2ntブログ
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
其の四 シフ
 ケイフはシフを呼ぶ
 その小径(みち)を塞ぐため
 この世とあの世を分けるため
 シフはケイフを探す


***


「うーん、これはなかなかすごいな……」
 書机の上に開いた本をぱらりとめくりながら、小枝はつぶやく。
 先日の大風も雨どいをひとつ壊していっただけで、不吉なことが起こるとぶつぶつ言っていた典太の心配も杞憂となった。
 太陽は熱い夏の輝きを取り戻し、蝉の鳴き声もいよいようるさい。
「ケイフはシフを呼ぶ……その小径を……」
 縁側の向こうの庭をなにやらつぶやきつつ、典太が通りかかった。
「なんだ? その唄は」
 小枝が声をかけると、暑さに参った様子の典太は、ぼんやりした目を向けた。
「ああ、小枝様。昨日発った親父が、ケイフに関して新しい情報を仕入れてきたんですよ。どこぞの民謡に残っていた歌詞らしいんですけどね。意味がさっぱりで」
「ふぅん……」
「書き物ですか? ここ、涼しいな」
 典太が縁側に腰を降ろした。
 小枝の部屋は大楠の陰になって、しかも風通しがいい。縁側のすぐほとりには池もあるし、涼を取るには最適な場所だ。
「いまは休憩中さ。これを読んでた」
「をんな……緊縛……術?」
「図解つきだぞ。女体を縛るやり方が、こまかに書いてある」
「そんなもの、どこで……」
「あれ、知らんのか? お前の父上が例によってうちへ預けていった本だ」
 ぱん、と勢いよく典太は額に手を当てて、天を仰いだ。
「……あの親父……」
「亡くなったうちの父はこう言うのと無縁だったし、例の艶本もお前の父上のだったかもな」
「ああ……申し開きがたちません……」
「気にするな、見てると面白い」
 小枝は笑った。
 そのとき、廊下の向こうからばたばたと言う足音が響いて、小枝の部屋の前で止まった。
 なにやらただならぬ様子だ。
 小枝は察して本を閉じ、声をかける。
「どうした。なにかあったか」
 襖の向こうから、使用人の声が応じた。
「へ、へぇ。ちょいと」
「はっきりせんな。大事か?」
「いえ、とにかくちょっと、見てもらえませんか。みんな炉辺の広間におります――」
「わかった。行こう」
 小枝は立ち上がる。典太もそれにならった。
「なんでしょうね」
「わかるわけないだろ。見てから訊け」
「ごもっとも……」
 縁側から上がりこんだ典太を従え、玄関近くの炉辺へ急ぐ。
 炉辺には屋敷中の人間が集まっていた。
 なにかを囲んでざわめいている。
「お館様――」
「紗由里様が拾ってきたんです」
「なにをだ。見せてくれ」
 小枝が近づくと、使用人たちは道をあけた。
 輪の中心には紗由里が座っている。その前には大きめのたらい。
 たらいの中には――。
「なんだ、これは」
 おもわずうなる。
 水を張ったその中に居るのは、見たこともない奇天烈な形相の魚だった。
 くちばしのように尖った口元、貨幣を縫いつけたように大きく銀色の鱗、長く伸ばしたような三尺ほどの胴。
 そして一番奇怪なのは、四本の足のようなひれだ。まるでこれから陸にあがろうかと言うような、蜥蜴にも似る魚だった。
「ああ!」
 典太が大声を上げた。
「どうした、知ってるのか」
「大風の前に見たの、こいつですよ。あれは幻じゃなかったんだ」
 見ただけでは正体を探る役に立たない。
 紗由里に訊く。
「姉様、こいつをどこで?」
「門のところを這っていたの」
「地面の――上をか?」
「うん。水が無くても平気みたいよ。ほら」
 覗きこんだ紗由里を見つめ返すように上を向いた魚が、ぱしゃんと跳ねた。
 そして前側の二本のひれで器用にたらいの淵をつかむと、水面の上に顔を上げて、人間たちを見回すようにまんまるい瞳を左右へ向ける。
「ゲコ」
 しわがれた蛙のような声で鳴いた。小枝は若干呆れながら、指で魚を指す。
「典太……妖物(あやかしもの)か? これ」
「いや……なんとも。妖物ってのはもっと、単純な造りをしてるもんですし……。でもこいつも、まともな生き物じゃないですよ」
「まともじゃないって、失礼ね」
 愛着があるらしい紗由里が怒る。典太は困ったように言った。
「なにせ僕が見たときには空の上を這って行ったんですから」
「それは幻だ」
 小枝は暑さで朦朧としているらしい典太を切り捨てると、その魚をじっくり眺めた。
 空中でも息が出来るようだ。と言うより、水の中で生きる必要もないのかもしれない。体の形状を見れば、水棲なのは明らかだったが。
「うーむ……」
 腕を組む。使用人たちは脅えた声をあげた。
「お館様、典太が大風の前に言ってた不吉の元がこれだってんなら……」
「こんなもん屋敷にいれちゃいけねえよ」
「でも紗由里様がなぁ……」
 紗由里に目をやると、暢気な姉は訴えかけるまなざしで小枝を見つめていた。
「……姉様」
「小枝、これ、飼っちゃだめ?」
 なんでそうなるんだ。小枝にはときおり紗由里がわからない。
 昔はこういう常識はずれは、よく自分の方がやらかしたものだが。いつの間にか立場が逆転してしまった。
「おい、典太」
 将来の夫として、びしっと言えと言うつもりで、小枝は典太の脇を肘でつつく。同じく腕組みして考え込んでいた典太は、ひとつうなずくとたらいへ進んだ。
「なにを食べるかな、こいつ」
「どうしたんだ、お前まで……」
 小枝は呆れた。
 典太が振り返って、語気を強くする。
「僕はいま猛烈にかきたてられているんです。こいつが空を這うところを、僕はしっかり見てる! 正体がなんなのか、調べるのは僕の務めです。いや、学者として義務だ」
 いつもは暖簾に腕押しみたいな男の瞳が燃えていた。
 けっきょくこいつも、学者の血はしっかり受け継いでいると言うことか。
 使用人のひとりがそんな典太に反駁する。
「でもよ、典太。不吉なものを見たって言ってたじゃねえか」
「たしかにあの時は不気味だったけど、大風もなんともなかったし、それに一番不気味だったのはこいつじゃなくて、その前に見た白く光る蛇みたいなのなんだ。僕は別にこいつを指して不吉って言ったわけじゃない」
 渋面の使用人に、早口でまくしたてる。普段は見られない光景だ。
「わかったわかった」
 小枝はひらひらと手を振ってなおも気を吐いている典太を抑える。
「あたしもその、理由もなく不吉だの言うのは好きじゃない。みんな、ここはひとつ、これが凶のものか吉のものか様子を見ると言うことで、このふたりのわがままを聞いてくれ。学者殿がきっちり調べてくれるんだろ?」
「吉か凶かは専門外ですけど――こいつの正体なら必ず」
「と言うことだ。さあ、仕事に戻ってくれ!」
 ぱんぱん、と手を叩いて使用人たちを持ち場へ戻す。
 不承不承ながら、みんなちりぢりに去っていった。紗由里は手を打ち合わす。
「やった。飼ってもいいんだ」
「姉様、典太も。貸しだぞ。それは覚えておけよ」
「名前は何がいいかな。ん~そうだ、伝助ってのがぴったりね」
「なんだそれ……」
 聞いちゃいない。
 脱力して小枝はため息を吐いた。


***


「で、だ」
 その夜、小枝の姿は離れにあった。手には例の『をんな緊縛術』の本。典太と紗由里は、その前に正座させられている。
「さっそく昼間の借りを返してもらうぞ」
「あのー、小枝。そんな本いったいどこで……」
「典太と同じことを訊くな。姉様、こう言うの興味あるだろ?」
 わざわざ頁を開いて縛られた女の絵を紗由里の目の前に持っていく。目を逸らした紗由里は、蚊の鳴くような小声で答えた。
「ちょ、ちょっとだけ……」
 ちょっとどころでなく興味はあるだろう。はずかしめられて燃える性癖があることは紗由里本人も自覚している。言葉で責められるだけで達しそうになるのだ。
 その体を縛り上げてみたい欲求が小枝をうずうずさせる。
「でははじめよう。典太、姉様を裸に剥いてくれ」
「あ、はい」
 典太が紗由里の帯に手をかけほどいていく。毎夜やっているから手馴れたものだ。着物を脱がせ、その下の白い襦袢の帯もはずす。小枝は眺めながらうっとりした。
「何度見ても姉様の身体はきれいだな」
 襦袢の合わせ目から零れ落ちる雪のような胸。蝋燭の炎が豊かな陰影をつけて、清楚なはずのそれをひどく淫らに彩る。紗由里の体に淫らさを与えるのはそれだけではない。女らしさを存分に備えたくびれを持つその腰の下には、男の器官がかわいらしく備えられているのだ。紗由里の男根はもう半分立ち上がって、期待を膨らませている。
 典太がそでをはずすのも待ちきれず、小枝は用意した縄を紗由里の首へかけた。
「あっ」
 紗由里が小さく声を上げる。
 二重にした縄をぐるりと股の下へくぐらせて、男根を挟み込み、それを背中へまわす。縄がこすれるたびに体は敏感に揺れ、ぎゅっと目を閉じた紗由里は頬を染めてうつむいている。
「あれ。なかなかうまく括れんな」
 不器用な小枝が縄の結びにてこずっていると、典太が横から手を出してきた。
「十字結びはこうです」
 ぱっと手際よく結んでしまう。小枝は感心した。
「お前、こういう経験あったんだな」
「いやまさか。旅をしてると結んだり縛ったりってのはすごく重要なんですよ」
「あたしには向きじゃないかもなぁ。代わりにやってくれ」
「亀甲縛りでいいんですよね」
「ついでに後手に縛って股も広げさせてくれ」
「むずかしいな」
 そう言いつつも典太は、本をちらちら参考にする程度で、すばらしい手際のよさを見せていく。
 紗由里の体は菱形の凹凸がいくつも刻まれ、手は後ろに固定され、開かれた股はひざを折り曲げた格好で閉じることが出来ないよう、後方へ回した縄で括られていった。
 小枝はその様子を呆気に取られて見守る。
 旅をしているとそんなに縛る技術がつくのだろうか?
「できた」
 典太が満足げにうなずいたころには、紗由里は一個の芸術作品に仕上がっていた。
 乳房はその豊かさを強調されて縄の間から張り出し、先端の突起をぴんと上へ向けている。菱形の縄は肉のやわらかさを見せ付けるように食い込んでいるし、開帳された股の間では男根の下の秘所がぱっくりとその割れ目まで広げられて、奥の柔肉をのぞかせていた。
「……これも才能か?」
 呆れた小枝の言葉に、典太は複雑な顔をする。
「もともと手先が器用ではあるんですが……」
「お、おわった?」
 ぎゅっと目を閉じたままの紗由里が、おずおずと訊いた。
小枝は部屋の隅にあった姿見の鏡を、その前に移動させつつ答える。
「動けないか? 姉様」
「動けない……。胸の中が切なくて苦しいの。早くほどいて……」
「なに言ってるんだ。自分がどんな格好をしてるのか、目を開けて見てみろ」
 小枝は縛られた肩に手を置き、耳元でささやく。
 顔を逸らしたままの紗由里は、おそるおそる薄目を開けた。
「あ……」
 その視線が目前の姿見へ釘付けになる。
 目を開ければ、大股を開いたまま動けずにいる自分が映っていたのだ。
 想像よりも一段とはずかしい姿をさせられていることに、ようやく気づいたようだった。
「やだ……やだぁ」
 泣きそうな声で首を振るが、目は姿見に映る媚態に吸いつけられたように離れず、男根はみるみるうちに固さを増して、広げられた秘所からは透明な汁が溢れ始めた。
「なにがいやなんだ?」
 小枝は黒髪を掻き分け、その首筋へ舌を這わせる。
「こんな格好……こんな格好いや……」
「どういうところがいやなんだ?」
「ああ……こんなに股を広げて、こんなの、いやらしい……」
「じゃあ閉じればいいだろ?」
「閉じれないの……動けない……ああ……」
「そうか、動けないのか……」
 典太を手招きする。紗由里の目の前に立たせ、小枝はそのすそに手を入れて下帯をはずした。
「じゃあ姉様は、あたしが目の前でこいつをいただいてもどうすることもできないんだな」
 屹立した一物を取り出す。
 小枝の手につかみ取られたそれは、紗由里の顔の直前でびくんと脈打った。
 紗由里が焦りの声を上げる。
「いや、やめて。取らないで」
「ふふふ。どうしようかな」
 ぺろり、と亀頭の先を舐め、先走りの液を舌先にすくい取る。ぬらりと光るそれを見せ付けるようにしながら、口の中へしまいこんだ。
 紗由里は物欲しげにそれを見送った。
「だめよ……それ、私のなんだから……」
「独り占めはよくないよな。じゃあいっしょに舐めようか」
「あ……」
 典太の腰を押して、紗由里の顔に突きつける。
 ぼうっと蕩けた表情をした紗由里は、舌を伸ばして自分から舐めはじめた。濡れて震える紅色の淫靡な塊が、典太の欲望へからみついて、その固さをほぐすようにぬめりついていく。
 小枝もその反対側から怒張へ吸い付いた。
 典太の一物は熱く、浮き出た血管を舌の感触で知ることが出来る。それはどくどくと脈打ち、男の欲望の大きさを誇示しているようだった。
 紗由里が典太の右側を、小枝がその左側を。いつの間にかそう言う向きになって、ふたりは一心に竿にくちびるを当て、伸ばした舌で裏筋をなぞりながら、雁首の付け根までを往復する。
「ん……」
 先に小枝が口を離し今度は亀頭の先端から喉の奥へ飲み込んだ。力強いものが侵入し、苦しさを我慢できないぎりぎりで引き抜く。口が小さいから限界まで開けなければならず、それでも吸引とくちびるのすぼまりで男を悦ばせるのは至難の技だったが、この二年の鍛錬でそれもすっかり身についた。
 同じくらいおちょぼ口の姉にはまだ真似できるまい。その優位ははっきり感じる。
 紗由里は竿から陰嚢へ顔を移動させていた。
 下から体を曲げて袋をちろちろとくすぐり、たまにそれを一個ずつ口へ含む。口の中ではたっぷりと舌全体で舐め回して開放し、そして次へ移る。玉と玉の中間を紗由里がねっとりと舐め上げると、典太が声を上げた。
「あ、あの。もう出してもいいですかっ」
「なんだ……はやいな」
 小枝は中断すると、手を使ってしごきながら言った。
 一物は確かに限界まで固く膨れ上がり、しごいているだけで透明なねばりをだらだらと流している。
「ふ、ふたりでされると、興奮して――その」
「いいぞ。出してしまえ。これはあたしがもらう」
「え、やだ……」
 動けない紗由里から一物を遠ざけ、小枝はしごきながら先端を口へ入れた。典太がうめく。
「ううっ」
「だめよ……典太。出しちゃいや。あなたの子種は私のなんだから……」
「そんなこと、言っても……も、もう」
「じゃあ姉様、おねだりしてみろ」
 もう一度口を離し、小枝はいじわるく微笑む。
「典太の前で口を開けて、この中へくださいって言うんだ」
「や、やだ」
「じゃあこれはあたしのだな」
「まって。あ、あの……」
「ふふ。――ほら」
 一物を紗由里の顔の上に向ける。小枝はそれをしごきながら紗由里を促した。
 はずかしさで真っ赤になった紗由里が、うつむき加減で小さく言った。
「あ、あの、く、くださ……」
「聞こえないぞ。もっと顔を上げて。口を開きながら言うんだ」
「く――くださ……い」
 なやましげに眉をひそめ、あごを持ち上げた紗由里が、下唇に舌を乗せながら細い声を出す。縛られた体は自由が利かず、唯一自由になる顔さえもいまや小枝の言いなりだ。
 小枝のぞくぞくと背筋を駆け上るものがある。
「もっと言え、姉様。もっとなまめかしく」
「ああ……いや、もう、ちょうだい……」
「どこへだ?」
「私の……私の口の中へ……」
「なにをだ」
「熱い精液を……。はぁ、精液をちょうだい……」
「いっぱいか、それともすこしか」
「いっぱい、いっぱい……!」
「どろどろに?」
「うん、どろどろにしてっ」
 興奮した紗由里はなにも言われなくても淫らな言葉を続ける。
「顔中を汚して! 白いもので! ああっ! 典太はやくぅ」
 紗由里が舌を宙に伸ばし、なりふり構わない様子で叫んだ。
 首を振る動きに合わせて黒髪は体をさらさらと流れ、その隙間から見える縄の食い込んだ肉の凹凸が、清楚さを逆に倒錯的な色気へ変換している。
 あのおしとやかな姉がこんな媚態をさらすなど、だれが想像できるだろう。
 男なら、その姿だけで達してしまうに違いない。典太もそのひとりのようだった。
「さ――小枝様、僕もう、がまん――」
「いいぞ出せっ」
 小枝はひときわ強く竿を握り、上下にこすりたてる。
 びくびくっと震えた一物が、欲望の権化を脈動しながらほとばしらせ始める。
「ううっあっ」
 喉を反らした典太がうめき、腰を震わせる。
 先端の溝からびゅっと解き放たれた欲望が、紗由里の舌から口の中へと着地して、雪だまを投げたように白い染みを広げた。
 とても濃くて、量が多い精液だ。相当がまんして放ったせいらしかった。
 小枝は脈打つものをしごきながら射精を助け、紗由里の言葉通り口の中だけではなく顔の上にも白い絵の具を塗りたくっていく。
 たちまち紗由里の顔は白い欲望で汚されていった。
「おいしいか? 姉様」
「うん……おいひい……」
 上を向いたまま、目を閉じて恍惚と紗由里は言う。
 典太の射精が震えながら終わったのを見取って、小枝はその顔の上に口を寄せた。
「独り占めはよくないだろ? あたしにも分けてくれよ」
「……あ……」
 舌で顔の上のものを舐め取っていく。眉の上、まぶた、鼻先、頬と。
 紗由里が精液を口へ溜めたまま、抗議した。
「らめよ……わたひのなんらから」
「姉様、口の中の、まだ飲まないで」
 小枝は念入りに紗由里の顔を舐めまわし、きれいにしていく。
 あらかたを舐め取ると、くちゅくちゅと舌の上でそれを味わった。
「姉様はいつのまにそんな欲張りになったんだ……。ほら、返すよ」
 紗由里の頭を抱いて、くちびるを合わせる。
 精液と唾液の混じり合ったものを紗由里の口内へ流し込んでいく。
「んっ……ん……」
 それを流し終えると、舌を差し込んで向こう側の口の内側を舐めまわした。
 最初の方に飛ばした、ぷるぷるとした精液の塊を舌先で追いかける。紗由里もそれに合わせて舌を動かし始めた。
 ごくりと一口飲み込んだ紗由里は、残りの精液を小枝の口の中へ戻してくる。
 反対に差し込まれてきた舌に翻弄されながら、小枝も一口嚥下する。
 そしてまた残りを紗由里の口の中へ。
 ふたりは精液をお互いの口の中で混ぜあい、舌をからめ合いながら、愛の印しを飲み干していった。
「んふ……」
 くちびるを離すと、てろっとよだれの糸がお互いをすじでつなぐ。
 上気した頬で艶然と小枝は訊く。
「おいしかった?」
「うん……すごく」
「じゃあ次は、あたしを満足させてくれ」
 紗由里の体を畳の上へ押し倒す。縛られた足が宙を向き、無防備な秘所がさらされた。
 小枝はその濡れてひくつく甘い蜜の園へ指を這わせる。
「こっちもいいけどな……あたしはまだ、姉様の入れたことないんだ」
 つっと指を上げ、その上の男根をつかむ。
 典太のものよりもいくぶんか小ぶりであるものの、固さは紗由里の興奮に比例して申し分ない。
 ひとつひとつの指をからませる様に、やさしく撫でながら愛撫すると、その動きのたびに面白いほどびくびくと跳ねた。紗由里の男根は、跳ねる動きに合わせて射精したように先走りを滴らせ始める。
「あたしの中に入れたくてたまらないだろ? 典太じゃ出来ないものな」
「う……うん」
「じゃあおねだりできるよな?」
「うん……。わ、私のその……一物を、小枝のなかへ……」
「そそり立った肉棒、だ」
「そ……そそり立った肉棒を――」
「濡れそぼった肉唇へ突っ込ませてください」
「わ、私のそそり立った肉棒を――濡れそぼった、肉唇へ突っ込ませて、ください……」
「よーし、お望みどおりに……」
 紗由里の体をまたぎ、男根を自分の秘所へすりつける。溢れ出した蜜が太ももまで滴っているそこは、男根に吸い付いてちゅぱっと音を立てた。
「はやく、はやく……」
 紗由里のつぶやきはうわごとのようだ。
 小枝は天を仰がせたその男根を一気に下の口で飲み込む。
 想像以上の衝撃が、小枝の脳にも響いた。
「ああっ!」
「あふぅ!」
 ふたりともその瞬間に喉を反らし、背を反らして体を硬直させた。
 お互いの感覚を共有しているのだ。
 紗由里は小枝の膣の蠢きを、小枝はつらぬかれる熱さを感じ、それが同時に相手へと伝わって、快楽を倍にも増幅させる。
 小枝は手を畳の上へ突くと、荒い息を吐いた。
「はぁ、姉様、あたし――ちょっと果ててしまった」
「姉様はまだよ……我慢したんだから」
「が――我慢出来るか? こうでも?」
 絶頂の感覚にまだ震える膣をぬるりと持ち上げ、紗由里の異物を咥え込んだまま落とす。
 膣と男根の隙間からしぼり出された愛液が、泡のように白く紗由里の陰毛を濡らした。
「くっ」
 小枝は眉をしかめ、ともすれば力の抜けそうな腰を奮い立たせて、執拗に紗由里の上で上下した。腰の動きが十数回を数えた時点で、紗由里は突然身じろぎする。
「だっ、だめっ!」
「出して、姉様出してっ!」
 ますます激しくなる責めの動きから紗由里は逃れようとするが、しっかり縛られた体は動けないと言う事実を改めて教えるだけで、それが逆に被虐心をあおってしまう。
「あああ、やめて小枝、私……」
「い――妹に、犯されて、出ちゃうのか?」
「あ――出ちゃ、出ちゃう、果てる……」
「あた、しも、また……!」
「果てる! 出るう!」
「ああーっ!」
 ふたり同時に嬌声を上げ、また体を反らして伸び上がった。
 今度は紗由里が我を忘れ、わずかに動く腰を少しでも深く小枝の中へ突き入れようと、なまめかしくくねらせている。
 小枝はその上で恍惚状態のまま、紗由里の一物がその精液を膣の中へ吐き出していく熱い流れを感じていた。びくっと痙攣する内ももが紗由里の腰を挟み、絶頂の収縮でその男根をきつく締め付けて中に溜まっているものを搾り取ろうとする。
「小枝……小枝の中きつくて、いっぱい出ちゃう――」
 うわごとのようにつぶやきながら、紗由里はなおも射精を続けた。注ぎ込んだ精液はもはや小枝の中に納まりきらず、蜜とからみあって溢れ出したそれは自分の腹の上へ淫らな川のように流れ出し、臍へ池を作っていく。
「っ――あ」
 上を向いて硬直していた小枝は、長い射精が終わると同時に糸が切れたように紗由里の上へ倒れこんだ。
 目を虚ろに開き、肩で息をしながら、まだつながったままの部分を引き抜く気力もない。
「小枝ぇ……」
 そんな小枝に、紗由里が甘えた声でささやく。
「すごくいいの……。もっとして、小枝。まだ固いの直らない……」
「え……あ……。まだ、したりないのか?」
「うん……ほら」
 紗由里が男根に力を入れると、膣の中でそれはびくんっと弾け上がる。小枝はその刺激に肩をすくませた。
「ひうっ」
「ねえ……だからもっと……」
 紗由里の目は熱くうるんで、淫靡に艶光っている。蕩けた女の表情、いや、淫欲に飲まれた雌の顔つきだ。
 それが清楚さに溢れる容姿と乗算しあい、ぞくりとしたものが背筋を駆け上がるほど淫らに紗由里を見せる。
 紗由里を縛っておいてよかった。そうでないと、ここで逆に犯されていただろう。腰も立たないような状態で責められてはたまらない。
「典太、起きてるか」
 小枝は後ろに目をやり、畳の上へうつぶせになっている男に助けを求める。
「寝ませんよ」
「お前じゃない、せがれの方だ」
「おふたりのもつれ合うところを見せられて、立ち直らないほど年食っちゃいません」
「よくわからない理論だが、よろしい。その若々しいもので姉様を満足させてやってくれ。あたしはもう、限界だ」
「え、はやいですね――」
 言いながら体を起こし、紗由里の足元へやってくる。腰をはずそうとした小枝の肩を、なぜかぐっと押さえつけた。
「まあまあ小枝様。ふたりともつながったまま、楽しみましょうよ」
「――え?」
「……逃してはならんと、紗由里様が眼力で訴えるのです。と言うわけで、失礼しますよ」
「なにがだ――あっ!」
 小枝は典太の持っている縄を見て、焦りの声を上げた。
「あたしまで縛る気か!?」
「紗由里様だけじゃ不公平でしょ」
「不公平って、お前はいいのか!」
「僕はほら、縛る係りだし――」
「なにが係りだ。あうっ」
 わめいているうちに縄は器用に小枝の腰を巻き、広げた紗由里の足と腰へつなげられ、固定されていく。
「やめっ」
「暴れないでください。よっと」
「うわ!」
 ぎゅっと手を後ろへ回されたと思ったら、両手を後手に合掌しているみたいな格好で縛られてしまう。
「背面合掌縛りって言うらしいですよ」
 典太が本の内容を解説する。
 小枝の抵抗がなくなると、典太がじっくり小枝と紗由里の結合を深めていった。
 試行錯誤しながら何度も縄を通す。
 やがて完全に腰と腰がつながったまま、ふたりは身動きできなくなった。
 小枝は恨みを込めてにらみつける。
「て、典太お前、覚えていろ……」
「うるさいなぁ」
 突然後ろから布を掛けられ、小枝は視界を奪われた。頭の後ろでぐっと括られる。目隠しされたのだ。
「あ……ああ……」
 手も足も自由が利かず、周りも見えなくなってようやく、小枝は恐怖心を覚えた。
 いまから何をされるかもわからない。動けないし、どうしようもないのだ。
 怖い気持ちが湧き上がってくるのに、なぜか秘所は逆にその蜜の分泌を多くしていった。
「小枝様、いまからたっぷり可愛がってあげますよ」
 あごを持ち上げられ、耳元で典太がささやいている。小枝はわずかに震える唇で反駁した。
「お前……姉様と態度が違う……」
「なすがままの紗由里様より、反抗的な小枝様の方が燃えるんです」
「ば、馬鹿なこと……」
「うらやましいな、小枝。典太に愛してもらえるんだって」
 紗由里が微笑を含んだ口調で言う。
「いやだ、こんなの……」
「でもあなたの中、さっきからぬるぬると動いて……まるで悦んでいるみたい」
「そんなことな――あんっ!」
 後ろから典太に胸をわしづかみにされると、小枝は敏感に反応した。
 全身の筋肉が収縮して、膣も急激に締まり、紗由里の男根を愉しませる。
 典太は耳へ息を吹きかけるようにしながらささやく。
「紗由里様の中へ入れても、小枝様だって感じるんでしょう?」
「あ、ああ」
「じゃあつながっていても、離れていても同じじゃないですか。それならこのまま、愉しみましょう」
「う、や、やだ――ああ」
「はあぁ」
 ずぶり、と紗由里の陰唇へ亀頭が差し入れられる。熱い吐息をふたりは漏らした。
 そのままゆっくりと奥へ。
 一物がひだを掻き分けて進むにつれ、ふたりの吐息は熱さとなやましさを深めていく。
 全部は差し込まず、途中で止めて、またゆっくりと引き抜く。
 ぬるぬると惜しむようにひだがからみつき、先端が抜け切る直前でまた前進を開始する。
 ゆっくりとじっくりと。先ほどより少しだけ深くに差し込み、また抜いていく。
 そうやって徐々に深めていく運動を数度繰り返すと、紗由里がねだりはじめた。
「奥まではやく……。熱くて変になりそう。もっと入れてぇ……」
「……小枝様はどうです?」
「う……あ、あの、待ちきれないと姉様のがあたしの中で暴れて……奥に、届いちゃうんだ……」
「もっと欲しいんですね?」
「ほ、欲しい。あ――あたしも熱くて、変になりそうだ」
 典太は無言で腰の位置を定めると、そのまま一気に腰を紗由里の中心へ突き入れた。
 ――ずちゅっ
 粘液が摩擦で立てる卑猥な響きが響き渡った。
「あぁーっ!」
「あぅん!」
 突然の深い衝撃にふたりは派手に体をのけ反らせる。
 小枝はそのまま、上体を維持できずに紗由里の胸へ倒れこんだ。不自然な格好で手足を縛られているから、腰の半分で折れ曲がったような格好だ。
 そのまま典太は奥深くまで叩きつけるように腰を律動させ始める。
「あ、あ、あ、あ、あ」
「ああっ、いい! 典太もっと!」
 喘ぎ声しか上げられないのは小枝で、淫らに乱れきった言葉を発するのは紗由里だ。
 紗由里の足を持ち上げるように抱きしめ、回した手で小枝の胸のあたりを抱く。
 結合部はより深くまで典太を受け入れた。
「あんん――私、私また、果てちゃう、深いの。深いのが奥に当たって――」
「紗由里様、果てちゃいましょ、ね?」
「ああ……うん、私――果てる、果てるっ!」
「ああうっ!?」
 紗由里の膣が細かく震えて絶頂を示すと同時に、小枝の体が激しく揺れた。
 肉ひだの蠕動が典太の一物へ絶妙な刺激を与え、耐え切れない典太も同時に欲望を放つ。
 ぎゅっと力いっぱい小枝の胸を握り締めて、射精感の突き上げるままけもののように典太は腰を振った。
 紗由里の一物も脈打ち始め、ふたたび精液を小枝の中へ送り込み始めた。
 典太が腰を動かすたび、それは射精の大きなうねりを伝えてくる。
 どくどくと熱い奔流がほとばしっていく。
「――っ!」
 射精されながら女の悦びと男の悦びを同時に味わった紗由里は、声なき声をあげて表情を歪ませた。
 その感覚を共有する小枝もまた、紗由里の胸の上で口を半開きにし、よだれを垂れ流して快楽を享受していた。
「……小枝様?」
 よもや気を失ってしまったのかと思い、ふたりの昂ぶりがひと段落してから、典太は声をかける。
「……は、あ、ああ」
 息も絶え絶えながら返事があった。何度かぱくぱくと口を動かしてから、か細い声で訴える。
「な、縄をはずしてくれ。苦しくて息が出来ない……」
「あ、はい」
 典太は小枝の上体を起こすと結び目をほどきにかかったが、よほどしっかり結んでしまったのかはずすことができない。
 切った方が早そうだ。次からははずすときも考えて結んだほうがいいだろう。典太は鋏を取りに立つ。
 ふたりの縄を切りはずし、小枝の目隠しも解いて自由にすると、ぐったりとした女体がふたつ、畳の上へ転がった。
 お互いに秘所からどろりと白いものを垂れ流し、特に小枝は何人に注ぎ込まれたのかと言うくらい大量の汁が溢れている。
「ちょっと、きつかったかな。すりむけちゃった」
 先に復活したのは紗由里だった。手首をさすりながら体を起こす。
「だ、だまされた……」
 恨み言を言いながら小枝は上目遣いに典太をにらむ。あの人畜無害な男に嗜虐心があるとは思わなかった。しかしそれ以上に、小枝の中に被虐心の塊があることに気づいたことが大きな発見だった。
 典太の足元まで這っていき、そのひざの上に顔を乗せる。
「でもまぁ、よかったからゆるす。また姉様といっしょに縛ってくれ」
「もう、調子に乗らないの」
 紗由里がすねた。
 蝋燭の明かりがじりじりと明滅した。磨り減ってしまって消えようとしている。
 長居してしまった。ここは紗由里と典太の部屋だ。けだるいが戻らねばならない。
 ひざから顔をあげようとしたとき、典太の手がそっと頭に乗せられて、小枝は気勢を殺がれた。そのままやさしく髪を撫でられる。小枝が一番好きな手の動きだった。
「……小枝様。紗由里様」
 改まった調子で典太が声を発した。
「お願いしたいことがあるんです」
「なんだ」
「僕は旅に出ようと思うんです」
「は?」
「ええ!?」
 姉妹のおどろきが重なった。髪を撫でる手はそのままに、典太は静かに告げる。
「紗由里様のそれ、男の物についてですけど、やっぱりそのままにしておけない。それはケイフが作り出したものです。妖物が作ったものはいずれこの世に綻びをもたらす。あってはないものなんです」
「それはわかるが……治すあてはあるのか?」
「そうよ。あてもなく旅に出て何年も戻らないなんて、私はいや。そんなの認めない」
「あてはありますよ」
 かたくなな調子の紗由里を手招きし、典太は肩を引き寄せて腕に抱く。
「親父が民謡を拾ってきた場所、そこにはまだ隠されたものがある。そんな気がするんです。そこに行けば紗由里様が元に戻るってわけでもないでしょうが……僕しか、動ける人間はいないし」
 確かにいまの状態はまともではない。小枝とも心がどこかでつながったままで、本人は気に入っている様子でも男根なぞ生やしているのは正常とは言いがたい。
 小枝はあたたかいひざのぬくもりを感じながら、そこに顔を伏せて言った。
「……いいぞ。好きにしてこい」
「小枝!?」
「そのかわり三つほど約束しろ。必ず成果を持ち帰ること。必ず無事に戻ること。それから――旅に出る前に、姉様と婚約を交わすこと」
「え」
「ええっ」
 顔を上げる。ふたりの丸くなった目が見下ろしていた。
「なにを驚いてるんだ。もし典太が成果を上げて姉様を治してみろ。半陰陽が治れば親戚の狒々爺どもが由緒だなんだを気にしだす。そのまえに手を打っておけと言う話だ」
「た、たしかに……」
「色々考えてくれているのね、小枝」
 感動した面持ちの紗由里に、くちびるを尖らせながら言う。
「姉様がもっと考えてくれたらいいんだ。それにあたしは、お館様だからな。みなの幸せを考えるのは当然さ」
「自分の幸せは?」
 それを言うか、と思う。悪意の無さもここまでくれば凶器だ。
 くっくっく、と笑いながら体を起こす。
「あん? 姉様、じゃあちょっと分けてくれ!」
「きゃあっ!」
 紗由里の体を押し倒し、叫ぶ。
「典太、縄の新しいの持って来い! それから鞭もだ!」
「いやあー!」
 夜はまだまだ、長そうだった。
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
copyright © 2003-2008 アスティア地球連邦軍高速駆逐艦タケミカヅチ all rights reserved.
Powered by FC2 blog. Template by F.Koshiba.