手前、典太の一物と同じくらいの深さまで尻尾は挿入された。
 典太は押し付けられた頭を撫でる。
「どうです?」
「こんな……こんなっ」
「いいんでしょ」
「はいっ……自分の体に、こんな愛し方があると……は、初めて知りました」
「僕もすごくいいんですよ。膣の中の男根が、薄皮一枚向こうで尻尾に押さえつけられてる……」
「ああ……わ、わたくし」
「僕が動きますから、そのままで。尻尾で自分を慰めてなさい」
「はい……ああ!」
 下から腰を突き上げる。がばっと顔を上げ、愛宕は快楽によって流れた汗を飛ばした。
 膣のひだはその向こうの圧迫でいよいよきつい。
 愛宕も尻尾を尻の穴へ出し入れしているようだった。すぐ向こう側をずるずると這っているものが感じられる。
 典太は鱗だらけの肩を下から抱きしめ、勢いよく腰を振り上げた。
 ぱんぱんと肉のぶつかり合う音が響く。
 障子に映ったふたりの影は、淫らに溶け合っていた。
「あああ、あああああ」
 声帯が変化し始めているのか、くぐもった声で愛宕は喘ぐ。
 耳の後ろの角は長く伸びて、まるで鹿の角のようだった。
 足と手はもう全体が鱗に覆われて、典太の肌にざらざらと当たり、痛いくらいだ。
 そんな異形を抱いているのに、典太に恐怖心は沸かなかった。
 むしろどんどん本性をさらしていく愛宕が愛しく感じる。
 典太は責めの調子を上げていく。
「もっと、見せて、ください! 愛宕さんの姿」
「だめ、だめですっ! ああー! こんなの、だめ」
「お尻に突っ込んだ尻尾で、僕を、感じますか!」
「はい、太くたくましいものが、わたくしの、中をつらぬいていく様子が、ああん! ああ!」
 愛宕は忘我に達しつつある。
 典太ももう少しで絶頂を迎えそうな気配を感じていた。
 肩から背中へ手を回し、豊かな乳房を胸板でつぶすように抱きしめる。
 背筋に沿ってひれのような三角の突起が並んでいるのがわかった。
 愛宕は一体何者なのか。
 ふとそんな想いが沸くが、すぐに快楽の奔流が瑣末な思考を押し流していく。
 いつの間にか愛宕も自分から腰を動かしていた。
 典太が突き上げる瞬間に合わせ、腰を下げる。そうすることでより深くに典太を感じようとしている。
 溢れた蜜ははずかしげもなくあたりへ撒き散らされ、お互いの陰毛をしとどに濡らすどころか布団までも染め上げていた。
「はあっ! ああっ! はうん! ううあああ!」
 一段と叫び声が高くなって、典太は愛宕の絶頂が間際であることを悟った。
 自分も腰の動きを速め、快楽を加速させる。
「出しますよ、このまま!」
「こ――子の宮に、くださいませ! はああああっ!」
 典太に抱きしめられたまま、愛宕の体が反り返る。
 膣圧が痛いくらいに高まり、一物の根元からしごきたてるように蠕動する。
 それに導かれるように典太は放った。
 愛宕の膣は食物を嚥下するように、放たれた精液を子宮へと運んでいく。
 同時に尻尾が菊門から飛び出すように引き抜かれ、それは大きく布団を叩いた。
 典太の体を抱こうとした愛宕は、最後の理性を振り絞ったか肌に爪を立てることは避け、布団をつかむ。鉤爪は生地を引き裂き、中の綿を散らせる。
「あああああ!」
 なにもかも忘れたかのような絶叫を上げ、愛宕は背を反らしたまま何度も痙攣した。
 その痙攣に合わせて、典太も快楽の塊を放ちきる。
 子種がたっぷりと子宮へ与えられたことを感じ、愛宕はひくひくと最後に体を震わせると、がっくりと倒れこんだ。
「はぁ……はぁ……」
 荒い息をつきながら、典太はのしかかってきた愛宕の体から這い出す。
 背中や肩がひりひりと痛んだ。無我夢中で引っかかれた場所が血をにじませている。愛宕と交わるのも命がけだと、ひとり苦笑する。
 布団に座って呼吸を整えながら、気を失ったように伸びている体を観察した。
 頭には立派な角。髪は小麦色に変化し、背から見ると緑一色の体に散っている。
 背筋には三角の突起が並び、それはずっと尻尾まで続いていた。
 尻はもう尻尾とほぼ融合し、境目がよくわからない。
 てのひらや足の裏も大きさを変え、しかも間接の位置が変化しているようだった。鳥のように親指が手首の位置にある。爪先立ちで歩くけものの特徴だ。
 そんな姿を眺めていて、想い起こすのはひとつしかなかった。
「竜か……」
 そんな話を聞いたこともある気がする。
 竜母神は人と交わり子を成すと。
「あ……」
 思い切り、典太は中に注ぎ込んでしまっていた。
 だいじょうぶだろうか。
 しかし妊娠してもまあ、責任を取れとは言うまい。
 なんだかひどく眠い。
 すべてが気だるくなって、典太は愛宕のとなりへ横になった。
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