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その祈りには慈悲もなく 一章 第五節
「待ちきれないのか? 尻の穴が催促しておるぞ」
「だ……っ黙れ!」
「ふほはっ」
 司祭は笑いながら、更に顔を寄せた。鼻息が臀部を撫でて、逸らせた背がかすかに震える。ふっくらと膨らんだ土手には、薄い恥毛が楕円状に翳っている。桜色の肉襞が折り重なる陰唇はその口を閉じて、司祭の目から秘所の奥を隠していた。目を凝らしても興奮の兆候は見えない。いささか落胆した気持ちで、司祭はふん、と鼻息を噴いた。
「ん……」
「なんだ、鼻息ごときでもう耐えられんのか。襞がビクビクとわなないていやらしいぞ。穴の奥まで丸見えだ」
「う、嘘をつけ!」
「嘘なものか。とんだ淫乱だな、お前は」
 こんこん、と腰当てを叩くと、甲冑の冷気が尻を撫で、ビクリと騎士の体が震える。にやにやと笑って、ボドルザーは無骨な指をそれ自体が芸術品であるかのような尻に、無遠慮に這わせた。
「ぐ……」
「まだ表面を撫でているだけだぞ」
「黙れ……っ」
 司祭の手は優しく、ゆっくりと柔尻をこねはじめた。掌に収まりきらぬほどの桃肉が太い両手から零れて、淫靡に形を歪める。その光景だけで達してしまいそうだった。
「ふぐ……」
 掌の感触を存分に愉しむ司祭とは違って、騎士にとってはやたらな拷問よりも遥かに辛い時間だった。口に含むよりはましだが、それでも早く終わってもらいたいことに違いはない。
「は、早くしたらどうなんだ。やはり回復しないのか?」
「ふん? もう少しこの感触を楽しみたかったが、まあよいか。ご所望とあらば応えよう」
 言うや否や、盛り上がった土手に太い指が添えられた。そのまま秘裂に沿って指を巡らせ、襞の一枚一枚を検分するように撫でさする。その度にぞわぞわとした悪寒が股座から這い上がって、アンヘリカは唇を噛み締めた。そうでなければ、また短い悲鳴をあげてしまいそうだったのだ。
「ふむ」
 太い指が秘裂を一蹴し、包皮を被って隠れている陰核に辿り着いた。指の腹で軽く押し込んでやると、それだけで少女の背が跳ねる。
「ここが弱いのか?」
「し、知らない」
「知らないはずがあるまい。自分で弄るだろう?」
「知らないと言っているだろう!」
「強情だな」
 まるで加減というものを知らないような力で、ボドルザーは陰核を握りつぶした。一気に皮が剥かれ、快楽の中心とでもいうべき小豆が、ちゅるん、と顔を出す。
「――あひぁっ!」
 経験したことのない感覚に、思わず声が跳ね上がった。快感などでは断じてない、痛みというよりは衝撃に近い感覚だった。無理もない、震えるばかりで肥大化もしていない陰核を全力で摘まれ、無理やりに皮を剥かれたのだ。
 自ら慰める時ですら秘唇を僅かに撫でる程度の行為しかしない少女にとって、司祭の暴挙は酷すぎた。
「ふほほっ、やっと嬌声をあげおった」
「ち、ちが――あきゃああっ」
 抗議の声は形にならない。剥き出しの陰核を二本の指が挟みこんで、ぎちゅぎちゅと揉み出したのだ。衝撃が光になって脳天を衝きぬけ、光が激痛となって脳髄から駆け下りる。このまま死ぬではないかと思うほどのシグナルの明滅だった。
「ふっ、や、やめっ、あ、あああっ、いぎぅぅうっ」
「感じておる感じておる。お前、やはり淫乱だのう」
「ふっ、ふざける……あ、あああっ!」
 口を開けば悲鳴しか出ない。ボドルザーは笑いながら陰核責めを続けた。揉みしだき、捻りまわし、押しつぶし、まだ快楽のなんたるかを知らない体から、強引に悦びの雫を引きずりだす。手の中の肉芽がわずかに膨らみ、閉じられていた秘唇が震えながら開きはじめるのを見て、ボドルザーは口の端に浮かべた笑みを深くした。
「下の口が開きはじめたぞ。そんなに入れてほしいのか」
「な、なにを……きゃああぅっ、」
「ふほっ、かわいらしい悲鳴だな!」
 指の腹で陰核を持ち上げ、ゆるやかに撫でさする。先ほどまでの苛烈な責めから一転した触れ方に、アンヘリカは戸惑ったような声を出した。肉体の混迷は更に強く、優しい愛撫に過敏なまでの反応を示す。
「あ……ふぁっ、あ、」
「んん? どうだ、気持ちよかろう」
「な、なにを……」
 先刻までが苛烈すぎたのだ。他人に触れたられたことのない部分を労わるように撫でられると、それだけで肉体が共鳴をはじめる。痛めつけられた体が無理にでも快感を得ようとするかのように。
「な、なにか、変だ……!」
「変なものか。それが快感というものだ」
 ほんの少し強く、肉豆をつまむ。「あふぁっ」と高い声をあげて、少女の背が大きく反り返った。ただ痛みだけではない何かを感じている声だ。
「よしよし、もっとその泣き声を聞かせてもらおうか」
 既に司祭のペニスは充分以上に膨れ上がっていた。皮が完全に捲れ上がり、露出した亀頭が快楽の予感にビクビクと息っている。幾本も青筋の立つ凶器は、口淫の際とは比べ物にならないほど大きく太く猛っていた。その凶悪な代物を見ずにすんだのは、騎士にとっては幸運かもしれない。
「はっ、はぁ――」
 アンヘリカの視界は薄い靄と涙に包まれ、まともに世界を映さない。執拗な陰核責めに思考を奪われ、頭の奥がずっと痺れていた。だらしなく開いた口元から涎が零れ落ちたが、口元を絞めることすらままならない。痛みの余韻がいつまでも太腿の内側にこびりつき、疼きとなって彼女を苛んでいた。
(感じて、いるのだろうか……)
 ふと、心のどこかがそう呟く。
(これが快楽なのか? この男の言うとおり、私は淫乱なのだろうか……)
 快楽を知らない少女は、未経験の衝撃をどう捕らえてよいのかわからず、それに分かりやすい答えをあてはめてしまう。彼女の感じているものは性の喜びとはとても言えないが、アンヘリカにはそれがわからない。
「ふ……」
 何か硬いものが秘裂に押し付けられる。その先に待つものが女性として最悪の結末であることに、アンヘリカは気がついた。視界の靄がわずかに晴れ、強靭な意志が帰ってくる。駆け引きも謀略もない、ただ本能だけが叫んでいる。止めなければならない――
「や、やめ」
「今更何を言っている!」
 つぶり、と司祭の股から生えた凶器が陰唇を押し込む。さんざん嬲られた秘裂は意外にもあっさりと亀頭を飲み込んだ。だが容易だったのはそこまでで、膣口から先へは簡単には進まない。騎士の膣は、まだいかなる存在も通過したことのない未踏の地なのだ。
「ふんっ!」
「あふっ、はああっ」
 ボドルザーは些かも躊躇せず、思い切り腰を捻りこんだ。みちみち、と肉の壁が押し広げられ、亀頭がずぶずぶと埋まっていく。自分の体に異物が侵入してくるという、想像を絶する感覚に、アンヘリカは喉を逸らしてぱくぱくと口を開閉させた。
「ぬ、抜いて、抜いて!」
「ふほほっ、まだ入ってもおらんわ!」
 その言葉に、視界が真っ暗になった。今でさえ、充分以上に陰茎を感じているのだ。入ってもいないというのはどういうことなのか。では、今膣に感じているこれはなんだというのだ。
「それっ、一気に行くぞ!」
 ずぐぐ、とペニスが衝きこまれる。もう無理だ、この先はないと思ったその奥まで、異物感が押し入ってくる。
 ボドルザーは処女騎士の反応を楽しみながら、亀頭の半ば以上が埋まったあたりで腰を止めた。慈悲ではない。そこに、壁があったのだ。
「膜まで来たぞ」
「ま、まく……?」
「清浄の証だ。これからお前は体の内側を汚され、神の座から落ちるのだ」
「ま、まって、何を、」
「それ、一生に一度の体験だ、いい声で飾れよ!」
 次の一撃は、今までのどんなものよりも強烈だった。
 何よりも先に灼熱が迸った。押し開かれた膣の入り口、懸命に他者の侵入を拒んでいた処女膜が、か細い悲鳴をあげて打ち破られる。脳天に達した熱が痛みへと変換され、痛みを打ち抜いて体内の陰茎が突き抜ける。開ききった口からはまともな声も出ない。かすれた悲鳴は音にならず、冷えた空気に湯気を立ち上らせるのがせいぜいだ。
 狭い膣壁をこすりあげながら破城槌のような勢いで突進する肉棒は、最早何物にも遮られることなく、騎士の誇りも少女の悲鳴も、丸ごと打ち砕いて粉々にしてしまう。まなじりに溜まる涙が零れ落ち、突きこまれた陰茎が最奥に達して、

「いやあああああああああああっ!」

 ようやく、少女は悲鳴をあげた。
その祈りには慈悲もなく 一章 第四節
「うほははっ、あの聖騎士を犯せる日が来るとはな。全く、権力は握っておくものだ」
 言いながら、肥満体がどすどすと周囲を巡る。俯いて唇を噛み締めると、アンヘリカは顔をあげてその足音を追った。
「ほ? 嘆くのはもういいのか」
「黙れ。黄金鞘を汚したのは失態だが、それは決して恥じるようなことではない。貴様の穢れた粘液をこの身に受けぬよう、守ってくれたのだからな」
「ふほほっ、さすが騎士殿、庶民の生娘とは違うな。私の精液を飲まされて、即座にそこまでの言葉を吐ける奴はそうそうおらんぞ」
「そうか、それは光栄だ」
「ふほほははっ」
 笑いながら、ボドルザーは膝をつくアンヘリカの真後ろまでやってきた。彼女の鎧は聖王国正規のものだが、随分と簡略化されている。これは歴代聖騎士の伝統のようなもので、歳若い少女が身につけるには正規兵の鎧は重すぎるのだ。
 黄金鞘の紋章が刻まれた胸当てに、腿の動きを阻害しないよう慎重に設計された腰あて、膝下を守る具足。彼女が身につける鎧はそれだけだ。後は防刃繊維の織り込まれた、弛みのない戦闘着をその下に着込み、部分的に鎖帷子を着用している。本来ならば篭手もつけているのだが、拘束される際に外された。
「どれ、もう充分休んだだろう」
 そういうと、ボドルザーは慣れた手つきで滑車を操作し、鎖を巻き上げはじめた。手首が引きずられ、体が起こされる。完全に巻き上げるところまではいかず、膝を折っていられる程度の高さになったところでボドルザーは手を止めた。
「中途半端だな」
「このくらいがやりやすい。経験上な」
「……こんなことを、以前からしていたのか」
「言っただろう、権力は握っておくものだ」
 アンヘリカの後姿を視姦しながら、ボドルザーはにやにやと笑った。防刃繊維に包まれた尻は高い位置に綺麗な丸みを描いており、腰当てを僅かに押し上げている。肌に張り付くような戦闘着は、すらりと伸びた細い足も、それでいて肉感を失わない太腿も、ぷっくりと膨らんだ恥丘も詳らかにしてしまう。その奥にある、未だ誰も手を触れたことのない秘蹟を思って、ボドルザーは思わず生唾を飲み込んだ。
「尻を突き出せ」
「……」
 中途半端な反抗はせず、アンヘリカは言われるがままに足の位置を変え、尻を後ろに高く掲げた。反らせた背が少しばかり窮屈だが、言ってもはじまらない。これからされるだろうことを考えると、頭の奥に暗い、毒の霧のような靄が立ち込めるが、街の女と神子のためと、頭の中から追い払った。
「早くしてくれないか、司祭。さっき出したばかりではつらいのかな?」
 なけなしの性知識を振り絞って挑発してみせるが、ボドルザーは笑うだけで取り合わない。ことあるごとに感情を逆巻かせていた男とは思えない落ち着きぶりだった。先ほど斬りかかった時には、あれほど狼狽していたというのに。
「ふむ……騎士殿の鎧を剥ぐのはかわいそうだ。それは勘弁してやるか」
「な、なにい?」
 どういう意味なのか問おうとした矢先、尻に強烈な違和感が走った。ボドルザーが太った指を突き入れたのだ。割れ目を正確についた指は防刃繊維をつまみあげて、ぐい、と引き上げる。
「ひんっ……」
 肌に密着する防刃繊維を引かれると、逆側が締め付けられることになる。股に繊維が食い込む圧迫感に、アンヘリカは思わず声をあげてしまった。
「それっ」
 バツン、と何か硬いものが弾き切れる音と共に、アンヘリカは突き出した臀部に涼風を感じた。防刃繊維を切られたのだ。
 繊維は耐刃に優れたものではあるが、完全に防げるわけでは無論ない。零距離から圧力をかけられては耐え切れるはずもなかった。所詮は布なのだ。
「ふん、剣を持ってきておいて良かったな」
「……」
 防刃繊維の僅かな切れ込みから、白い尻肉がぷくりと顔を覗かせた。繊維を押しのけ、傷を広げようとするかのように、柔肉は切れ込みを綺麗に埋めてしまう。
「ふほほっ、自己主張の激しい尻よ」
 ボドルザーが指を切れ込みに突き入れると、少女の体がピクリと反応した。涼風で冷やされた体に体温を染み込ませるように、太い指が二、三度柔肉を揉みしだく。指を返して再び防刃繊維を引き上げると、司祭は長剣の切っ先をその隙間に差し入れた。
「動くなよ。私は剣に慣れていないからな」
「……っ」
 鋭い切っ先がわずかに触れて、鉄の冷気を伝えてくる。ボドルザーが手を誤れば、下手をすれば死んでしまう。それは、あるいは今のアンヘリカにとって救いなのかもしれないが、広場に集められているという女性たちを思うと何もできない。
 ただ、唇を噛んで耐えるだけだ。
「ふんっ」
 勢いよく、刃が振り下ろされた。繊維が圧力に負けて引き裂かれる音が響く。一度の裁断では巧くいかなかったのか、ボドルザーは同じ行為を四回繰り返した。
「このくらいでよいかな」
 そう言って手にした剣を放り投げた時、アンヘリカの尻を守る繊維は、見るも無残な有様を晒していた。
 縦横に引き裂かれ、守るべき秘所を露にしている防刃繊維は、もはや戦闘着としても衣類としても用をなさない。暴力を象徴するかのようなその切れ端には、陵辱者の目を愉しませ、興奮を助長する効果しか残っていない。
「いい格好だな」
「……くぅっ」
 剥き出しの尻は僅かに残る繊維に押し上げられて、弾けるような桃肉を冷気に震わせている。尻を高く掲げる姿勢のせいで、涼風にわななく肛門も、その更に奥の、わずかな翳りに隠された秘裂までもが丸見えだった。
「ふほぅ……さすがだ、さすがだな! 今まで見たどんな生娘よりも美しいぞ」
「……っ」
 十七歳、肉体的には成熟した女性とほぼ変わりない年齢だ。たっぷりと柔肉の乗った尻には染みひとつなく、指を添えるだけで反発する弾力と、十代特有のきめ細かい肌とを合わせ持っている。双臀の割れ目にある褐色の窄まりは、寒さのせいだろう、わずかにひくついて、陵辱者の行為を待っているようにすら見えた。
その祈りには慈悲もなく 一章 第三節
「んぐぅ――!?」
 我慢できない。アンヘリカは我知らず、思い切り体を引いていた。ずるりと唇を撫でながら肥大化したペニスが抜ける。悪臭の元が口内から離れ、冷えた清浄な空気を取り込もうと、無意識のうちに口を開く。
「ふほっ」
 まるでその瞬間を狙い済ましたかのように、司祭が腰を突き出した。
「あぐぅん!?」
「ほっ、ほほっ、」
 開ききった気道を饐えた匂いが突進して、肺の中、胃の先まで流れ込んでくる。まるで臓腑の奥まで犯されているようだった。強烈な刺激臭が目の中で幾度も閃き、涙がぼろぼろと零れ出す。
 騎士に任せることを辞めたらしく、司祭は自ら腰を振って少女の口を陵辱しはじめた。
「んぶっ、や、ぶちゅっ、いひゃっ――あぶっ、」
 なんとか逃れようと首を振るが、それは蜜壷を捻って男を喜ばせるのに等しい。口内を余すところなく蹂躙する男根は、アンヘリカが首をよじるたびに猛って跳ね回った。
「ひゃっ、も、もうひゃめ……んびゅっ」
 肉の味に後から後から湧き出る唾液が、計らずも潤滑液となっていやらしい音を立てる。舌を縮こまらせても突き上げてくる陰茎には意味もなく、抗議と制止の声をあげれば踊る舌先が陰茎を慰める羽目になる。喉の奥を突かれるたびに吐き気が波のように襲いかかり、それを堪えるだけで精一杯だった。
「ほっ、ほっ、ほっ、」
「んぶっ、あうっ」
 とうとう、司祭は両手でアンヘリカの頭を鷲掴みにした。そのまま今までの比ではない勢いで腰を振りはじめる。自分の口をまるで自慰の道具のように扱われることに、アンヘリカは刺激に対する反応以外の理由で、涙をこぼし始めていた。
 亀頭が唇に接し、そのまま喉奥まで突き入れられる。舌を犯しながら、また唇まで引き戻す。猛烈な抽送は唾液を絡めながら速度を増していき、鷲掴みにされている頭が痛くなるほどの力が掌にこもり出す。司祭はもう、少女のことなど見ていなかった。
「んっ、んぐっ、はびゅっ、ぶるっ、」
「ふほぅ、出るぞ! 出るぞ出るぞ!」
 叫ぶや否や、恥骨が唇に密着するほど腰を突き入れる。贅肉まみれの腹が顔面に押し付けられて、アンヘリカは思わず目を閉じた。分厚い肉の感触が瞼の裏にまで感じられる。そうして何度目かの吐き気に彼女が耐えようと身がまえた瞬間、
「――んっ、んぶぅ――!?」
 口の中に、何かが吐き出された。
 喉の奥に叩きつけられるように放出されたそれは、舌先に絡み口内を浸しながら食道を駆け下りて行く。目の奥がチカチカと瞬き、息を吸うことができなくなる。切迫した生命の危機を錯覚して、アンヘリカは思い切り頭を振り乱した。
「おほぅっ」
 射精直後で緩まっていた手はあっさりと離れ、口内から陰茎がずるりと抜け落ちる。一緒に大量の唾液と、口を犯す白い粘液がだらりと垂れ落ちた。
「ぅげほっ、がはっ、」
 ひとつ咳をするたびに、粘性の高すぎる液体がぼたぼたと零れ落ちる。どれほどの量を出されたのか、これが幾らか胃の中に納まったのだと思うと、目の前が真っ暗になった。
「うほほっ、出してもらったのがそんなに嬉しいか」
(なにを、馬鹿な――)
 涙ぐんだ目で抗議する。今にも死ぬかと思ったのだ。白濁した液体はまだ口内に残っていて、全て吐き出すまで喋ろうという気にすらなれなかった。だが、ボドルザーは僅かに目を眇めると、それを見透かしたかのように命じた。
「出すな、口の中に溜めろ」
「……!」
「言うことが聞けないか?」
「んぐ……」
 俯いて口を閉じる。唇から零れた精液がひと雫、床に向かって糸を引いた。
「飲み込め」
「……」
 口の中に唾液を溜めて、精液と混ぜる。そのまま顔を上にあげて、苦い薬を飲み干す時のように、間を空けず一気に嚥下した。ごくり、と喉が蠢く音が、いやに大きく響いた気がする。
「ふむ、まあよい。いくらか零した分は許してやろう。感極まったのだろう?」
「さっきから何を言っている!」
 口元に残る汚辱感を堪えて、騎士はようやっと抗議の声をあげた。それ受けても、司祭は露ほどもたじろがない。萎んだ男根を掌でさすって、にやにやと笑うだけだ。
「何を言う。聖騎士の鎧を自ら化粧するほどだ。よほど気に入ったのだろうが」
「――は?」
 視線を下げる。胸元に刻まれた黄金鞘は見えない。先ほど自分自身が吐き出した白濁液が、ねっとりと鎧を覆っていたからだ。力が抜ける。がくん、と体が下を向くと、どろりと液体が零れ落ちていく。そうして汚された鎧の下から、誇り高き黄金鞘が姿を現した。
「全て飲み込んでおればそうはならなかったものを。うほははは!」
「う、う、うああああ!」
 倉庫中に響き渡る声で、アンヘリカは叫んだ。
 それは、彼女が捕らえられてはじめてあげた悲鳴だった。

その祈りには慈悲もなく 一章 第二節
「あ……」
 すい、と司祭の肥満体が離れる。でっぷりとした腹をさすって、彼は喜悦に満ちた笑みを浮かべた。
「答えろ、アンヘリカ」
「ああ……」
 回答など、ひとつしか用意されていない。女たちを目の前で蹂躙されることに耐えられるとは思えなかったし、なにより、保身ゆえに見殺しにしたとなれば、神子に合わせる顔がない。
「わかった……」
「なに? 聞こえんな」
「わかった、と言ったんだ。好きにしろ……」
「ふはっ」
 パン、と掌を打ち合わせて、ボドルザーはどすどすと歩み寄った。股間に垂れ下がったモノが、触れてもいないのに少しずつ大きくなりはじめる。
「どれ、奉仕しやすくしてやろう」
 ジャララ、と擦過音を立てて鎖が滑り降りる。胸の前まで手首が降りてくると、ボドルザーは剣を喉元につきつけた。
「ひざまずけ」
「剣を使わなくても、反抗などしない」
「そうかもしれんが、一応な」
 小さく舌を打って、アンヘリカは緩慢な動作で膝をついた。目の前にボトルザーの男性器が見えて、思わず目を逸らす。
「逸らすな。見ろ」
「く……」
 成人男性の男根を目にするのは、アンヘリカにとってはじめての経験だった。聖教は乱淫でない、清浄な男女の交わりは否定しない。だが、神の座にある神子とそれに侍る聖騎士は別だ。それでなくとも、彼女は同年代の少女が恋に胸を高めている時分、ひたすら剣を振っていたのだ。
 わずかに首をもたげて膨らんでいる男根は、弛んだ皮が先端付近までを包み、尿道口だけがわずかに見えていた。人の皮膚とは思えないほど黒ずんだ皮の内側には、得体の知れないカスのようなものがこびりついている。まだ誰も何もしてないというのに、尿道はわずかに湿っているように見えた。
 ……醜い、としか言いようがない。ほのかに立ち上る湯気も、気色悪さを水増ししているように思える。何か醜悪な悪魔が股間に張り付いているようですらあった。
 立ち上る匂いはボドルザーの体臭によく似ていて、それを何倍も濃くしたような悪臭だった。聖騎士は、胃の中身を全てぶちまけてしまいたい衝動に駆られた。そうして吐き出したモノですら、眼前のこれよりは遥かに清浄だと言い切れる。
「やり方は知っているか」
「知るものか」
「ふん? 聖騎士殿は男女の交わりも知らぬのか。ふほほっ、これは愉快よ」
「……」
「では、私が手ずから指南してやろう。ほれ、何か言うことがあるだろう?」
「なに?」
「教えてください、だ。言ってみろ」
 暗く重かった頭が、一瞬で激情に支配された。この男は、どこまで自分を貶めれば気が済むのか。
「ふざけるな!」
「そうか? 仕方ない、では女を呼ぼう」
「くっ……下種が!」
 吐き捨てるが、彼女に選択肢はない。下からギロリと司祭をにらみつけて、吸い込んだ悪臭を吐き出す気持ちで言い放った。
「要求どおり奉仕してやる。やり方を教えろ」
「……ふっ」
 一瞬、何を言われたのかわからないような顔をして、
「ふほほはははは!」
 司祭は腹を抱えて笑い出した。絶望的な状況にあってなお気丈に振舞う姿に、嗜虐心を刺激されたのだ。
「よかろう、よかろう! それ、まずはくわえろ」
「く……? くわえるのか、これを?」
「それをだ。早くせい。腹が冷えてしまうわ」
「……」
 躊躇するものの、拒否することは許されない。顔を寄せると、剥き出しの陰茎を誇示するように、ボドルザーが体をゆすった。ビクン、と跳ねる男根はそれ自体が別の生き物のようで、いやます嫌悪感に騎士は顔を背けずにはいられなかった。
「なんだ、いやなのか?」
「く……」
 ためらいがちに口を開き、そろそろと顔を近づける。口内から漏れた息が、湯気となって男根を包み込んだ。
「ふほっ」
「んぐ……」
 丸のみするようにくわえこむと、舌先に腐肉と尿を溶かして混ぜ合わせたような、およそ経験したことのない味覚が広がった。同時に、今まで最悪だと思っていた匂いが、数倍の濃度で鼻腔を直撃する。
「よし……舌先で舐めろ。歯は立てるなよ。噛み切ったりしてみろ、女たちを地獄よりも酷い目に遭わせてやる」
「……っ」
 舐めろと言われても、要領がまるでわからない。竿の部分を舌でチロチロとさすってみるが、ボドルザーはわずかに鼻を鳴らしただけで、何も言わない。
「んん、ん……」
 それでも、口内のモノは次第に形を変えていった。舌にあたる感触が硬くなり、口内を占める割合が大きくなる。わけもわからぬまま舌で弄り回していたアンヘリカは、そのおぞましさに眉をしかめた。
「んほぅ……やはり下手だな。まあ、初めてならば仕方ないか。よし、皮に舌をかけて剥いてみせろ。お上品な騎士殿には難しいかな?」
「ん……んく……」
 褒められても嬉しくないが、貶されても面白くない。反応しては負けだ。アンヘリカは黙ったまま、男根を包む皮に舌を這わせた。アンモニア臭が凝縮された尿道から、亀頭にそって皮の先端まで舌先を移動させる。ほんのわずかに司祭の腰が浮いたのは、快感を得たからだろうか。
 自分の舌がこの男の快楽に繋がっていると思うと、男根ごと舌を噛み切って死にたい気持ちになった。しかし、この男は自分が死ねば即座に言ったことを実行に移すだろう――そこに何の意味もなくとも、だ。
 舌に力を入れて皮をめくりあげる。巧くいかなかったが、亀頭をまさぐられる快感に陰茎が膨張し、半ば自動的に黒ずんだ皮が巻き上げられた。
「――!?」
 瞬間、カリの裏側をこすった舌を、苦味と酸味が猛烈な悪臭を伴って蹂躙した。耐え難い、と思っていた匂いが、一挙に数倍に膨れ上がって脳髄までを侵していく。舌先で踊るものが先に見たカスのようなものだと思いあたった途端、男臭が脳髄で弾けるように強くなる。
 舌で擦り取った恥垢が溶けているのだ。
その祈りには慈悲もなく
*フカミオトハ様の投稿作品です。

その日、聖都は陥落した――
神の座にある神子、それに侍る聖騎士。
彼女らはその身に陵辱の限りを受け、魂までも穢されていく。

■序章:聖都陥落
 ・序章
■一章:聖騎士アンヘリカ
 ・第一節 08/10/22
 ・第二節 08/10/23
 ・第三節 08/10/24
 ・第四節 08/10/25
 ・第五節 08/10/26
 ・第六節 08/10/28
 ・第七節 08/10/29


 
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