7
呼び止められたアゲハが後ろを振り返ると、廊下の角からツバキが顔を覗かせていた。
「なんか用?」
「ユキさんにこれを渡すように頼まれて。沢の方へ行かれたので、代わりに」
手を差し出すと、手の平の上に青い玉が乗せられた。
きらきらと綺麗に輝く、指先くらいの大きさの玉だ。
「なにこれ?」
「お八つだそうです。飴玉なんて久しぶりですわ」
ツバキはくすくす笑っている。きっと同じものを貰ったのだろう。
「ふ~ん。ボクもこんなの、最近は食べてないかも」
ひょいと口に放り込んだ。
不思議な甘い味が口内へ広がっていく。
「……アゲハさん……その」
飴玉を渡すだけのはずなのに、ツバキはまだそこにいた。
気のせいか頬が上気していて、腰の辺りをもじもじとさせている。
「どうしたの、ツバキちゃん」
「い、いえ……。その飴玉、どうですか?」
「どうって……。なに味っていわれるとわかんないけど、おいしいよ」
「そうですか。わたくしだけ……なんでしょうか」
「なにが?」
「な、なんでもありません。赤い飴玉を貰ったのですけど、食べてからどうも身体が熱くって」
「ひょっとしたら夏風邪じゃないの?」
「そんなことありません。ちょっと、暑さで身体に熱が篭ってしまったのかも。水浴びでもしてきますわ」
「冷やし過ぎないようにね」
ツバキとはそこで別れ、アゲハは部屋に戻る。
太陽の照りつける時間帯は、外に出るわけにもいかず、主に寝て過ごすか本を読みながら涼を取ることにしていた。
どうしようかぼーっと考えているうちに、口の中の飴玉はすっかり溶けてなくなってしまう。
(おいしかったな。ユキさんにもう一個もらおうか。……ん?)
どくん、と心臓が波打った気がした。
急激に身体中が熱く、滾るように火照っていく。
(な、なに?)
戸惑いを覚えているうちに、昂ぶった血流がどんどんとある一点に向かって収束していくのがわかった。
それはアゲハの股間――立派な男根が備えられている場所だ。
(わ、わ、わ)
なにも意識していないのに、ムクムクと一物は隆起していく。
鎌首をもたげた男根と同期して、アゲハの精神に情欲の火が灯る。
堪えきれないほどの性欲が下半身から全身へ向かって放射され始めた。
「う、うそ。なんで……?」
このところよく着ている朱の浴衣を押し破らんばかりに、男根は激しく自己主張を始めた。
「あ……う……んん……」
布とこすれあっているだけなのに、びりびりとした快感が背筋を貫いていく。
下帯を外すのももどかしく、アゲハは裾から男根をまろびださせた。
外気にさらされた男根はまるで別のなにかのように、隆々とそそり立っている。
儚げな乙女にも見えるアゲハが腰から生やしているものとは、到底思われないような剛直であった。
「ひょっとして、あの飴玉……? ツバキちゃんも、こうなったのかな」
わずかな疑問は煮えたぎるような性欲の前に呑まれてしまう。
アゲハは自分でもびっくりするほど熱を持った竿を両手でつかんで、ひたすらにこすり始めた。
「いいっ、気持ち、いい!」
いくら女の子になりたいと思っていても、身体は健康な男子だ。ついでに頭の中身もアゲハは男のものである。いままでに自慰を行ったこともあった。それはユキの目を盗んだ、興味本位的なもので、回数もひどく少なかったが――。
その経験がまるで嘘だったかのように、自らの手で男根をこするたび、強烈な快楽が腰を駆け上ってくる。
「こんなに、いい、なんて……!」
いつの間にかアゲハは仰向けに寝転がり、腰をわずかに浮かせた姿勢で千ずりをはじめていた。
浴衣の胸元を掻き開いて、片手は乳首をまさぐる。
そこはユキにたっぷりと仕込まれた性感帯だった。
撫でたり転がしたりしているうちに乳首はピンと勃ってきて、それをつまみながら男根をしごくと、よりいっそうの快感が得られた。
「ああん、はんっ、いやっ、いい、いいよぉ……!」
小さく喘ぎながら腰をばたつかせ、アゲハは自慰に没頭していく。
そのうち、おかしなことに気がついた。
快楽は充分に高まっているのに、いずれ訪れるはずの頂点がいつまで経ってもこないのだ。
快感の方もある段階を頭打ちにして、いくらしごきたてようとも昂ぶらなくなってしまった。
「ううう、こんな、苦しい……」
射精の一歩手前、寸止めの状態のまま引くに引けず、前にも進めずにただ痛いくらい張り詰めた物をしごき続けるだけ。
「入れたい……。入れたら出せるかも……」
真っ先に思い浮かんだのはユキの顔だ。
しかしツバキによると、当人は沢の方へ外出している。戻ってくるまで我慢できそうになかった。
いますぐにでも出したい。あたたかい膣肉に包まれて射精できたら、この苦しさが甘美な快楽に変わるのは容易に想像できた。
この家にいるのは自分とツバキだけ。
ツバキなら……。
(だ、ダメ。ダメだよ。ボクはなんてことを……)
仮にも血の繋がった妹。本当の両親が死んでしまったという今、唯一の肉親なのだ。
だが……。
(急に妹だなんていわれても、他人にしか見えないよ)
ツバキのことを想った途端、アゲハの脳裏はその笑顔、肢体で埋め尽くされてしまう。
風呂場で見たまばゆいばかりの裸体。
清楚で物静かな立ち振る舞い。
高潔で気難しいところもあるけど、それ以上に素直でやさしい娘だ。
(ツバキちゃんを抱けたら……抱けたとしたら……)
あの張りのある肌を抱きしめて、この苦しい肉棒を思うさま膣内へ入れることが出来たら。
ツバキはどんな顔をするだろうか。
あの、努めて澄ましているような表情が、あられもなく愉悦に歪むのだろうか。
(ツバキちゃん……ツバキちゃん……)
禁忌も背徳感もはるか彼方へ置き去りにして、アゲハはツバキを犯すことを想像し、夢中になって自分を慰めた。
寸止め状態だった快楽も徐々に昂ぶりを増してきた。
(あ……イケそうかも……)
快感の頂点を目指して、アゲハはぎゅっと男根を握り締める。
搾り出された先走りの汁が、ぴゅっと射精みたいに飛んで手元を濡らした。
「ん……ふ……ツバキちゃぁん……」
思わずその名前を口に出していた。
「はい」
まさかそれに返事があろうとは。
呼び止められたアゲハが後ろを振り返ると、廊下の角からツバキが顔を覗かせていた。
「なんか用?」
「ユキさんにこれを渡すように頼まれて。沢の方へ行かれたので、代わりに」
手を差し出すと、手の平の上に青い玉が乗せられた。
きらきらと綺麗に輝く、指先くらいの大きさの玉だ。
「なにこれ?」
「お八つだそうです。飴玉なんて久しぶりですわ」
ツバキはくすくす笑っている。きっと同じものを貰ったのだろう。
「ふ~ん。ボクもこんなの、最近は食べてないかも」
ひょいと口に放り込んだ。
不思議な甘い味が口内へ広がっていく。
「……アゲハさん……その」
飴玉を渡すだけのはずなのに、ツバキはまだそこにいた。
気のせいか頬が上気していて、腰の辺りをもじもじとさせている。
「どうしたの、ツバキちゃん」
「い、いえ……。その飴玉、どうですか?」
「どうって……。なに味っていわれるとわかんないけど、おいしいよ」
「そうですか。わたくしだけ……なんでしょうか」
「なにが?」
「な、なんでもありません。赤い飴玉を貰ったのですけど、食べてからどうも身体が熱くって」
「ひょっとしたら夏風邪じゃないの?」
「そんなことありません。ちょっと、暑さで身体に熱が篭ってしまったのかも。水浴びでもしてきますわ」
「冷やし過ぎないようにね」
ツバキとはそこで別れ、アゲハは部屋に戻る。
太陽の照りつける時間帯は、外に出るわけにもいかず、主に寝て過ごすか本を読みながら涼を取ることにしていた。
どうしようかぼーっと考えているうちに、口の中の飴玉はすっかり溶けてなくなってしまう。
(おいしかったな。ユキさんにもう一個もらおうか。……ん?)
どくん、と心臓が波打った気がした。
急激に身体中が熱く、滾るように火照っていく。
(な、なに?)
戸惑いを覚えているうちに、昂ぶった血流がどんどんとある一点に向かって収束していくのがわかった。
それはアゲハの股間――立派な男根が備えられている場所だ。
(わ、わ、わ)
なにも意識していないのに、ムクムクと一物は隆起していく。
鎌首をもたげた男根と同期して、アゲハの精神に情欲の火が灯る。
堪えきれないほどの性欲が下半身から全身へ向かって放射され始めた。
「う、うそ。なんで……?」
このところよく着ている朱の浴衣を押し破らんばかりに、男根は激しく自己主張を始めた。
「あ……う……んん……」
布とこすれあっているだけなのに、びりびりとした快感が背筋を貫いていく。
下帯を外すのももどかしく、アゲハは裾から男根をまろびださせた。
外気にさらされた男根はまるで別のなにかのように、隆々とそそり立っている。
儚げな乙女にも見えるアゲハが腰から生やしているものとは、到底思われないような剛直であった。
「ひょっとして、あの飴玉……? ツバキちゃんも、こうなったのかな」
わずかな疑問は煮えたぎるような性欲の前に呑まれてしまう。
アゲハは自分でもびっくりするほど熱を持った竿を両手でつかんで、ひたすらにこすり始めた。
「いいっ、気持ち、いい!」
いくら女の子になりたいと思っていても、身体は健康な男子だ。ついでに頭の中身もアゲハは男のものである。いままでに自慰を行ったこともあった。それはユキの目を盗んだ、興味本位的なもので、回数もひどく少なかったが――。
その経験がまるで嘘だったかのように、自らの手で男根をこするたび、強烈な快楽が腰を駆け上ってくる。
「こんなに、いい、なんて……!」
いつの間にかアゲハは仰向けに寝転がり、腰をわずかに浮かせた姿勢で千ずりをはじめていた。
浴衣の胸元を掻き開いて、片手は乳首をまさぐる。
そこはユキにたっぷりと仕込まれた性感帯だった。
撫でたり転がしたりしているうちに乳首はピンと勃ってきて、それをつまみながら男根をしごくと、よりいっそうの快感が得られた。
「ああん、はんっ、いやっ、いい、いいよぉ……!」
小さく喘ぎながら腰をばたつかせ、アゲハは自慰に没頭していく。
そのうち、おかしなことに気がついた。
快楽は充分に高まっているのに、いずれ訪れるはずの頂点がいつまで経ってもこないのだ。
快感の方もある段階を頭打ちにして、いくらしごきたてようとも昂ぶらなくなってしまった。
「ううう、こんな、苦しい……」
射精の一歩手前、寸止めの状態のまま引くに引けず、前にも進めずにただ痛いくらい張り詰めた物をしごき続けるだけ。
「入れたい……。入れたら出せるかも……」
真っ先に思い浮かんだのはユキの顔だ。
しかしツバキによると、当人は沢の方へ外出している。戻ってくるまで我慢できそうになかった。
いますぐにでも出したい。あたたかい膣肉に包まれて射精できたら、この苦しさが甘美な快楽に変わるのは容易に想像できた。
この家にいるのは自分とツバキだけ。
ツバキなら……。
(だ、ダメ。ダメだよ。ボクはなんてことを……)
仮にも血の繋がった妹。本当の両親が死んでしまったという今、唯一の肉親なのだ。
だが……。
(急に妹だなんていわれても、他人にしか見えないよ)
ツバキのことを想った途端、アゲハの脳裏はその笑顔、肢体で埋め尽くされてしまう。
風呂場で見たまばゆいばかりの裸体。
清楚で物静かな立ち振る舞い。
高潔で気難しいところもあるけど、それ以上に素直でやさしい娘だ。
(ツバキちゃんを抱けたら……抱けたとしたら……)
あの張りのある肌を抱きしめて、この苦しい肉棒を思うさま膣内へ入れることが出来たら。
ツバキはどんな顔をするだろうか。
あの、努めて澄ましているような表情が、あられもなく愉悦に歪むのだろうか。
(ツバキちゃん……ツバキちゃん……)
禁忌も背徳感もはるか彼方へ置き去りにして、アゲハはツバキを犯すことを想像し、夢中になって自分を慰めた。
寸止め状態だった快楽も徐々に昂ぶりを増してきた。
(あ……イケそうかも……)
快感の頂点を目指して、アゲハはぎゅっと男根を握り締める。
搾り出された先走りの汁が、ぴゅっと射精みたいに飛んで手元を濡らした。
「ん……ふ……ツバキちゃぁん……」
思わずその名前を口に出していた。
「はい」
まさかそれに返事があろうとは。
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