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大江戸玩具桃色屋 その参の3
 イカボットの手袋に覆われた細い指は、たしかに張り型を突っ込まれたのと同じ太さと長さで、蜜柑の膣を押し開いていった。
 それが感覚だけのものであることは、早くも絶頂へ達した蜜柑が涙目で股間を見やったとおり、間違いない。イカボットは指一本を根元まで差し込んで、これからそれを自在に動かそうとしていた。
「いい感じデス、ミカンさんの中。愛液もたっぷりカミングアウトしてきました」
「あう! ああう!」
 指が前後する。その動きが途方もなく増幅され、まるでたくましい剛直に犯されているような感覚が蜜柑へ襲い掛かった。とめどなく流れ出した花園の蜜は座卓を濡らし、その下に置かれた一升枡へと滴り落ちている。
 蜜柑は数度指が動くたびに軽い絶頂感に襲われ、その絶頂感が数度繰り返すたびに大波に打たれたような極致へいざなわれた。
 精緻な顔立ちを紅潮させて、イカボットは蜜柑の責めを執拗に繰り返した。赤い唇をさらに赤い舌で舐め、責めることによって自身も性的快楽を得ているようだった。
「はあっ! はあぁっ! も、ゆるし――」
「まだまだデース。枡はまだ浸る程度にしか溜まってません。そして蜜柑サンへの愛撫もさらに激しくなることでしょうー」
「い、いやあっ」
「オウ、ワタシを拒否するとはなんと悪い子でしょう。悪い子にはお仕置きデスね」
 イカボットは股間をまさぐり続けた人差し指を引き抜く。ぬめりを帯びて輝く真紅の手袋はそのひじのあたりまでが濡れそぼっていた。人差し指をそのまま見せ付けるようにかざし、ゆっくりとした動作で中指をそのとなりへ持ち上げていく。唇が円弧を描いた。
「お次は二本。人差し指だけであの感覚デス。指二本はすなわち、張り型ふたつ分……。それがどれほどの快楽か想像してくだサーイ」
「あああああ」
 たったひとつの指であの威力なのだ。考えるまでもなく蜜柑には想像がつき、いやいやと首を振った。与えられるであろう快感の強力さに頭は恐怖しながらも、しかし体の方はそれを望んで貪欲に花びらをパクパクと開花させた。
「それではたっぷりと味わうのデス」
「いやいやいや――あああああッ!」
 蜜柑の声は引きつるように千切れた。挿入された二本の指の強烈な刺激のためである。
 膣から伝わる感覚はまるで未知のものだった。太く猛り狂った怒張がふたつ突き込まれているのに、ちっとも苦痛は無く、余裕を持って身体は受け止めているのだ。感覚だけは確かに伝わってくるが、実際挿入されているのは樹脂素材の手袋で覆われた指二本だけなのである。まるで自分の膣道が二倍に広がって、そこでふたつの男根が暴れ回っているようだった。
「ほら、交互にかき回してあげましょうね。二本挿れるとワタシも動かしやすいのデス。ここ、コレ。このふくらみをGスポット言いマスよ」
「はぐううぅ!?」
 快楽点を突かれ、蜜柑は動かない身体を仰け反らせて反応した。指と膣口のすき間から、ぷしゃっと吹き出るように愛液が噴出する。それはイカボットがくいくいと指を上下させるたびに、まるで射精するかのごとくぴゅっぴゅっと繰り返された。
 あまりの快楽に蜜柑は大きく口を開けたまま、天を仰いで硬直している。内部を淫らにえぐられるたび、身体をびくりと反応させて、そのつど吹き出した愛液はどんどん枡を満たしていった。責め手のイカボットは満足げに笑っている。
「すばらしデス。これなら愛液一升も思いのままデース。予備にもう一升追加してもよろしネ」
「いやあぁ――ああ」
「ミカンさんはすばらし子なのでご褒美あげマス。ワタシ、リンゴさんからあなたアナルいける聞きました。コレ、この左手でそこにご褒美しマス」
「あああアナルってどこですか」
「OH,アナル知らないデスか。おケツの穴をイングリッシュするとそうなりマス」
「えええッ!?」
「いきマスね」
「やめてえ!」
 イカボットはもちろん聞く耳持たず、蜜柑自身のねっとりと濃い汁で潤滑させた左手の指先を、快楽でひくつく菊門へと遠慮なく沈めた。
「あはあああっ」
 快感で滅多打ちにされた脳髄は、肛門への異物挿入も、もはや気持ちいいものがやってきたとしか受け取らなかった。膣から感じるものとは違う、身体の内側からほとばしる異様な快楽が蜜柑を酩酊させた。
 まるで三人がかりで押さえつけられ、犯されているようだった。実際はたったひとりが指先を動かしているだけだ。だがその指先がほんの少し前後するだけで、灼熱の鉄棒が身体の奥へ打ちつけられるような、激しい感覚をもたらしている。
 蜜柑は喘ぎ、そのうちに声も出なくなって、ただ愛液を製造し続ける機械と成り果てた。とめどなく溢れ続ける愛液は座卓の下の枡へと受け止められる。イカボットは告げた。
「もう半分まで来ましたよ。後半分、ここから少しハードね」
 花弁をいじり回す手を抜き、濡れそぼったそれをまたしても見せ付けた。
「今から術で筋肉緩めマス。そしてコレ突っ込む」
 そして拳を握った腕を差し出す。蜜柑は何を意味するか察知して、本気で恐怖した。
「うそ……うそですよね」
「ノン。西洋では腕による性交をフィスト・ファック言います。ベリーポピュラー」
「…………」
「オーウ、突っ込みないと思ったら意味通じてませんでしたか。とにかくトライ&エラーの精神デス」
「うそうそうそ! やめてこわれちゃう!」
「まずは筋肉を――」
「た――助けて杏子姉っ!」
大江戸玩具桃色屋 その参の二
 なんだか寝付けずに、夜が更けても蜜柑は布団も敷かず座卓の前でぼんやりと物思いに耽っていた。
 いよいよ林檎の開発も大詰めらしい。今夜はイカボットが泊り込んでいるそうだ。そうだ、と言うのは、それから一度も姿を見かけていないからである。夕餉も林檎と一緒に、研究室で摂ったようだ。
「はぁ~」
 なんだかため息ばかりが出る。なにが不安なのかわからないが、漠然としたもやが心の中で淀んでいた。
「ミカンさん」
 急に呼びかけられて蜜柑はびくっと肩を震わせた。行燈の薄明かりが障子の向こうにいる人影を映している。かぶりものみたいな影を見るまでもなく、声でイカボットとわかる。
「あ……はい」
「よろしいデス?」
「あ、ど、どうぞ」
 夜中になんの用だろう。相変わらず行動の読めない人だ。
 イカボットはするすると障子を開け、するりと滑り込んできた。なぜか蜜柑の背筋にぞくっとするものが走る。
 闇夜の中で見るからだろうか、濃紺のマントは異色さに加え、禍々しい印象すら与えてきた。真っ赤な口元がにこやかに笑っているのが、逆に怖いのだ。
「あの――なにか」
「ワタシ、リンゴさんのために一皮剥けることにしました」
「剥ける?」
「オウ、一皮脱ぐ、でしたね」
「……脱皮しそうな間違い方しないでください」
「とにかく、アナタが覗いた実験のために、ちょと協力して欲しいのデース」
「はあ。……って言うか一肌脱ぐのはあたし?」
「そうデス。日本語むつかしデスネ」
「いや、ちょっと。そこ重要なところだから間違えないで。整理して話してくれますか?」
「UHHHH……。つまりアナタはリンゴさんの実験に付き合う、オーケイ?」
「林檎姉の実験になら、いつも付き合ってるんですけど……」
「オウ、そーでしたか。ならば話は早いのデス。さっそく始めましょうー」
「はあ」
 幽明境から現れたような姿の癖に、やけにうきうきしている。そのイカボットの様子に安請け合いだったかなと若干後悔しつつ、蜜柑は成り行きに任せることにした。
 イカボットはいつも顔の上半分を覆っている頭巾に手をかける。
「アナタには特別にワタシの正体をお見せしマス。きっと驚くネ」
 ばっと頭巾が払いのけられた。
 蜜柑は現れた顔を見て、思わず叫んだ。そこには黒髪黒目、欧米人とは似つかない大和美人の造作が隠されていたからだ。
「日本人!?」
「ノー。生まれも育ちもイングランド。しかし両親は日本人デース」
「なんだ、つまんない」
「ホワット!?」
「あ、ああ、ごめんなさい。でも、声と同じでとっても綺麗ですね。隠してるなんてもったいない」
 薄明かりに照らし出されたイカボットの造作は非常に整っていた。髪形こそ日本ではあまり見ないざんばら風だったが、氷を削りだしたような透明感のある肌をしている。生命力溢れる蜜柑の美しさとは対照的な、夜の静寂を感じさせる美だ。年齢はぱっと見た感じでつかみにくいが、おそらく杏子と同じくらいだろう。
「ミカンさんには負けるアル」
「ある?」
「ワタシ、ひそかに夢見てましたー。アナタのような若くてエロティックな女性とたわむれること」
「は、はあ?」
「そしておとずれたのデス! そのチャンスがついに!」
 イカボットはマントに手をかけ、そして一気に脱ぎ去った。
「わ、わあっ!」
 マントの中身を見て、蜜柑は悲鳴を上げた。
 その下の身体は胸をむき出しにして随所に網目の入った、てかてか光る樹脂素材の真っ赤な服で覆われていたのだ。いや、覆うと言う表現でははずかしくなるほど、服の面積は小さい。下半身なんか股間をほんの申し訳程度に隠しているだけだ。
「コレ西洋のボンテージ言います。最新流行」
「う、うそつけ!」
「さてミカンさん……ここからが本題デス。貿易商人と言うのはワタシの仮の姿に過ぎません。ワタシの本職は催眠術師。知ってますか?」
「え、ええ……ちょっと前にそういうの流行りましたから」
「グレイト。ワタシのは西洋式、きっとミカンさんも愉しんでもらえるとおもいマス」
「それと林檎姉がどう関係あるんです?」
 その服も、と付け加えることを、蜜柑は躊躇した。
「リンゴさんの開発には、あるものが足りなかったのデス。すなわち若い娘の愛液、それを尺貫法で言うところの一升ほど搾り取らせてもらいマース」
「はあ!?」
「だいじょぶ、アナタには催眠術かけマス。とっても気持ちいいこと受け合いネ」
「意味わかんない。やだって、死んじゃう」
 蜜柑はどうやら本気らしいイカボットから逃げようと立ち上がった。とにかく杏子の部屋へ逃げ込むべきだ。
「オウ、愛液搾れるのアナタしかない。逃げちゃダメよ」
 イカボットがパチンと指を鳴らした。
 そのとたん、足から力が抜けてへなへなと座り込んでしまう。
「え? ……え?」
 立ち上がろうとしてもどうしても足が動かない。手で叩いても動かないしつねっても動かない。痛いだけだ。痛みは感じるから、感覚がなくなったわけではないのに、動くことだけができなくなっていた。
「すでに我が術中の中ネ。サァ、ミカンさん、服を脱ぐのデス」
 もう一度パチンと指が鳴らされた。今度はその指からぼっと一瞬炎が上がり、それを見た瞬間、蜜柑の脳裏が真っ白な閃光で塗りつぶされた。
 はっと気がついたときには、自分の意思とは無関係に手が動き、着物の帯をはずし始めている。
「ちょ、ちょっとちょっと、やだ!」
 あわてて叫んだところで手は止まらず、別の生き物のように着物を身体からはがしていった。
 簡単な夜着だけ羽織っていた蜜柑は、たちまち全裸に剥かれる。
「日本の衣装、脱がせやすくて好きデス。とても扇情的」
「うう……」
 胸と股間を腕で隠して、蜜柑は涙目でイカボットを見上げる。
 どこからともなく一升枡を取り出したイカボットは、そんな蜜柑に嗜虐的なまなざしで一笑すると、枡を畳の上へ置いた。
「はじめましょう。ミカンさん、座卓へ腰かけなサイ」
 ふらふらと操られた蜜柑は座卓へ腰を乗せ、イカボットの指先ひとつの動きで大股開きに座らされる。羞恥と屈辱で真っ赤になった蜜柑は、せいぜい睨みつけるだけだ。
「いいですかー? 三つ数えます。数え終わったらアナタはとってもシたくなる。股間が疼いてどうしようもなくなる……」
 イカボットは手拍子を加え、数え始めた。
「三」
 パン
「二」
 パン
「一」
 パン!
「ああうっ!?」
 突然として強烈な情動が突き上げた。
 頭の中が焼け付くような性衝動が背筋を駆け上り、動かせない足の内ももを震わせる。
 女陰をまさぐりたい欲望が抑えきれない。恥ずかしげもなく伸ばした手は、しかしイカボットに止められてしまった。
「もっと、感覚を高めましょう。……おっと、ガマン汁が、もったいナイ」
 座卓の端から突き出した尻を伝い、早くも蜜柑の花弁は蜜を驚くほどの量吐き出していた。イカボットはその下へ一升枡を移動し、指先で軽くすくい取って味見する。
「リンゴさんの言ったとおり、すごい濡れやすさネ。味もよろしよ」
「うう……変態……」
「そんなクチをきく余裕があるとは驚きデス。これはもっときつくせねばなりませんネ」
 パチンと指が鳴らされ、心臓が跳ね上がるような感覚とともに性欲が倍加した。蜜柑は喉を反らして口をパクパクとさせる。身体はそれでも、縛られたかのように不自然な姿勢で倒れなかった。
「ミカンさん……見て」
 触りたいのに触れない葛藤で狂いそうになっている蜜柑は、目の前に差し出されたイカボットの指を見てもなんのことかよくわからない。いつの間にか、服と同じテカテカの素材の手袋を身につけていた。腕まで長さがある品だ。
「この人差し指一本、これがミカンさんの中で、アナタがいつも突っ込んでいる張り型と同じ大きさに感じられマス。いいですか、指一本が張り型ひとつデスよ……」
 その指がすっと下へ下げられ、股間にあてがわれた。それだけで蜜柑は震える。
「い、入れて……!」
「ふふ、欲しいのデスか?」
「はやく、はやくぅ」
「ふふふ、ホラ」
 ずぶっ!
「っはあぁぁあああ!」
 再び蜜柑は喉を反らした。
 絶叫に近い嬌声が肺を押し上げて喉からほとばしる。
大江戸玩具桃色屋 その参の1
その参


 その日、蜜柑がいつものように店番をしていると、夕暮れ間際になって戸口の鈴が鳴った。
「はぅ……いらっはい」
 居眠りしていた蜜柑が番台から顔を上げ、よだれを拭いているうちに、その人物はするすると店内へ入り込んで、寝ぼけまなこの前に歩み寄った。
 濃紺の不思議な服で、すっぽりと身体を覆っている。それはマントと言うものだと、昔に教えてもらったことがあった。顔はマントと一体になっている頭巾のような布で覆い隠されていて、わずかに口元しか見えない。
「あ……イカボットさん……こんにちは」
 しばしばする目をこすりつつ蜜柑は挨拶する。この妖しげな人物は、林檎がいつも素材を仕入れるのに利用している貿易商なのだった。
「こんにちは、ミカンさん」
 やや語感はおかしいしゃべり方だが、綺麗な女声でイカボットも挨拶を返す。たしか英国人だったはずだ。鎖国している幕府とは通商のない国のはずだが、一部例外はいくらでもあるらしいし、このところは鎖国令もゆるくなっていると言う噂だ。密貿易が跡を絶たず、締めてだめなら緩めてみようと言う事である。
「林檎姉、呼んできます」
「かまわないデス。いつものところ、いるでしょう?」
「はい。じゃあお上がりください」
「失礼デス。ミカンさん、ご機嫌よう」
「ご機嫌よう」
 つられて変な挨拶を返し、マントのすきまから振られた手を振り返す。
 前は三ヶ月に一度くらいの出入りだったのに、このところ週に一回は来ているようだ。特にこの月に入ってからは、ほとんど毎日顔を見せている。いや、かたくなに取ろうとしない頭巾の下をのぞいたことはないから、顔は見たことないが。
 その割に林檎の新製品は鳴りをひそめていて、蜜柑はひそかに退屈していた。二日おきくらいに試作品を持ち込んできた時期は迷惑したが、なければないでさびしいものがある。すっかり身体の慣れてしまった蜜柑にとって、林檎の試作品は自慰をするかっこうの理由付けでもあったからだ。
 なにしてるんだろう……。
 客もなくうす暗いだけの店内をぼーっと見渡しながら、蜜柑はイカボットがおとずれる理由に考えをめぐらせてみた。
 まず考えられるのはふたりがイチャイチャしていることだが、イカボットも林檎もあまりにつかみどころがなさすぎて、想像が働かない。そもそもイカボットが何歳なのかまるで見当もつかなかった。
 となるとなにかすごいものを開発している可能性のほうが高い。そこまでいっしょうけんめい自慰具を開発しなくてもいいんじゃないかと思うが、林檎のような天才がこんなところで埋もれている時点で、幕府にとって大きな損失だろう。林檎いわく、あのような張り型の仕組みなど、あふれ出る才能の先走り汁くらいのものらしい。蜜柑には意味がよくわからない。
 想像をめぐらせているうちに、なんだか興味が沸いてきてしまった。
「蜜柑ちゃん、店番代わろうか?」
 ちょうど折よく、杏子が顔を出してきたので、蜜柑は一も二もなくうなずくと、すぐに林檎の部屋へ向かった。
 日は暮れ始めると早く、もう宵闇が中庭へとばりを広げていた。
 蜜柑はそーっと林檎の研究室の戸を開き、中を覗き見る。
 中にいるふたりはこちらに背を向けていた。台の上に寝かされているなにかをしきりといじくり回しているようだが、背が邪魔になってそれがなんだか見えない。
「……なにが足りないの」
 悩みきった林檎の声が聞こえる。
「あきらめないで、リンゴさん。もう99%上手くいってマス。あとほんのひと振り、スパイスが足りないだけ……」
「それがなんだかわからなけりゃ、完成しないでしょう」
「落ち着いてくだサイ。足りないのはワタシの分野のモノかもしれません。もう一度起動試験を」
「……わかった」
 なにをしてるんだろう。
 目の当たりにしても、蜜柑には疑問が解消しなかった。なにかを作っているのは間違いなさそうだが……。
 やがて台の上に電力の輝きが満ち始め、バリバリと青い火花を散らした。
 よくみると台の周りにはいつも見ないいろんな機器が接続されていて、どうやらそれらが全力で稼動している。電動機が回り、扇が廃熱し、ちょっとした騒音が響き渡った。
 夜中に林檎姉の部屋から変な音がすると思ったら、これか……。
 蜜柑は納得すると、状況を見極めようと目を凝らした。
 そのうち、台の上のものがゆっくりと起き上がり始めた。
 人型をしている。髪も、長く伸びていた。
 細い肩、稜線を帯びた丸い体つき――女性だ。いったいいつの間に連れ込んだのか。そしてなにをしているのか。
 その人影が顔を上げた。
「――!?」
 蜜柑は思い切り息を呑んだ。叫び声が出なかったのは、驚きが強すぎたためだ。
 被検体と思しきその人物は、杏子だった。
 ショックで震えながらも、ふと脳裏に疑問がよぎる。
 さっき店番を交代したのは、杏子だったのではないか。
 林檎とイカボットは、気づかずに会話を続ける。
「やっぱり……だめね」
「イイエ。ワタシにはわかりました。足りないものが」
「ほんと!?」
「最後の儀式が必要デス。それに要るのは、女の愛液が――」
 ぽんっ、と肩に手を置かれる。
 今度こそ大声を上げかけた口をふさがれ、蜜柑は後ろからきた人物にそっと引きずられて、戸口から離された。やわらかな声がささやく。
「……見ちゃったのね」
「杏子姉!?」
「完成したら、蜜柑ちゃんにも教えようと思っていたの。……本当よ」
「杏子姉、あれなに、なんなの」
「落ち着いて。あれは林檎ちゃんのね、悲願なのよ」
「え……」
「本当は林檎ちゃん、長崎で学問所の研究員になるはずだったの。ここでいっしょに住めるはずなんてなかった。でも研究員の地位を捨てて、ここであれを作る道を選んでくれたのよ」
「話が見えないんだけど」
「ふふ。そうね。あれは私を模したカラクリ人形。完成すれば私とまったく同じ、生き写しのようなものになるはずよ。イカボットさんもそれに協力してくれてる」
「なんで杏子姉の……」
「それは私が頼んだこと。もう少し、込み入った事情があるんだけど、それはあれが完成してからゆっくり話すわ。ね、お願い」
 杏子がわずかに腰を下げ、蜜柑の目線と自分の目線を合わせた。
「お姉ちゃんを信じて。林檎ちゃんのことも。私たちは姉妹なんだから」
「……うん。信じる。信じてるよ」
「ありがとう。蜜柑ちゃんはいい子ね。さ、そろそろ夕餉の時間だから、お店閉めるの手伝って」
「あの、ひとつだけ」
「うん?」
「林檎姉は長崎を離れたくなかったのかな。あれを作るためにここへ来たのかな」
「……長崎に未練があったのは確かでしょう。でも、林檎ちゃんの作りたかったものは、長崎の学問所では受け入れてもらえなかった。なぜなら、機械仕掛け以外の要素も必要だったから。ここなら、学問所の研究資金を当てにしなくても、充分に資金を出してくれる人がいる」
「え?」
「――あら。ちょっと口を滑らせちゃったかしら。失敗失敗」
 ぺろりと舌を出した杏子は、なにごともなかったように店の方へ歩いていった。
 林檎に資金提供する何者か。
 そして杏子が普通は許可されないさまざまなものの許可をもらい受けてくる何者かも、繋がっているような気がする。
 桃色屋の裏にはだれがいるのだろう。
 そんな疑問が芽生え、しかし杏子も林檎も口を開くことがないであろうことは、薄々と感じられた。
大江戸玩具桃色屋 その弐の5
「っくう……くん」
「だいじょうぶでしょう? 実はね、この通和散、少し手を加えてあるの。お尻になじみやすくしてるのよ。いまからこれを入れてあげる」
 ちゃら……
 蜜柑の顔の横で、これから尻へ入るであろう球の連なりが振られた。
「まず一個目……」
 つぷ、と球がねじこまれる。灼熱の異物感が菊の内に焼けついて、蜜柑は身体を硬直させた。
「ちからを抜かないと、入らないわよ」
 さらに二個、三個と差し入れてくる。
 球が増えるにつれておなかの中に膨張感がありありと感じられ、ただひたすらに熱い。しかし痛くて苦しいのに、蜜柑の花弁からはとろとろと蜜が糸を垂らして、杏子の下腹を汚していた。
「く……くるしいよぉ……」
 少し涙目で眉をしかめ、蜜柑は訴える。
 林檎はその肩を上から抱いてささやいた。
「だいじょうぶよ。もう最後まで入ったから。さわってみて」
 蜜柑はおそるおそる菊花へ手を当てる。
 わっかのようなものが尻の穴からぶら下がっていた。
「十五個もはいってるのよ。どう?」
「わ……わかんない……。でも、あの……でちゃいそうで……」
「出しちゃだめよ。私が引っ張り出すんだから。――こんな風にね」
 わっかを指で引っ掛けた林檎が、ぐっとそれを引っ張った。
 ちゅぽんっ!
「ひあっ!」
「まだまだ――」
「あ、あう!」
 ちゅぽっ、ちゅぽんっ!
 球が抜けていくたび、熱いだけだった異物感がいままで感じたことのない異質な快感につながった。
 背筋がぞくぞくしはじめて、蜜柑は夢中で喘ぐ。
「変、お尻が変になっちゃう」
「感じてるのね。一気にいくわよ」
 ずるるるるっ!
 林檎は半分くらいから最後まで、一気に球を引っ張り出した。蜜柑の菊花は連続して拡張と収縮を繰り返される。抜け出ていく感触がひと連なりの快感となった。
「ああああうううっ!」
 大声を上げて背筋を反らせる。
 糸を引いていた花弁からは、ぷしゃっと膣圧で蜜がほとばしり出た。
「あは。すごーい、蜜柑。こんなに感じてくれてうれしいわ」
 林檎は取り出したばかりの球を口に含んで舐めすすった。
 パクパクと開いたり閉じたりしている菊花へ、
「これなら、太いのもいけそうね」
 と、先ほど杏子の尻を犯していた張り型を取り出してあてがった。
「どう? 大姉さんとおんなじの、試してみる?」
「うん……うんっ!」
 はぁはぁと喘ぐばかりの蜜柑は、質問の意味もよくわかっていない。
 倒れ伏すように抱きついた杏子の身体が、通和散のぬるぬるで滑って、なんだかとても気持ちよかった。
 ずぶり、と張り型の先端が埋没する。
「――っ!」
 声なき声をあげて、蜜柑は息を呑んだ。
 どうしたことか、痛みや苦しさを感じているのに、それがもう気持ちよさとしか受け取れなくなっている。
 ずぶずぶ……
 張り型が入り込む様子に背筋を震わせ、
「あ……熱い……」
 とつぶやいた。
 尻を犯されていると言う異常さが、倒錯感を想起させ、頭がくらくらするような快感を呼んでくる。羞恥や倒錯をもっと受けたくて、蜜柑は無意識に声をあげていた。
「もっと……もっとぉ」
「もう根元まで入っちゃったわよ。さ、大姉さんもお待たせ」
 林檎は蜜柑と杏子の張り型を両手でつかんだ。
 そしてそれを交互に出し入れし始める。
「あン、あン!」
「あうう……」
 快楽にまみれた杏子の嬌声に、わずかな苦痛混じりの蜜柑の声。
 湯殿には張り型が出入りするときの卑猥な水音と、ふたりの喘ぎが響き渡った。
「み……蜜柑ちゃん、私……さ、先に」
「やだぁ、杏子姉、いっしょにイこうよぉ」
「だってもう……う、ううっ」
 杏子がこまかく震えて、蜜柑の背に手を回した。大きく開いた股は、女陰も菊花も張り型に犯されて、とろとろの愛液を滲ませている。
「もっと抱いて。ぬるぬるして気持ちいいっ」
「ああ……蜜柑ちゃん……」
「乳首が、こすれて……気持ちいいの!」
 蜜柑も杏子の身体を抱き、胸をすりつけた。
「そんなにしたらぁああ……。ご、ごめんなさい、お姉ちゃんイっちゃう!」
「あ、あたしもイクの、ねえ、イっちゃうんだから」
「ああああん!」
 杏子の震えが痙攣になって、身体全体を大きく震わせた。
「あ、杏子姉……! あううう!」
 わずかに遅れて、蜜柑の身体にも痙攣が走る。丸めた背中がビクビクと震え、花弁はめくれあがって蜜を吐いた。
 ふたりの尻へ差し込んだ張り型を、何度も出し入れして、林檎は徐々にその動きをゆるやかにしていく。
 それに合わせて、抱き合ったふたりの力も抜けていった。
 絶頂を終えた杏子と蜜柑ばかりか、林檎までぐったりと床へへたり込んでいる。手を使いすぎて疲れたらしい。
「……蜜柑、どうだった?」
「え……? お、お尻もよかった」
「ふふふ。じゃあ次から、あなたにも頼めるわね」
「でも……ハマりすぎちゃったら怖いような……」
「大丈夫よ、蜜柑ちゃん。お通じもよくなるし健康にいいのよ」
「……大姉さん、それは気のせいだと思うな」
 蜜柑ははっとして顔を上げ、林檎を見据えた。
「林檎姉、あんたはいいの? あたしたちばっかり不公平じゃない?」
「え……わ、私、お尻はちょっと……」
「あらぁ。食わず嫌いってよくないと思うの」
「大姉さんまで、いやっ、よ、寄ってこないで」
 蜜柑は背後に回りこんでがっしと腕を羽交い絞めにし、足をももの後ろから差し込んで開かせる。
 杏子が新しい通和散の瓶の封を切りつつ、張り型を手に微笑んだ。
「大丈夫よ、林檎ちゃん。お通じもよくなるし健康にいいのよ」
「ひいいいいっ!」
 林檎の情けない悲鳴が、湯殿から夜空へと、立ち上っていった。
大江戸玩具桃色屋 その弐の4
 あんな、お尻の穴で……。
 蜜柑は花弁を撫でる手をすっと後ろへ下げ、自らの菊花へやわく触れてみた。
「うんっ……!?」
 そこで感じたのは異物感と、そして確かな快感のようなものだった。
 しわをほぐすように撫で、ほんの少しだけ、指の先を埋没させてみる。熱い痛みとともに、ぞくぞくとしたものが背筋へ立ち上った。
「蜜柑」
「あっ!」
 林檎にじっと見つめられていることに気づいて、蜜柑は我に返った。はずかしさで真っ赤になる。
「蜜柑もやってみたいの? 自分でなんて水臭いことしないで。私がやってあげるから、おいでなさい」
 めずらしくやさしい口調で林檎が言う。蜜柑は赤くなったまま、風呂桶から素直に出た。
「林檎ちゃ……私、もう、ダメ」
 息も絶え絶えに杏子が訴えた。
 それを聞いた林檎は絶頂まであと一歩のところで、張り型を引き抜いてしまう。拍子抜けした杏子が、内ももを震わせながら、呆然と振り返った。
「大姉さん、仰向けになって。蜜柑と抱き合ってちょうだい」
 ふたりとも言われるまま、洗い場で抱擁の姿勢を取った。
「ちょっと待ってよ。大姉さんにはこれ、あげるから」
 林檎は長短二股に分かれた張り型を取り出し、同じように通和散でぬめらせると、ヒクヒクとおねだりをしている杏子の菊花へ、長いほうから突き入れた。
「はぁああっ」
 肺の中の空気を押し出されたかのような声で、杏子は蜜柑の身体を抱きしめた。張り型は抵抗らしい抵抗もなく飲み込まれ、やがて短い方が女陰の割れ目へ届く。
「これは、二箇所同時責め」
 ずぶっ!
 可憐な花びらへ割って入った先端は、杏子の女陰も犯してしまう。
「あ……あ……」
 無我の境地にあるような表情で喘ぐ杏子の頬を、蜜柑は両手ではさんだ。
「お尻って気持ちいいの?」
「ああ……いいわ、とってもいい……」
「林檎姉~、あたしにもしてよぉ」
「いつもそのくらい素直だったらいいのに」
 姉妹一ひねくれている人物がそんなことを言って、蜜柑のうつ伏せになった尻を撫でた。
 片手で杏子の張り型をつかみ、責め立てることも忘れない。
「蜜柑のお尻も綺麗かどうか、調べてあげる」
 人差し指と中指で菊花を開くようにし、林檎はその小さく開いた穴へ口をつけた。
「ひゃ!?」
 尻穴の中へ舌が入り込んでくる異色な感覚に声を上げ、思わず杏子の身体にすがりついた。
「ちから抜いて……」
 いったん舌を離した林檎が菊花を舐めるようにしながら言った。言われたとおりに尻へ集中していた力を散らせて、蜜柑は相変わらず嬌声を上げる杏子のくちびるを求める。再び侵入があった。
「んっく……」
 力を抜いてそれを受け入れると、まるでナメクジに犯されているような、背徳的な感触が菊花の内部で蠢いている。舌は縦横無尽に動き回って、蜜柑は徐々にクラクラしそうな感覚が首筋の後ろから昇りつめてくるのを感じた。
「あ……あっは……」
 知らずに甘い吐息がくちびるからこぼれ出た。下から杏子がうっとりと蜜柑の顔をはさみ返した。
「いいでしょ、お尻」
「あう……」
「林檎ちゃんとっても上手なの。ごめんね、いままで黙ってて。蜜柑ちゃんも愉しめるんなら、もっと早く教えてあげたらよかったな」
「大姉さんと蜜柑、体型も似てるけど性感帯も似てるからね」
 尻から顔を離し、林檎が言った。
 責めから開放された蜜柑はくたっと杏子の身体の上へのしかかる。花弁からはとろりと愛液が流れはじめていた。
「さーて、あんまり太いのは無理だからねえ」
 林檎は手桶の中を物色している。やがてそこから、真珠のような輝きの球がいくつも連なったものを引っ張り出した。
「こう言うヤツの方がいいかな? なんにせよ、初めてってのはいい試験材料よ」
「なに……それ」
「なんでしょう。ふふっ、いいわぁ。その期待と不安に満ちた目」
「ば、ばかっ」
「大姉さんは少しこれで我慢しててね」
 林檎は二股の張り型を付け根まで押し込むと、底部のスイッチを入れた。
 ヴーーーーン
 振動音とともに、杏子の菊花と女陰の中で、張り型が細かな動きを始める。
 絶頂の手前でじらされ続けている杏子は、貪欲にその振動を快感へと変換して受け取った。
「さ……ちょっともったいないけど、おねだりのご褒美よ」
 通和散の瓶を逆さまにして、蜜柑の尻へ垂らしていく。それから背中、肩の辺りまで。透明なぬらぬらの液体は、絡むようにしながらきめのこまかい肌の上を滑り落ちて、下で喘ぐ杏子へと落ちていった。
「あうっ!?」
 潤滑を与えられた菊花に、いきなり指を差し込まれて、蜜柑は硬直した。
「いいかんじ……。お尻の処女、もらってあげる」
 ずぶりともう一本指が増えた。初めてだと言うのに抵抗なく、蜜柑の菊花はその花びらを開花させている。
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