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其の五 愛宕の竜 三
 目が覚めると朝になっていた。
 部屋に愛宕の姿はない。
 昨夜はあれだけ乱れたのに、部屋の中は整然としていて、引き裂かれたはずの布団の破れもなかった。
 体の傷も消えている。
 愛宕のあの姿も、なにもかも夢だったんだろうか。
 ぼうっと座り込んでいると、廊下を足音が進んで障子に人影が映った。
 すっとひざをついて障子を開けたのは、清楚な和装に身を固めた愛宕だった。
 目元のほくろも、結い上げられた髪も、最初に会ったそのときと変わらない。
 耳に心地よい声が朝の挨拶を告げ、笑顔を向ける。
「よくお眠りになられましたか?」
「あ、おかげさまで……」
「朝餉をお持ちしました」
 旨そうな膳を運んでくる。白米に味噌汁が湯気を立てていた。
 早速味噌汁をすすり、典太は言う。
「すいません、なんか。いたれりつくせりで……。こっちはなにもお礼できないのに」
「いいえ。礼ならいただきました」
 愛宕は下腹を押さえ、にっこりと微笑む。
 その意味するところを知って、典太は味噌汁を噴出しかけた。
「あああ、まさか」
「うふふ。ご安心なさって。子を成す確立など万にひとつ。わたくしが孕むには、人と一万回は交合せねばならぬのです」
「ああ……そりゃ、たいへんですね……」
 気の遠い話だ。たしかにそれなら、一晩でも二晩でも交わり続けなければならないはずである。
 すっと体を寄せて、愛宕が流し目を作った。
「でもあなたとなら、子をもうけとうございます。いつまで居てくださってもよろしいのですよ」
「それはありがたい申し出ですが……そうですね」
 典太は白米を喉へ流し込み、箸をおいて合掌する。
 それから愛宕へ目を向けた。
「その役目は僕じゃなく、親父に譲りましょう。あの風来坊はそろそろ腰を落ち着けるべきだと思うんです」
「ほ、本当ですか?」
「今度親父に会ったら、縛ってでもここへ連れてきますよ。そのためにも、僕はもう戻らないといけません」
「約束してくださいね。きっと……」
「ええ」
 典太はうなずいた。
 ほうっとため息を吐いた愛宕は、体を離して正座する。
「それではお約束どおり、婚約者を救う手立てをお教えしましょう」
 本題へ入ったことを察し、典太もいずまいを正す。
愛宕は続けた。
「シフはケイフのつがいになるもの。シは至る、フは府庁の字を当てます。この意味はお分かりになりますか」
「……いえ」
「府はものごとの中心のこと。中心へ至るもの、それがシフです。径不は道を開け、至府は中核を成す。そしてあの世が、この世に口を開ける」
「……それは――まさか」
「あの世は無の世界。無の世界と有の世界は境界を隔てているからこそ、背中合わせに存在しています。シフの開ける穴は、その境界を食い破ってしまう。シギョやそのほかのものが開ける、揺らげば消えてしまう小さなものとは違うのです」
「穴が、広がる性質を持っているんですか……」
「ご安心なさってください。わたくしの息子が、必ずその元凶を絶つはずです。しかし――まだまだ力不足の身。本当は認められた者にしか与えぬのですが、息子へこれをお渡し願いたいのです」
 愛宕は片目に手を当てた。
 人差し指と親指が、その眼窩へめり込んでいく。
「――っ!?」
 典太は驚いて腰を浮かした。
 対して涼しげな表情の愛宕は、ぐっと指を引き抜いて、ころりと目玉を取り出してしまう。
 義眼だったのだろうか。
 引いている典太へ片目を閉じ、愛宕は微笑みかける。
「ご心配なく。すぐまた生えます」
「生えますって……。これ、本物?」
「もちろん」
 いや……本物って。
 目玉を手渡された典太は、おそるおそるそれをつまみ、明かりにかざしてみた。
 綺麗な金色の瞳だった。
 こんなものを渡してどうするのだろう。
 しかも、息子がどこにいるのか聞いていない。
「あの……」
「疑問はすべて、帰るべき処へ戻れば解決しましょう。息子はすでに、あなたがたの屋敷で世話になっております」
「え……?」
 ずらっと屋敷の面々の顔を並べてみる。
 そのどれも、愛宕には似ても似つかないし、それに年齢が合いそうなのは小間使いの少年ひとりくらいのものだ。
 昨夜の愛宕の姿が脳裏に閃いた。
 その姿に、かろうじて似るのはひとり、いや一匹だけいる。
「まさか、でん――」
 そのまま言葉を続けることが出来ず、典太は絶句した。
 あでやかな美女は、朝日の中微笑を湛えている。


***


「ああっ、やあ、あは!」
 太く熱い肉の塊が小枝の中をつらぬき、引き抜いてはまた奥まで思う存分暴れまわっている。
 軽々しく、毎晩相手してやるなど言うんじゃなかった。
 小枝はそれから数日目にして早くも後悔していた。
 夜を重ねるごとに激しくなる紗由里の性欲は、もはや人のものとはいいがたく、今夜も夜半を回ってから交わり始めて、何度欲望を注ぎ込まれたか計り知れない。
「小枝、小枝っ……!」
 甘く蕩けた表情で、紗由里は強烈な矛を小枝の中へつき込んでいく。
 その腰がびくびくと震えた。
 紗由里は太ももをつかみ、背を反らして叫ぶ。
「また、また出ちゃう!」
「もう許して姉様――あたし、お腹の中いっぱいで」
「あああ、だめ、全部受け止めて!」
 熱い物が腹の中へ流し込まれてくる。
 受け止めようにもすでに小枝の膣はもちろん子宮も精液でいっぱいに満たされ、物理的に新たな奔流の流れ込むところはない。
 それでも子宮口にぎゅうっと押し付けられた紗由里の男根が、入り口をこじ開けるようにして中へ注ぎ込んでくる。
「やあああ……姉様の、孕んじゃう……」
 紗由里に精嚢はなく、出ているのはただの愛液と知っていても、そう言う錯覚を覚えてしまう。
 注がれた精液は古いものを押し出して子宮から溢れ、膣と男根の隙間を塗って秘められた貝の割れ目からどろどろと流れ出した。
「ああは! はあっ! はあぁ!」
 今度の射精はずいぶん長かった。
 どくどくと脈打つものがいつまでも子宮へ快楽の産物を吐き出し続けている。
 小枝は頭の中を真っ白に染めながら、それを受け入れるしかない。
 精液が流し込まれるたびに、小枝の理性が押し流されていってしまうようだった。
 紗由里は気が狂ったようにがくがくと首を前後に振りながら、射精を繰り返した。
「はあは! さ、小枝っ! おかしいの、止まらない!」
 悲鳴のような紗由里の声で、小枝はようやくその様子が尋常ではないことに気づいた。
 腰は相変わらず快楽を求めて小枝の中へつき込んでいるが、紗由里の上半身はそれを引き抜こうと努力しているようだった。
 そらした喉の向こうで口が空気を求めるようにぱくぱくと開き、紗由里は半分白目を剥いている。
「ね、姉様!?」
「ああああああああ」
 断末魔のような声をあげ、紗由里は気を失ってがくりと腕を垂らした。その間も男根は小枝の子宮へ射精をやめない。
「くうっ……」
 腰などもうとっくの昔に砕けてしまっているから、その責めから抜け出すのにも一苦労だった。
 なんとか体を離した小枝の目に、なおも白い塊を吐き続ける男根が映る。
「……一体どうしたんだ……」
 半腰のまま、紗由里は気を失っているのに、男根だけは別のもののように射精しているのだ。まともな光景ではない。
 いや――。
 小枝の脳裏にいやな考えが閃く。
 紗由里の男根は、そもそも別のものなのだ。
 ケイフと言ったか、それが作り出したものである。
 紗由里の性欲も、なにもかもケイフのせいと考えれば、この状況も納得がいく――。
「……典太、はやく戻ってくれ……」
 あの昼行灯の顔が、無性に恋しい。
 小枝には、姉をどうすることも出来ないのだ。
 ――がさっ
 背後で物音がして、小枝は振り向いた。
 小窓の隙間から、何かが入り込んできていた。
 白くぼんやり輝く、蛇のようなものだ。
 それは体をくねらせながら畳へ上がりこみ、鎌首をもたげた。
 その頭は牙のように四つに割れ、中心に真っ黒い穴があいている。
「――っ」
 急激に寒気が襲って、小枝は体を抱いた。
 これは危険なものと本能が教えるのだが、恐怖と混乱で思考が回らず、体が動かない。
 その不気味な白い蛇は小枝の横をうねうねと通り過ぎる。
 こいつだ。
 典太が大風の前に言っていた、不吉の正体。
 たしかに、わけもなく人間の心の底からの恐怖を引き出してくる。
 いや――それは純粋な恐怖とはいえないかもしれない。
 感じるのは虚無の気配。なにもない無。
 無への感情が、恐怖となって心を凍らせるのだ。
 なおも精液を吐く紗由里の手前で、四つ首の蛇はその体に飛び掛った。
 男根を四つの牙でくわえ込み、ばたばたと尻尾を振って飲み込んでいく。
 男根をくわえ込んで白い蛇は、そうやりながら急激に肌へ溶け合っていった。
「ああ……あああああ」
 低くうめく声が紗由里の口から上がり、ようやく小枝は我に返った。
「姉様! だいじょうぶか」
 立ち上がって紗由里の体を抱く。その瞬間、思わず手を離してしまった。
 冷たい。
 温度が『無い』。
 白目を剥いた紗由里が、びくん、と体を跳ねた。
 皮膚の下を這うように、何か筋のような物が全身を駆け巡っている。
 腹から胸、首筋、そして背中へと。
 小枝は震えて、うしろにしりもちをついてしまった。
「あああう!」
 絶叫を上げ、紗由里の体から何か蛸の足のようなものが飛び出す。
 皮膚の下の物が体を突き破ったのかと思ったが、そうではない。体から生えたのだ。男根と同じように、奇妙に蠢く長いむちのようなものが。
それはまるで烏賊や蛸の足を思わせる触手だった。
「はあっ! はあっ!」
 紗由里が息の塊を吐くたびに、触手は次々に体から伸びる。
 肩や腹、腕、背中まで。
 異物を生やした紗由里は、突如表情を取り戻して、小枝の方に首を向けた。
 にっこりとあでやかに微笑む。
「……続きをしましょ、小枝」
 びゅるっと触手が小枝に伸びる。
 完全に腰の抜けてしまった小枝は、逃げるどころではない。
 あっと言う間に手足を巻き取られ、大股を開いた上体で畳の上へ組み伏せられる。
「いやあ! たすけ――んぐっ」
 口の中へ触手がつきこまれ、声を封じられる。
 その触手は筋肉の塊のようで、しなやかでいながら固く、弾力を持っていた。噛み切ろうとしても柔軟に返され、まるで歯が立たない。
 のどの奥まで侵入され、小枝は体を硬直させた。
 口からのどまで、いっぱいに異物が占領している。目を見開いてその苦しみに耐える。
 触手が脈打ち、何か液体を小枝の食道から胃の中へ、直接流し込み始めた。
「んぐうう」
 小枝は体を振ってそれを拒否するが、手も足も腰さえ自由を奪われて、身悶えるくらいしか出来ない。
 腹の中へ得体の知れないものがどんどん溜まっていくのがわかる。
 恐怖が涙を流させた。
 流れ落ちる涙もしばらくのこと、徐々に小枝は、体が熱く火照ってくるのを感じる。
 触手がのどから引き抜かれ、口の中へその液体を塗りつけ始めた。
 甘い。
 淫靡な甘さのその液体は、舌の上で味わうと脳髄がじーんと痺れるようだった。
 小枝は口の中へ注がれたものを、いつのまにか夢中で嚥下していた。
 甘くて、頭が痺れて、なにも考えられなくなっていく。
 全身の力が抜けていく。
 触手の分泌が少なくなると、小枝はその先端の穴にくちびるを当てて、ちゅうちゅうと吸い出そうとまでした。
「もう……欲張りな子」
 艶然と紗由里は言い、もの欲しそうな小枝から触手を抜く。
 そのあごからのど、胸の間と指を滑らせ、腹の上で円を描き言った。
「この中にもたくさんあげたでしょう?」
「もっと……姉様もっとぉ……」
「ふふ。本当に気に入ったのね、私のいやらしい汁を。でもそろそろ、下の口にも欲しい頃じゃないかしら」
 その液体は強力な催淫の効果があるのだろう。
 小枝の火照った体は秘所をどうしようもなく疼かせ、滝のように蜜を垂れ流させていた。
 股の間に体を入れた紗由里が、両手に触手を握り、ちろりとその先を舐めた。
「欲しくないかしら? これが」
「ああ……欲しい……」
「どっちが欲しいの? 左手の細い方? 右手の太い方?」
「太いの、太いの欲しい――」
「私の手首くらいあるこれを? ふふ、やっぱり小枝は欲張りな子ね」
 紗由里が触手を離し、両手を使って秘所をぐっと左右に広げる。
 液体の効果で完全に弛緩してしまった筋肉は、お産のときのようにぱっくりと大きく穴をあけた。
「奥の奥まで丸見えよ。どろどろに濡れて、ひくついて――ああ、姉様哀しい。妹がこんな淫乱になってしまって……」
 手でめいっぱい秘部を広げたまま、触手がその手前に持ち上がる。
「お仕置きしなくちゃ。――えい」
 ――ずぶ。ずぶりっ
 肉ひだの中へしなやかな触手が潜り込む。そして一気に奥までをつらぬいた。
 弛緩した子宮の入り口をもつらぬき、その中へ入り込んで本当の奥までを異物が犯す。
「ひいううう!?」
 小枝は絶叫し、杭を打ち込まれたかのように背を直線に伸ばした。
 ぴんっと足指までを伸ばし、硬直する。
 子宮の壁をどんどんと叩いた触手は、子宮口をずるずると引き延ばしながら抜き出、また助走をつけて勢いよく奥までをつらぬく。
 そのたびに張り詰めた体をぴくぴくと反応させ、小枝は声もなく喘いだ。
 むちゃくちゃな犯され方をしているのに、感じるのは痛みではなく閃光を脳裏へ叩きつけられたような快楽だ。体の中をぐちゃぐちゃにされるほど、強い快楽が小枝を震わせる。
「あはっ。すごい。まだ入りそうよ」
 さらに膣を広げた紗由里が、半分ほどの大きさの触手をその隙間にねじ込んだ。
 めりめりと二本目が膣を広げていく。
 その隙間から間欠泉のように愛液が噴き出した。
 一本よりも二本の方がもっといい。
 小枝は我を忘れた叫びを放つ。
「もっと入れてぇ、もっとお!」
「うーん……じゃあもう一本だけ。それ以上いれたらほんとに裂けちゃうから」
「っああああああ!」
 三本目が隙間を縫って侵入した。
 一番太いものは子宮の中を乱暴に叩きながら出入りを繰り返し、あとの二本はそのまわりでぐるぐると円を描くようにのたうっている。
 その三本に犯されて、小枝は涙と涎を垂れ流しながら悦んだ。
「あうあああー! あおおー!」
 口からほとばしるのはけもののような絶叫だ。
 紗由里がにこやかに笑いながら、そんな妹を見下ろす。
「壊れちゃったね。でも、まだ小枝の体には入るところがあるのよー」
 つっと触手の下へ手を当てる。
 同じく弛緩しきった菊の穴へ、紗由里は指を入れた。
 新たな感覚にびくっと反応する小枝へ、あくまでおだやかに笑いながら言う。
「こっちには姉様の手をあげるね」
 そのまま指をまとめ、小枝の肛門へ手首まで突き入れた。
「――っ!」
 声も出せず小枝はまた硬直する。
 ずぶずぶと紗由里の腕は尻の中へ差し込まれていく。
 腕の半ばまでを尻に埋没させ、紗由里は触手と同じような律動をそこで開始した。
「あぐっ、がっ!」
 泡を飛ばし、腕の動きで加わった圧力を口から逃すように、小枝は空気の塊を吐いた。
「どう? 素敵でしょ?」
 質問の意味もわからず、ただうなずく。
 紗由里は触手と腕の動きをやめないまま、もう片手でいとおしげに小枝の頬を撫でた。
 触手が子宮を犯し、腕が尻をかきまわすたびに、がくがくと全身が痙攣している。
 あまりの快感が逆に理性の芽を覚まさせた。
 ようよう、うわごとのようにつぶやく。
「――こわい、姉様こわい……」
「心配しないで。その快楽に身を任せて。大事な妹ですもの、このままひとつになりましょ。――ほら、わかる? あなたと私、いま心も体もつながってるの」
「あああいやぁ……」
「見て小枝。あなたの快楽が流れ込んで、私の体に穴を広げていく……」
 そのぞっとする内容に、小枝は必死で紗由里の体へ視線を向ける。
 犯されながらも小枝は一瞬すべてを忘れた。
 紗由里の胸元には穴があいている。
 それは黒い穴ではない、白い闇を湛えて、静かにその面積を広げていた。
 いつか昔、紗由里を連れ戻すときに見た景色。
 それはあの世の情景だ。
 その白い闇は、あの世がそこへ口を開いていることを示している。
 小枝は恐怖やら絶望やらが入り混じって、泣き叫んだ。
「いやああ! 姉様ぁっ!」
「いっしょにひとつになりましょ。ねぇ、小枝……」
 闇が、白い闇が帷のように広がった。
 それに包み込まれ、飲み込まれながら、小枝の意識は急激に遠のいていった。
「典太……」
 うわごとのようにその口が男の名を呼び、声は飛沫のように消えていく。
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